月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

90.屋台の新調・改修での留意点私考(月刊「祭」2019.5月)

2019-05-01 02:45:09 | 屋台、だんじり、太鼓台関連
令和改元
改元や新天皇の即位を機に屋台を改修したり、新調したりするところはかなりあります。そこで、屋台の新調、改修に気をつけたいことを書いていきます。

●屋台という形あるものの宿命
屋台には何らかの形があります。
形があるということは、いつかは傷むのはこの世のさだめであり、改修、新調が必要となります。どうせ、新調するのであれば、やはりいいものを残したい。少なくとも、笑われるようなものは残したくない。そう思うのが人情です。

●粕谷氏の活躍を契機に
播州屋台研究の第一人者はやはり粕谷宗関氏です。某市史においては、欄干の上に神輿屋根型屋台の屋根を乗せたものを指して重要文化財の神輿は素晴らしいと某学者が宣ったのを尻目に、膨大な踏査により屋台の大工、彫刻師、縫師、飾金具氏の系譜やその技術の高さについての研究成果を1980年後半頃より明らかにしてこられました。
そして、屋台の製作技術が失われつつあることに警鐘を鳴らし続けたこと、屋台芸術の見方を世に広めたことにより、多くの祭マニアを生み出しました。氏の著作や、インターネット技術の発達による後続のマニア(研究者)達の啓蒙により、屋台関係者の見る目も厳しくなり、それに伴い、20年前とくらべると優れた業者も増えてきたと感じます。


●重圧を感じる担当者
新調、改修担当者に託されるもの。それは、各世帯の大切で高額のお金です。もしかしたら、孫や妻、夫、親、子へのプレゼントにと思っていたお金だったり、たまに外食と思っていたお金だったりするかもしれません。でも、屋台の改修や新調と聞いたら、出してくれる。そのお金には色々な思いを託されて出してくれるものです。
その重みを感じてこそ担当者の資格があるものと思います。

●担当者にかかる重圧と周囲の理解
ただ、管理人が見てきた担当者は、その重圧で押しつぶされそうになっている方がほとんどでした。当然です。まともな人間なら上のようなお金を託されて、重圧を感じない人はいないでしょう。
個人差はありますが、真剣に頑張ろうとしている方ほど、気の毒なほど重圧を感じてしまう可能性は高くなります。仕事や家庭のある中でしていることです。意見を言う時も自分がその人に代わってできるのか考えて、伝え方を考えなければなりません。

●優良業者の選定
ここを間違えると取り返しのつかないことになります。それこそ上に書いたようなお金をドブに捨てるに等しいものになる可能性も生じてきます。
逆にここをクリアすると、工芸品としてはそこそこのものが出来上がることになります。

・ラファエロもダビンチも屋台は作れない
ここで気をつけたいのは、人間国宝であっても、屋台を作ったことのない人に頼むことにはかなりのリスクをはらむということです。ラファエロの彫刻やダビンチの絵も屋台には合いません。単体として優れた工芸であっても、屋台やだんじりに埋め込むと、ショボく見える例もあります。
「●●国宝」の触れ込みや、「ブランド」で見るのではなく、その作品が本当に合うのかを生で見る必要があります。

・プライドを捨てましょう
また、悲惨な例としてよくあるのが、屋台関係者間の権力争いが影響している例です。この類の話は、祭オタクの管理人にとっては悲しいかな、耳タコです。
某屋台のリーダー的存在だったAさんは優良なB業者と仲良くしており、改修などはBさんに頼んでいました。 優良業者に仕事を頼むので、当然その屋台は名屋台として名が知れ渡ります。
時がすぎ屋台のリーダーはCさんに代わりました。CさんはAさんと反目しており、Aさんと仲の良かった優良なB業者に頼むのはどうしても我慢がなりません。Cさんは、インターネットでDという業者をみつけました。よくよくみると「●●国宝」。「ここの作品は合わへん」というAさんたちの諌めも聞かず、というか、より頑なになったCさんはDに改修の仕事を頼んでしまいました。



●足を運ぶ
これが一番大変なことかもしれないし、担当者の話を聞くかぎりでは、最も楽しそうに話をされるところです。制作現場に足を運び、作って欲しいものを語り合いながら形にしていくという作業です。これをすることで、職人さんは、金額以上の仕事をして下さったという話は本当によく聞きます。

●全体像の把握
昨今は前述の粕谷氏や後続の研究者たちの活躍により、それぞれの工芸は優れたものができているように思います。あとは、その工芸をどう配置するかです。
つまり屋台のサイズの決定です。
これに関しては、好みの問題とも言えます。「伝統」を志向するのであれば、屋根は大きくしない方がいいでしょう。「現代」的な傾向としては、屋根部分が大型化しているように思います。
時々例外として、屋根を大きくしながらも印象は変わらないということもありますが、かなり稀な印象です。
パソコンを使い、数センチ単位で寸法を決め、見事なバランスの屋台を作りあげた某担当者の方の情熱と知識と知恵に驚かされたことがあります。

●編集後記
令和改元始めの投稿は文字のみの投稿になりました。
令和の時代が屋台や祭の黄金期になることを願って止みません。