月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

362.祭存亡分かれ目の年

2021-06-12 20:22:09 | 新型コロナと祭、民俗
●オリンピックやるからうちもやるは絶対に❌
 今年、屋台を出すのか出さないのか、その決断が迫ってきています。もしかしたらオリンピックの開催をみて決めるというところはあるかもしれません。
その中でオリンピックやるからうちもやるという決断は絶対にしてはいけません。オリンピックで一定の収益を得た方は、メディア、大規模スポンサーは一丸となって、感染拡大の戦犯を自分たち以外の誰かに押し付けていくことでしょう。
祭関係者も戦犯の一グループに仕立てあげられることになると思われます。その論調は、「神事以外の遊びだ」とか「自己満足だ」「公序良俗(とやら)を乱す行為をこのご時世にするのはけしからん」といったものから、いわゆるヘイトスピーチにあたるものまで総動員することになるでしょう。

●屋台を出す出さないの判断基準
オリンピック
オリンピックをやるなら屋台は出すべきではありません。感染拡大の戦犯を押し付けられます。

ワクチン
ワクチン接種が進むかつ、有効性があればもしかしたらできるかもしれません。。。。
が、来年の春などへの延期も視野に入れる方がいいかもしれません。

●オリンピック貴族やスポンサーにとって祭関係者はトカゲのしっぽ
オリンピックやったから「うちもやった」場合、感染拡大の責任はメディア一丸となって祭関係者に押し付けてきます。そうなると祭は存亡の危機を迎えます。


361.波兎と住吉さん-加西市北条住吉神社拝殿内の波兎彫刻-(月刊『祭御宅』2021.6月8号)

2021-06-06 07:55:25 | 民俗・信仰・文化-伝承・信仰-
●北条節句祭の加西市北条町住吉神社
 今回は北条節句祭で知られる加西市北条町住吉神社の拝殿の彫刻をみていきます。拝殿(おそらく本殿も)は国の登録有形文化財です。
↑拝殿にとりつけられた国登録有形文化財の板

↑本殿も精巧な彫刻でできています。



↑拝殿入り口も海と兎とお日さま

●住吉神社の祭神と波兎
 件の波兎の彫刻は、拝殿の中にありました。














ではなぜ、住吉神社の拝殿に波兎が多数彫られているのでしょうか。

●波兎が住吉神社に彫られた理由
 住吉神社の御祭神は後の合祀した神さんを除くと住吉四神(神功皇后、上筒男命、中筒男命、下筒男命→以下三柱筒男神)と、地主神の酒見神となります。
神功皇后は三韓遠征時に三柱筒男神を船にお祭したことが記されています。つまり、住吉四神は三韓遠征の神さんということになります。
ところで、日本書紀には三韓遠征の兵を集めるときに三輪山に神功皇后がお祈りして、無事に兵が集まったことが記述されています。三輪山の神となると、大乙貴命・大国主命ということになります。こちらの記事でも紹介しましたが、騙して並んだワニをふんずけて海を渡り、怒ったワニに皮をはがれた兎さんを、大国主命はたすけます。兎さんは大国主命がお嫁さんを無事に娶ることを予言しました。
「だから、住吉神社に兎の彫刻が残る! 」と言うにはまだ少し寂しい気がします。大国主命は北条の住吉神社の祭神でもありません。

●住吉大社
結論から言うと、住吉神は航海の神であることから海の彫刻が好まれ、住吉大社に三柱筒男神は神功皇后摂政十一辛卯年(211)卯月卯日に鎮座したそうです(h氏のご教示)。つまり、住吉大社の鎮座伝承が卯を意識したものになっているので、北条の住吉神社でも波兎の彫刻が彫られるているといえます。
その伝承がのっている文献を探してみました。「住吉名勝図会」寛政六年(1794)によると、
「摂津国住吉に鎮座なりしは神功皇后摂政十一年辛卯四月(卯月)二十三日なり」
とあります。この年の四月二十三日が卯の日かどうかは分かりませんでした。しかし、「四月(卯月)卯之日神事」の絵が他のどの神事よりも多くの頁に大きな絵を添えて記述されています。これらのことから、摂津の住吉大社で兎・卯が重要視され、その影響が北条の住吉神社の波兎彫刻にも現れたと言えるでしょう。

















360.車の傷隠し用祭ステッカー制作(月刊「祭御宅」2021.6月7号)

2021-06-05 21:38:28 | 屋台・だんじり・神輿-衣装、周辺用具、模型-

傷隠し用ステッカー制作

車の傷隠し用ステッカーを頼まれました。○明マークを菱形にしたものを制作しました。

↓背景色を薄い黄土色にして、菱形に変えました。

台車運行のイラスト、ローマ字のAKASHIMACHI。形は法被をイメージしたものがパソコンで完成しました。↓

●完成が楽しみ、プリントアウトすると。。

エディオンで買ったA-oneの車用ステッカー用紙に印刷しました。

プリントアウトしたら色がまるで違いました。古いプリンター使っています。別にかまわないとのことで、そのまま貼り付けました。



●よくみると、イカツイので、、、

しかし、よくよくみるとイカツイ人が乗る車に見えてしまうとのことで、車に貼ったものを剥がし、クリアファイルに貼りました。

そして、旧ブログ名のステッカーがあったので、こちらを車に貼りました。



両方に貼ったイラスト

剥がしたもの、貼ったもの両方にあったイラストが、明石町屋台の台車運行です。そのイラストの拡大図が下のものです。本ブログと言えば、台車ということで、台車運行をデザインしました。Tシャツ剥がした方はデザインの都合上カットしましたが、一番後ろを歩く某ボンクラ祭ブログ管理人が入りました。






359.無形文化財のそばにあるもの(月刊「祭御宅」2021.6月5号)

2021-06-05 09:29:11 | 屋台・だんじり・神輿-台車、骨組み、かけ声、楽器、担ぎ方-
●祭オタクの担当分野
 管理人が文化財関係のお仕事を割り振っていただくときは、民俗とか無形文化財となることが多いです。それを一手に担当する能力のあるなしとは別にして、祭=無形文化財というイメージが定着しているのでしょう。
現に各自治体の●●市史などの書籍では、芸能、伝承、民俗などに特化して、無形のものを中心に書かれています。でも、無形のもののそばにあるものについてはあまり書かれていません。

●無形文化財のそばにあるもの
例えば、網干の屋台は上下に激しい動きをともなうチョーサをするために、泥台の足が短くなっています。さらに台車は泥台の足が短くても運びやすいようになっています。

つまり、チョーサという無形文化財のために有形のものが変化してつたわっているということになります。
さらに屋台運行を華々しくみせるための各彫刻、刺繍、金具などの装飾が発展しました。つまり、祭という無形の文化財のそばには優れた有形文化がセットになっていることが多々あるということです。

●無形のものを理解するために
 結局無形のものを理解するためには、そばにある有形のものがどう使われているのか、どのような性質があるのかなどを理解せざるを得ないということになります。あれもこれも論かもしれませんが、専門外だからとばかりも言えないのが、小さな自治体の現状であると言えるでしょう。



358.オリンピック中止・延期祈願-祭関係者が泥を被らないために-

2021-06-05 01:05:39 | 新型コロナと祭、民俗

オリンピック強硬開催と祭
オリンピックのために努力に努力を積み重ねてきたアスリートの人たちにとっては、中止は悲しいものがあります。しかし、アスリートの人たちにとっても、延期の選択肢、さらにマラソンも行える涼しい季節の実施も視野に入れて行うことができれば、メリットの方が大きいでしょう。
しかし、オリンピックを利権のために強硬開催しようとする輩が、くそ暑い時期に、コロナ禍で医療崩壊している時期に国内外に沸いてでています。
こちらでは、選手への厳しい制限、医療関係者が完全にボランティアではないことを理由にスポーツをやめるなともっともらしいことをのたまっています。しかし、医療関係者が有償無償にかかわらず不足していること、そもそもくそ暑い時期にマラソンをするような気の狂った日程になっていること、そして、さらにそもそも、ホンマに本当にアスリートの立場にたつんやったら延期すりゃええやんという視点は(わざと?)抜け落ちています。要は著者の方が意識するしないに関わらずオリンピック貴族さまの御用記事になっている状態です。
 
●オリンピック強行後の秋祭
オリンピック強行→秋祭の通常実施→新型コロナ感染拡大となった場合、バッシングされるのは誰でしょうか。まず、オリンピックのスポンサーに国内外の名だたる企業が名を連ねていることを考えると、オリンピック関係者やそのスポンサーがバッシングされないように世論誘導は必ず起こります。そして、世論誘導によって我々祭関係者が感染の夜の店などと同様に戦犯の一味に仕立てあげられることになるでしょう。
 
●もしオンピックが中止、延期になった場合 -できる可能性はあるけど、よりハイリスク-
今のところその動きはみられませんが、どこかのニュースで小池都知事あたりが言いだすのではないかという記事もみたことがあります。
まだまだ期待できるレベルではないと思いますが、そうなれば、ワクチンの性能と出回りで秋祭りができる可能性は残っているように思えます。
しかし、そこでクラスターが起きた場合は、オリンピック中止したのに。。とフクロ叩きのリスクが生じます。オリンピックがない分、祭ができる可能性は高まりますが、何かあった場合のフクロ叩きのリスクも高まるようにおもえます。
 
●祭関係者バッシング危険年
何度かこのブログでも言ってきましたが、今年はオリンピックも関係して祭関係者が不要なバッシングにさらされやすい年でもあります。
 
編集後記 -できるようになったら年二回-
コロナがおさまり祭をできるようになったら、年二回できたらいいなあと考えています。
 
 

357.棒端のかん(月刊「町御宅」2021.6月3号)

2021-06-03 20:23:48 | 屋台・だんじり・神輿-台車、骨組み、かけ声、楽器、担ぎ方-

●屋台の安全運行のために

今回は全国10人くらいの読者中、2,3人が待ちに待った(0人という主張はうけつけません。)であろう、屋台の担ぎ棒・練り棒の端の綱をつける金具である棒端の「かん」についてのお話です。もしかしたら2000年後くらいには民俗学のメインテーマになるかもしれません!?

冗談はさておき、学術的にはどうかは知りませんが、今回のテーマは屋台の安全運行のための基礎知識ということはできます。

●屋台の舵をとるための綱、それを取り付ける金具の輪・かん

 屋台の棒の先端には綱がついていて、これを左右に引くことで屋台の進行方向を調整することができます。

しかし、よくみると綱が棒に固定された金具とつながっているわけではありません。

棒に固定された金具⇔金具の輪⇔綱

という構造になっています。この綱と棒に固定された金具をつなぐための輪をかんと呼ぶこともあります。三木ではあまり馴染みのない呼び名でしたが、最近ではこの呼び名が定着しつつあります。今回は

↑金具の先に綱はついています


↑↓棒に固定された金具についているわけではなくて、間に金属の輪を介しています。


●横に引いたときに力のかかる方向。

 輪をつけるのは、横に引いたときの輪の位置によって、力を上向きにもできることがあるからだと思われます。

下の図をみてください。

輪を上側にした状態で右に引くと、輪は棒に固定された金具を右斜め上に押すことになります。こうすることで、屋台を向けたい方向に向けると同時に、担ぎ手にも力を貸すことができます(下の図左側)。

逆に下側の場合だと、屋台を右ななめ下に押し出すことになります(下の図右側)。

理想は常に輪を上側にして、舵をとることです。もちろんずっとそれが可能なわけではありませんが、知っておいて、気づいた時に実行するだけで、担ぎ手の負担をずいぶん減らすことにつながります。


356.三木市民要注意!!勝手に屋台新調修復補助金ガイド(月刊「祭御宅」20210101号)

2021-06-01 19:00:35 | 屋台・だんじり・神輿-装飾の工芸、新調、改修、修復-

●屋台新調・改修・修復に使用される補助金のメリット
 近年、屋台新調・改修・修復で補助金を使うことが増えてきました。
 不況の中では、各屋台にとっては補助金使用のメリットははかりしれませんし、一方で、本来なら我々の祭に関わることのない団体に、補助金という形で関わる機会をあたえることになるので、双方にメリットがあるといえます。とはいえ、必ずしも我々屋台関係者側にとってはその制度が十分なものとは言えないし、まだまだ地域活性化や文化財保護の理念からも隔たりがあるのも事実です。
 そこで、新調・改修の補助金と修復の補助金それぞれ一つずつあげ、それぞれの気をつけなければいけない点や問題点を書いていきたいと思います。

●新調・改修の補助金
 新調や一般財団法人 自治総合センターコミュニティ助成事業 | (一般コミュニティ助成金 jichi-sogo.jp)は、いわゆる宝くじの補助金です。コミュニティ助成事業は都道府県で割り振られた一定の金額を、申請したものに振り分ける形式であり、一団体100万円~250万円くらいもらえるみたいです。新調・改修などにも使えるのでかなり便利ですが、屋台やだんじりに似合うとはいえない宝くじマークをつけろとのお達しがあるのが非常に残念な点です。屋台の祭に関わる名誉と広告効果を考えるならば、につかわしくないマークをつけることの強要は控えなければなりません。

●修復・復元の補助金のザックリ概要 
 地域文化財総合活用推進事業(文化庁文化芸術振興補助金(2)伝統文化継承基盤整備(ウ)用具等整備事業92928701_37.pdf (bunka.go.jp))が、修復・復元にかぎられた物となります。 

 管理人が見る限りでは運営方法が自治体によって異なります。
 一つが毎年一台の屋台やだんじり一台に補助金をつぎこむというやりかたです。後者は、ある程度の相場を知っている人が指導する必要がありますが、かならずしも有識者とされる方がそうであるとはかぎらないのが頭の痛いところです。

 もう一つが三木市のように毎年複数の屋台に分配するという形です。一台あたり多くても100万円程度でしょうか。しかし、これにも制約がふえてきており、頭の痛い問題となっております。次に祭り関係者、特に三木のように複数の屋台に補助金を分配する方式の自治体の注意点を書いていきます。


●地域文化財総合活用推進事業(文化庁文化芸術振興補助金(2)伝統文化継承基盤整備(ウ)用具等整備事業)の注意点
 複数の屋台に分配するという形式だと、各屋台の大規模な復元や修復ではなく、こまごまとした修復や法被(個人持ちはできない)などの修復にあてられます。
①あくまで、元の状態への復元 
 サイズをかえる、普通の電灯をLEDに変えるなどが許してもらえない、安全のための補助材の取り付けが許してもらえません。

②破損修理が認められなくなった。
 そして、厄介なのが破損修理がみとめられなくなったことです。一方で劣化によって壊れたものは修理できるとのことです。破損修理を恐れることで、伝統的な運行ができなくなる恐れがあるので、これも本来なら破損修理をみとめなければならないのですが、現状はそうなっていません。

➂識者指導=若い祭研究者に泥をかぶらせないように
 この補助金は学識経験者などの識者に指導してもらうことになっています。最近では少しずつ屋台の専門家を目指す研究者の方もいるようです。このような人たちがそのような識者となった場合、何かあった時の責任が若い研究者にいくことも考えられます。プロの専門家不在(プロ以上に偉大な功績を残している在野の方はたくさんいます)の屋台学。それを志す若い芽を摘むようなことはしたくないものです。

④休みの年がある
 そして、最も気をつけなければならないのが、何年かに一回、たしか五年に一回休みの年があることです。三木市は令和四年度は休みの年になります。皆さんお気をつけて。

 


編集後記
 何度か新調や修復に関わらせていただく中で、各屋台の関係者の方が本当に苦労している姿を見てきました。本来なら、「お上がかわるべき」ですが、今のところそれは期待できません。なので、自衛するしかないのが現状です。