あきオジの風景

写真、そして、俳句(もどき)
毎日更新しています。

戸を叩く激しくたたく野わきかな  あきオジ

2010-10-30 16:01:46 | 日記
台風が関東に接近するようです。

・・・・・・

葱買て枯れ木の中を帰りけり  蕪村

(俳句鑑賞のとき困るのは、芭蕉の句だからいい句なのだ、とか、蕪村の句なのだから、きちんと深いところの意味をあるのだろう。そう思わなければいけない気分になることです。「分からないことは分からない」それ以外の言い方が思いつかないことがあることですね。この句は「葱」をいう季節ものをとりあげているのが新鮮であるなどと説明されるのだろうし、枯れ木がいかにも淋しさを感じるという程度のことしか言えませんね。だからどうなの?という質問には答えられないですね。それはそれ、そんなときは「出直してきます」といって放り出すことにしています。最近、覚えてきた知恵です。

・・・・・・・

わからんちゃん

   まど・みちお

なんにも わからん
わからんちゃんが いてね
おしごと はじめた
とんかち もって
とんてんかん ちんぷんかん
とんちんかん

みんなが わらった
わらったっても へいき
みいにち まいつき
まいねん しごと
とんてんかん ちんぷんかん
とんちんかん

そのうち できたよ
わからんものが できた
わからんちゃんたら
ひらりと のった
とんてんかん ちんぷんかん
とんちんかん


みなさん さよなら
つきまで いってきます
ぐらぐら よたよた
よぞらに きえた
とんてんかん ちんぷんかん
とんちんかん


地蔵様廻る秋は長き道  あきオジ

2010-10-30 06:46:47 | 日記
台風が来てますね。
御用心ください。

・・・・

明日は熱海で泊りがけの同窓会です。
ということで更新はぼちぼちになります。
旧交を温めてきます。

・・・・・・

NHKハイビジュンの朝の番組をよく見ます。
朝テレビを入れるときNHKのハイビジュンです。
自然を写しただけの番組
音楽など
わずらわしいニュースは入ってきません。
このような番組を見て思うことは
日本の良心は地方で暮らす老人によって支えられている。
そんなことです。
不思議ですね。

・・・・・

このような「しみじみ」した詩もいいですね。
机の上にいつもおいてあります。
「たそがれる」ということばが「めがね」にありましたが、共通していますね。

・・・・・・

「苦しいときは」

晴佐久昌英

苦しいときは 昔を思い出すといいよ
自分が生まれた日
はじめて母のふところに抱かれてやすらいだ朝を
わが子に人生を与えた親の思いを
思い出すといいよ
悩みなく遊びまわった幼いころ
ころんでもころんでも世界を信じて
傷が治らないうちにまた走りだした夏休みを
思い出すといいよ
夢破れて死のうとさえ思ったあの夜を
もう二度と朝は来ないと思っていたのに
やがて魂に忍び込んできたあの夜明けの美しさを

苦しいときは 明日を夢見るといいよ
いつかすべてを月日が洗い清めて
こころにひとかけらのけがれも痛みもなく
晴れわたった雪山の青空のようになれる日を
夢見るといいよ
苦しみ抜いた末に優しさのちからを知り
苦しむ人の気持ちが痛いほど分かるようになり
涙にくれるだれかの隣りにそっと寄り添える日を
夢見るといいよ
苦しみはいつか喜びにかわると身をもって知り
あの最もつらかった一日こそが
最もありがたい一日だったと感謝できる日を

それでも苦しいときは もう何もしなくていいよ
歩けないなら歩かなくていいよ
弱ったその身そのままで黙って座っていていいよ
冬眠に入った天道虫のように小さく丸くなって
何もしなくていいよ
今日も揺れ騒ぐ波の底に貝は眠り
風わたる樹々をおおい星空はめぐる
人はすべてのいのちと結ばれているから
何もしなくていいよ
一粒の苦しみも見逃さない天使たちに囲まれて
誕生への深き眠りに落ちていこう
あらゆる苦しみは生みの苦しみなのだから

・・・・・・・

「そのまま このまま」

この世に自分の顔ほどおもしろいものはない
なんだこりゃ 妙なもんだ
みればみるほどへんちくりんだけど
生れおちたその日から これでわたしをやってきた
ずいぶん泣いたね たくさん笑ったな
つらいときは陰り うれしいときは輝く
いいでしょ この顔 天の贈りし芸術品
だれにも文句は言わせない
そのまま このまま じぶんのまんま
この世に自分の心ほどめずらしいものはない
びっくりするね へんな性格
つくづくいやになることもあるけれど
みんなとぶつかりながら なんとか自分をやってきた
ひねくれてるよね やさしいとこもあるな
しくじるとへこみ ほめられるとふくらむ
いいでしょ へんな人 天の授けしキャラクター
胸はって自分を生きていくぞ
そのまま このまま じぶんのまんま

この世に自分の縁ほどありがたいものはない
おかげさまで おかしな家族
因果な友とも切れぬ仲だけど
あんたたちに会えたから わたしはわたしになれた
傷つけられたよね その倍傷つけたな
一緒だと疲れ 離れているとさみしい
いいでしょ くされ縁 天の結びしなかまたち
いつまでも迷惑かけあおう
そのまま このまま じぶんのまんま


この世に自分の過去ほどすばらしいものはない
よくやってきたよ しんどい日々を
人はついてないねなんて言うけれど
主人公はこのわたし ひとつだけの物語
わすれたいこともあるね でもわすれられないな
倒れてうずくまり もういちど歩きだす
いいでしょ この人生 天の定めし大河ドラマ
なにもかもあれでよかったんだ
そのまま このまま じぶんのまんま

この世に自分自身ほど尊いものはない
世界に一人で 歴史に一度
自信をなくすこともあるけれど
もしわたしがいなければ この宇宙の意味がない
めざめれば 我あり人あり天地あり
朝起きて賛美 夜すべてに感謝
いいでしょ このわたし 天の親のいとしいわが子
よくぞわたしにうまれけり
そのまま このまま まんまのまんま

・・・・・

「しみじみ教」

しみじみ教の教祖は しみじみしている
いつでもどこでも しみじみしている
とってもうれしいことがあると
「とってもうれしいなあ」と しみじみしている
たまらなくつらいことがあると
「たまらなくつらいなあ」と しみじみしている

しみじみ教の教えは「常にしみじみすべし」これだけ
朝目覚めて新たな一日のはじまりに しみじみ
夜寝る前に 過ぎし一日を思ってしみじみ
春夏秋冬 今生かされていることに しみじみ

重い病を患っても 老いて体が動かなくなっても
たとえ死の床にあっても 「しみじみすべし」それだけ

しみじみ教の教祖は 何の役にも立たない
朝から庭のもみじを眺め しみじみお茶を飲んでいるだけ
悩める人の話を聞いても 何も言えず 何もできず
ま どうぞ一服と お茶をいれてるだけの自分にしみじみ
かえって相手になぐさめられたりして ますますしみじみ
もみじ散るこの惑星の小春日和の一期一会に しみじみ

しみじみ教はそれでも いやな思いをしたときに役に立つ
とってもいやな人に出会ったときも
「ああ とってもいやな人だ」と しみじみ
さらにとってもいやな人に出会っても
「いやあ惚れ惚れするほどいやな人だった」と しみじみ
しみじみしているうちに ちょっぴり 惚れてきたりして

しみじみ教には教団も儀礼も戒律もない
もちろん献金もない(そもそもだれも教祖を知らない)
でも しみじみ教の教徒になるのは至って簡単
ひとりしみじみ お茶をすすればいいだけ
しみじみ教は集会を開かない(そもそもお互いをしらない)
この空の下のどこかに仲間がいると互いにしみじみ思うだけ
しみじみ教徒はそれでも ばったり出会ったりする
お互いに妙にしみじみしているからすぐわかる

「もしかしてあなたも」と しみじみ
「いやあいるもんですなあ」と しみじみ
しみじみするばかりで会話は弾まないけれど
お互い喜びも悲しみも察しあって しみじみ

しみじみ教徒はばかにされても しみじみしている
損しても だまされても しみじみしている
ひどく裏切られても「人生だなあ」としみじみ
みんなに見捨てられた人と「人生だねえ」と しみじみ
しみじみ教徒が増えると つまらぬ争いが減り
しみじみ教がはやれば 世界はのんびり平和になるかも

しみじみ教の教祖は今日も しみじみしている
しみじみ教徒のことを案じて しみじみしている
きっといろいろ辛いであろうなあと しみじみ
なんとか耐えて 生き伸びておくれと しみじみ
みな 苦しいときこそ 一層しみじみ道に励んで
しみじみお茶を飲むんだよと しみじみ

しみじみ教の教祖は しかし夢見ている
いつの日か しみじみとこの世の生を終え
みな共にあの世に生まれ出たあかつきには
初のしみじみ大祭をしみじみ開いて しみじみ集い
「いろいろあったけれど いい人生だったねえ」と
みんなで しみじみお茶を飲む日を

しみじみ合掌