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The Sword 第三話 (2)

2010-03-02 23:46:55 | The Sword(長編小説)
「悪魔が来たぞ!逃げろ!」
周りにいた子供達が自分に気付くや否や蜘蛛の子を散らしたかのように逃げていく。
「お前の所為で死んだんだ!」
逃げながら叫ぶ子供達を必死に追う。再び場面が変わる。
「先生!ありがとう!先生!私に未来を指し示してくれた!」
仙人のような白髪で髭もじゃの男がにこやかに頷いていた。

「!!」歩き出した2人。下らない話なんかで盛り上がる。
「ノブ。あれやってみてくれよ」
「あれって何だよ?」
「『空夢』のファイガスとの戦闘前のやり取りを見せてくれよ」
『空夢』とは『空から降る夢』という漫画の略であり一部のファンに絶大な人気を誇る少年漫画である。絵に少々癖がありそして過激な描写がある為に好き嫌いがその分漫画で、好きになった人はどっぷりはまってしまうというちょっとした中毒性を持っているほどである。アニメ化を期待されている作品であるが、作者がそれを許していない為、漫画版を楽しむのみとなっている。一道は周りが回し読みしているのを読ませてもらい興味を持ったのだ。
「あれね。一道君のリクエストだから聞かないわけにはいかねぇなぁ・・・じゃ、行くぞ」
一瞬、目を瞑って、カッと目を見開いた。この瞬間に竹伸はそのキャラクターになり切るのだ。目つきが変わる。
「お前らは許せねぇ!お前たちのせいで俺たちの仲間が死んだ!お前達にはなんともない存在であっただろうが俺達にとっては無くてはならない仲間だった!それをお前らがよぉ・・・」
拳を握り、台詞だけではなくそのキャラクターの動きまでちゃんと再現していた。
「ふん!仲間、仲間、仲間か・・・薄っぺらな友情ごっこはあの世で面白おかしくやるんだな?」
「てめぇ・・・お前は必ず俺が倒しってやっからな!」
「ふん!ならば口ではなく実力で示して見せろ?」
鼻で笑い相手を見下す表情は、演技だと分かっていても腹が立ちそうになりそうになるほどである。まさにコマをそのまま切り取ったかのようであった。
「ハハハハハ!!やはりすごいな。アニメじゃなくてマンガの1シーンを台詞だけではなくて動きとか完全に再現しているんだからな」
竹伸はかなりのマンガ好きで、良く、台詞や動きなどを真似て名場面の再現を一人で行い、笑いを誘っており、下手な芸人のネタよりも面白いというのが友人達の声だ。

そんな事をやっているうちに竹伸が言う占い師が営業している所は駅前のビルの地下に付いた。離れた所から見ると人が並んでいるが近寄りがたいオーラを放っていた。
「それにしても占いなんて何で信じるのかな?人生は分からないからこそ面白いと思うんだけどな。分かってしまったらつまらないと思わないか?」
一道が素朴な疑問を口にした。
「まぁな。どうなんだろ?人間、先が見えなくて不安だからじゃないか?」
「不安なんて物は誰にだってあるだろ?それで自分だけそれが耐えられないって言うのは逃げみたいな物じゃないのか?」
「逃げかもしれねぇけどそこまでみんな馬鹿じゃないだろ?みんな完全に信じ込んでいちゃいねぇさ。ただ、人生、闇雲に分からん道を歩くより何かあるかもしれないって言われた方が気は楽になれるだろ?気休めみたいなもんだよ。お前は初詣なんかいかないのか?」
「それはいくな」
「だったら神社でお祈りなんかするか?それと似たようなものだよ。未来は分からん。けども、かなえて欲しいという願望を祈っておく。それで願っておけば何となく叶うような気がしないか?それと似たようなものだよ」
そう言われてみればなるほどと納得できる。
「だが、神様仏様とは違って赤の他人の話だぞ。そんな簡単に聞いていられるか?俺には出来ないな」
一道は少し疲れた表情で語っていた。竹伸は見ていなかった。
「お前きっついなぁ・・・」
「そうか?」
「それにしても、誰にでも悩みがあるって言っていたがお前にはどんな悩みがあるんだ?」
「そんな事、言えるか。それに言えないから悩みなんだろうが」
「でもよ。言ってしまったほうが楽になれるぜ。俺はそれから言うよ」
「ホイホイ悩みなんて語ってしまって弱みとして握られたらたまらないからな」
「またしてもきっついお言葉だなぁいちどー。俺を信じられないかよ」
「じゃぁ、お前は俺を絶対的に信じられるのか?」
「・・・。勿論、信じるとも!俺にとってお前は大の親友だからな。うんうん。間違いねぇ」
竹伸の間を聞き逃さなかった一道はちょっと遠くを見るように言う。
「人に言えないことの一つや二つ、人にはあるし、あった方が良いと俺は思うがな」
「何か、しみじみと語るじゃないか?誰の受け売りだ?」
一道自身、喋っていたら言葉が勝手に出てしまったという感じである。
「受け売りではないが、あまりなんでもかんでも喋りすぎるとそいつの事を薄っぺらく見えてしまうからな」
母親の事を考えれば言えない事情は多々ある。
「そうか?正直者って良くないか?喜怒哀楽を素直に表現する。屈折しなさそうでな」
そんな話を続けていると、逆に自分を追い込みそうなので日常的な他愛ない話を始めた。そして、店の前に来ると数十人程度の行列が出来ていた。
「1日8人の予約制なんだろ?何で行列が出来ているんだ?」
「基本的には予約制で、その予約も抽選らしくて、それで抽選を当てる為に並んでいるらしいぜ」
「予約の抽選?大した人気なんだな。じゃぁ俺たちの無料券も抽選か?」
「さぁ?そこまで詳しい事なんか知らねぇよ。この券は親父がもらってきたもんなんだからよ。親父がもらったはいいがいけなくなったからって俺が行く事になったんだぜ」
並んでいる人を横目に見ながらロウソクが灯された薄暗い階段を歩く周りはレンガ造りであってほのかに花の香りがする。その雰囲気からどことなく怪しげでここを歩いている時点でその人を占い師の世界に入れようという感じがした。
「何かヤバそうな宗教だったりしないよな?もしくは催眠術とか悪徳商法とか?」
「俺だって始めて来たんだから分からねぇよ。でも、これだけ人気なら何かヤバそうならとっくに捕まっているだろ?それがないからこの人気なんだよ」
階段を降りると、門のような扉があり、その手前に数席の椅子があった。そこは待合室で、そこには何人かの20代の女性が席に座っていた。恐らく同じグループだろう。二人も座って、周囲を見ていた。そこに一見すると西洋風でかなり豪華な装飾が施された棺桶のような箱が立っていて、1人1本までという張り紙があった。その紙でさえ、その場の雰囲気を損なわない為か、普通のコピー用紙ではなく、和紙のような比較的厚めの紙で、黄ばんでいて虫食いのような穴が開いた紙に書かれていた。『中からお好きなのをどうぞ』と書かれていた。
「何だコレ?」
「それ、冷蔵庫ですよ」
「これが?」
女性の一人が親切に教えてくれて、開けてみると確かに冷蔵庫であった。ひんやりと冷たい風が吹いてきた。だが、中の仕切りなども彫刻が施されており、徹底的に現代的な製品という物を排除しているようである。中を見ると瓶が何本か入っている。その瓶は単なる瓶ではなく複雑な形状をしており、魔女が使っていそうな薬瓶という風にも見えなくない。しかし、ビンは色付けされていてパッと見て中身が分からない為にオレンジジュースやグレープジュースなどとかかれたシールが張られているのはちょっとコミカルである。
「何だか本格的だな・・・」
ここまで来ると感心すると同時に更に怖さを感じた。やはり宗教的な事をやっているんじゃないかと思えた。
「俺もここまでやっているとは思わなかったな・・・」
「もしかして、占いであなたには悪霊が付いていているから不幸になるとか言って、不幸にならない為にはこのお札とか壷を買いなさいなんて事を言い出すんじゃ?」
周囲から厳しい視線を感じる。周りの女性達が言葉には出さない物の非難の目を浴びせてきた。周囲の特異な雰囲気から注がれる視線は、刺すように物凄く痛く感じた。一道はすいませんという風に小さく会釈した。それで、友達の耳元で話した。
「この人達、信者か?それとも客にそう思わせるようなサクラとか?」
「いや・・・違うとは思うけどよぉぉぉ・・・」
竹伸もこの雰囲気に圧倒されているようである。
「占いやめないか?何かヤバイぜ。ここ」
「ここまで来て怖気づいたのかよ。いちどー」
「そういう訳ではないが、何か嫌な予感がするんだよ」
「ただの気のせいだろ?この無料券を無駄にしていいのかよ。勿体無いだろ?」
勿体無い。一道には重い言葉であった。ご飯一粒さえ残すと叱られる施設にいた一道である。自分がしっかりしていれば洗脳されたり、催眠をかけられたりすることも無いだろうという事でそこに座り続けた。
暫く待っていると、扉が開いて、ヒュッと冷たい空気が中から吹いて来た。それと薄暗い闇から同時に女性が出てきた。
「ねぇ!どうだったの?占いは?」
さっきの女性達に囲まれて出てきた女性はボーっとした様子であったの揺さぶられていた。
「凄い・・・全部当てちゃうんだもん。今まで、誰にも言った事無い事も全部・・・」
「でしょ?でしょ?で、これからどうすれば良いって?」
「もう少し積極的にしたら、振り向いてくれるんじゃないかって言っていた」
「そうなんだ!やったじゃない!」
女性たちは手を取り合ってはしゃいでいた。
「お静かに!!神聖なるこの波動を大切にしない者には自分にまとった運勢の風さえも吹き払ってしまう事をお忘れなく!」
近くにスピーカーが設置してあるらしく、声が響いてきた。エコーが不自然だと思えるぐらいに効いておりそれは威圧的にも感じられたがその声が今の雰囲気とマッチしてしまう所がより怪しさを感じさせた。
「すいません!」
「すいませんでしたぁ!それじゃ、出ようか?」
女性達は、恐れるようにして、階段を駆け上がっていった。
「次は俺たちの番か?」
「俺たちじゃなくて俺が先だろ?」
「あ、ああ・・・一人ずつだったからな。お前、何を占ってもらうんだ?」
「将来の事かな?気になるだろ?自分の10年後20年後どうなっているかっていうのはさ。お前はどうなんだ?」
「あ・・・決めてなかったな・・・」
「おいおい・・・何も考えてないなんて失礼だぞ。ちゃんとしっかりした事を考えろよ」
女性が出たが、すぐには呼ばれない。1人50分で10分は休憩兼準備時間らしい。その間、待っているが、重苦しい空気を感じていた。
「それにしても、誰にも言ってないことを当てたとか言っていたよな。その占い師」
「だから言っただろ?すげぇらしいんだよ」
と、見ていると、竹伸は少々震えているように見えた。
「お前、さっきまで調子のいい事を言っていたのにビビってんのか?あんなに占ってもらって嬉しいみたいな事を言っていたのに」
「そ、そんな事はねぇよ」
「ふ~ん。まぁ、頑張って自分の過去を覗かれて来い」
「そういう言い方は何か侮辱してないか?占い師を・・・」
「そうか?」
「次の人、どうぞ、お入りください」
ゆっくりと扉が開く。中には人がいないのでどうやら自動で扉は開くようだ。再び、冷たい風が吹いてくる。今度はしっかり見たのだがどうやらドライアイスでも焚いているのか煙のような物さえ出ていた。これでライトが光っていたらかなり前の宇宙人が出てくる映画の1シーンだろう。
「じゃ、行って来る」
「おう!行って来い!で、最後に・・・」
「何だ?」
「死ぬなよ!」
一道はグッと拳を作ってみせる。一道は冗談でやってみるが、そうかもしれないと疑わせる怪しさがここにはあった。
「ば、馬鹿な事を言うなよ・・・」
竹伸はおどけていうが、かなりビビっているようであった。背中をちょっと叩けば飛び跳ねて驚くのではないかと思わせるぐらいであった。
そして、竹伸が中に入ると、扉が閉まった。一道は一人取り残された。
「待っている時間は暇だな・・・見れば見るほど、やり過ぎ感はあるな?」
雰囲気作りというのはとても重要だとわかる。しかし、ここまで徹底気に怪しげな空間を作り上げる必要があるのだろうかと疑問であった。
「こりゃ見ようによってはお化け屋敷だよな。何か出てきそうだぜ」
周囲を見ていて、つまらなくなって来た。一人でこんな所で50分も待たされるのは不気味であった。
「こんな所で待っているのも何だな・・・予約制なんだから、別にこの席を離れても問題ないだろ?」
そう思って、一道は階段を上がった。外はもう薄暗くなってきた。ライトや看板の光が照っており、現実に戻ってきたという感じがした。
「やっぱり外のほうが落ち着くな。あの異様な空間は息苦しささえ感じさせるもんな」
出て来たは良い物のやる事がないので近くのコンビニで雑誌を立ち読みする事にした。丁度、好きなマンガが連載している雑誌だったので読んでみたがそれでもコンビニに設置してある時計を見るとまだ時間が30分近くあったので丁度見つけた占いの本をペラペラとめくってみると最後のページに星座占いや血液型占いがあった。この占いの他の占いとは異なる所はいろいろな占いが組み合わされていることだった。つまり、A型のふたご座の男性と言った風に細かく分かれているので人にも信用されやすいようだ。
「この手の占いって占い師によって違うんだよな。全員が全員同じ結果なら話は分かるけどよ。ある占いでは1位なのに別の占いでは最下位だったら結局、どっちなんだ?プラマイ0なのか?分からないんだよなぁ・・・それとも占い師の技術が高い方が正しい?どう比較すりゃいいんだよ・・・ん?もうこんな時間か。戻るか?」
素朴な疑問を頭の中で展開していると、時間は5分前になっており、すぐに占いの館に戻る事にした。椅子に座って、待っていると扉が開いて、友人が出てきた。
「一道。やっぱ本当だよ。凄すぎる。本当、神様が乗り移っているんじゃないかって思えるほどで鳥肌が立った」
言葉の使い方が違うがその驚きぶりを見れば何が起こったのか興味が湧く。神様などという事を言うのでちょっと笑えそうになったが彼の真っ直ぐな目を見る限り本人は本気で言っているだろう。
「お前、大丈夫か?何かされたんじゃないのか?薬物とか催眠とか・・・」
「疑う気持ちは分かる。俺も実は占ってもらう前は半信半疑だった。でも、実際にやってみると俺が考えた事を完璧に的中させたんだもんよ。お前も疑っているって言うのなら行って来いよ」
一道は警戒心を一層に強めた。占いに疑うというのではなかった。気持ち悪いと思えたのだ。
「次の方、どうぞ」
声と共に扉が開いた。
「ホラ!いちどー、お前の番だ。行って来い」
「おう」
「いちどー。心配しないで行って来い。お前は立派な奴であったと後世に伝えてやるからな」
「おいおい・・・パクんなよ」
さっきの冗談に対するツッコミを冷静にして、ゆっくりと歩んだ。中は壁がうっすらと見えるぐらいの真っ暗で足元に通路が分かる蝋燭の揺らめきが見えた。通路を辿っていくと小さな扉があり、そこが独りでに開いた。
「ようこそ・・・我が占いの館へ・・・」
長めのテーブルの反対側で両肘を着いて両手を組んでいる人がいた。全身にローブをまとい、目以外は隠していた。その手袋やローブの上から指輪やネックレスなどの宝石類や貴金属を身につけている。誰がどう見ても怪しい。外をこんな姿で歩けば確実に、警察の職務質問の対象だろう。
「宜しくお願いします」
中に入ると、扉が閉まった。
「おかけ下さい」
木製でかなり年季の入った椅子のようだ。一道は言われたとおりに座ると、占い師が優しく言う。
「そんなに硬くならないで下さい。そんなに怪しいことをしようとは思っていませんので・・・」
ここまで徹底的にやっておいて何が怪しくない事をしないなんて良く平気で言えると思えた。ますます、一道を硬くさせた。
「私はどうも形から入らないと乗ってこない性格でして・・・我ながら困った物です」
穴から覗く目元が緩んでいるように見えた。一道の警戒心はそのままである。
「それでは早速始めましょうか?時間も限られていますからね」
ゆっくりと立ち上がってこちらに向かって歩いてきた。
「世間の風の便りでご存知だと思いますが、私は記憶を見ることが出来るのです。一人の人が積み重ねて来た記憶を客観的に見ることによってその人にとって最適な方向性を考えるという物なのです」
「客観的に?」
「簡単に言えば、あなたが歩んできた道を見ることで現在地確認し、この先どこに進んだらいいのかと私が示してあげる人生の案内役と言った所でしょうか?」
占い師は大きめの皮製の包みを開くとそこには何本の長い針が収められおりその中から一本、引き抜いた。
「何も怖がる事はありません。私は針師の免許も持っていますので何ら危険はありません。この針は何の変哲も無いただの縫い針です」
確かに針の反対側には極小の穴が開いていた。占い師が持つ針はキラリと光り、占い師が持つ怪しさに加え、怖さも入り、まさに異様な空間だといえた。
「何で針が必要なのですか?」
「記憶を見る為には首を軽く刺しますので、必要なのです」
「首を刺す?」
「はい。生き物には色々と大切な場所があります。心臓であったり、頭であったりという風に・・・その中で生き物が生きる上で非常に重要な所の一つは首なのです。体を動かす指令は脳から出している事はご存知ですよね?その指令が体中や手足の隅々の神経を駆け巡る事によって腕を上げたり、歩いたりと言った事が可能になる訳です。ですから首は全神経が集中していると言っても過言ではありません。例えば、ちょっとした衝撃で鞭打ちになったり、首の骨を骨折して半身不随になったり、最悪、首から下が全く動かなくなったりする事もあるほどですからね。それぐらいこんなに細い首という部分に神経など人が生きる上で重要な要素が詰まっているのです。そんな集中している部分だからこそ、小さく傷つけるだけで情報が少し外に溢れ出してくるのです。当然、直接指令を送る脳を傷つけられれば早いのですが頭蓋骨が記憶のガードをしていますし、後、心臓というのも記憶を集中しているところの1つなんですけど心臓に近い胸や背中はその付きすぎた肉などによって針が届かないのです。ですから、一番適しているのが首というわけなのです」
首に針を刺しただけで記憶がわかるという事には怪しさを感じる物の、剣道を行っていた一道からすれば、江戸時代、罪人が首を斬られていたという事実を知っているので首の重要性は理解できた。
「それでは、このソファにうつ伏せになってください」
壁の端の方にソファがあるかなり高級であり、部屋の雰囲気にマッチするような何かの紋章なのか魔方陣なのか意味深な刺繍が施された布がかけられている。
「本当に大丈夫なんですよね?針で首を刺すんでしょう?」
「勿論です。ちょっとチクッとすると思いますがこちらはプロです。出血もさせませんし傷さえも残しはしません。1mmも刺さないと思いますからね。その点は信じていただいて結構です。万が一、出血したというのなら料金を全額、お返ししますし、治療費もお支払いいたします」
その言葉には力が篭っており、占い師は絶対的な自信を持った目をしていた。
「では、お願いします」
言われたとおりソファにうつ伏せになってみるととても軟らかくリラックスできた。
『何だか歯磨き粉みたいな匂いがするな・・・』
それが、ハーブの香りだという事をハーブとは縁の遠い暮らしをしている一道は知らない。体を置いた。首筋をなぞる占い師の手つきが身震いをさせた。
「すいません。人それぞれ刺す場所が決まっておりまして、そこ以外を刺すわけには行かないので、その場所を探して・・・ありました!では、行きますよ。ちょっとチクッとするかもしれませんが、大丈夫ですよ」
首筋と言っても伏せているような状態なのでどこをどうしようとしているのか分からない。
チッ!!


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