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The Sword 最終話 (18)

2011-02-18 20:05:36 | The Sword(長編小説)
7階。元気と悠希は遂に病院の最上階に辿り着いた。後はそこにある魂を取り出したり、入れ替えたりするマシンの破壊と魂に関する情報が集まった資料の処分である。
「まさかここまで来られるとは正直思ってなかったな」
「アンタ、始めから出来ないつもりでここまで戦ってきたの?」
「俺がここまで来るって話だよ。俺は、いちどーや港のような剣術の実力もなければ剛のような運動能力もない。そんなただの車の修理工の1人でしかない俺がここまで来られるなんて普通は考えないだろ?だから他の誰かが後の事をやってくれるんだろうなってな」
「そんな他力本願でどうするの?まだやる事は残っているでしょ?」
「分かっているよ。他にやってくれる奴がいないのなら俺らがやらにゃな・・・」
二人はまず近いマシンがある部屋へと歩き出した。
「この先は何があるか分からない。いきなりソウルフルを撃たれる可能性もある。今まで以上に気を引き締めていくぞ」
「言われなくても分かっている」
周囲の確認、壁際からは離れ歩く。
「みんな、もう、下にいてさ。いちどーが片付けてくれていると嬉しいんだけどな」
「いつまで虫のいい事言ってるの?さぁ!行くよ!」
勇一郎の資料を見る限りまだ何人もの関係者がいる事は分かっているが彼らの配置は分からないから逆に全員がこちらに集合している可能性も考えられる。しかも、ここから先は計画の全てが集約された最重要拠点と言っても過言ではない。誰もいないなどという無用心な事はありえないだろう。
「にしても静か過ぎる。いくら病院で騒いではいけないからってここまで静かだとかえって不気味だな」
「いい加減、アンタが静かにしなさいよ」
「喋ってないと落ち着かないんだよ」
「臆病者」
「ああ。俺はビビリだよ!」
ここまで来てビビリなどと言い出すのだろうか?悠希自身、平静を保っているのがやっとであった。本当なら逆に励まして欲しいぐらいである。だが元気のせいでそうもいかなかった。
「と、言う事で手つないでいいか?」
「はぁ?嫌に決まっているでしょ!そんなの!」
「やっぱな・・・残念」
そんなやり取りをしている間に、遂に問題の部屋の前まで来てしまった。ここは地下の院長室で自動ロックを解除しなければ扉が開く事はないのだが扉は開いた。
「いちどー達。成功したのか?」
軽く喚起する元気。次の瞬間であった。
「何だ?」
足元に握り拳ぐらいのプラスチック製の球状のものが転がってきた。何か嫌な気がしたので少し離れたらその直後であった。
カッ!!
パッとその玉が光ったようであった。瞬間的に動こうとした時には痛みが走っていた。
「ぐぁ!」
先に入った元気が崩れ落ちた。悠希は突然の事に立ち止まってしまった。その瞬間に、頬につめたい感触が抜けていった。
「青年1人に命中。イッイッイッイッ。だが、直撃ではない。後ろの女には殆ど当たっていない。ソウルボムの有効射程はせいぜい3mほど。テストの時よりも範囲はやや小さい。やはり1つ1つの威力は異なると・・・イッイッイッ」
そう言いながら持っているバインダーにメモを取る男。その男は魂交換機製作におけるの最大の功労者である『田町川 幸太』であった。20代の男で自分の好きな事に没頭する才能は群を抜いており、物作りのアイデアはまさに天才的に尽きる。ソウルフルやソウルド発生器や魂交換機等全て、考えたのはこの男だという。4Fにいた志摩達はあくまでサポート、技術部を運営しているに過ぎない。だが、人間的な部分が完全に欠落しており、自分の興味以外のことには完全に無頓着。体は不潔極まりなく、コミュニケーション能力も皆無、地位や名誉や金など人間の根本的願望がなく社会のはみ出し者だ。『イッイッイッ』と、気持ち悪い笑い方が特徴である。
「アンタ!大丈夫なの!?ねぇ!」
田町川はニヤニヤと笑っていた。頭はボサボサで手入れどころか長い事洗ってない事が分かったし白衣を着ているにもかかわらず首周りはかなり黒ずんでいた。そして異様な体形が特徴であった。まるでアメフトの装備のように肩が出て全体的に体が大きい。その割に頭は小さかった。フランケンシュタインと言えるかもしれない。何か汚れた白衣の下に身につけているかもしれない。
「バカがぁ・・・アイツから目を逸らすんじゃねぇ・・・」
元気は自分を心配する悠希に叱咤した。悠希は、田町川の事はあまり気にしない様子であった。
「ここまで来るとは・・・おかげで色々、テストが出来る。イッイッイッ」
笑う田町川。その田町川の背後にある直径2mはあろうかという大掛かりな球体が大量の管につながれて2つ並んであった。恐らくそれが、魂を交換出来るという装置だろう。
「これは今、開発中の新型のマッサージチェアだよ」
「?」
状況を考えないあまりのカッ飛んだ冗談の為、笑いも怒りも起こらずただ、理解不能といった様子であった。
「あれ?笑ってくれないかい?私が考えた最大限の冗談だったんだがな。病院などの大規模施設を担う大型の炊飯器の方が良かったかな?いや、食器乾燥機の方がそれらしいか?」いや、あなた方、常人にはハイセンス過ぎて分からなかっただけかな・・・それはさておき、ご覧の通りあなた方の恐らく最終目的であるはずの魂交換装置。『ウーム』。魂を交換するものだ」
田町川は背後の装置に対して親指で指した。
ウーム。アルファベット表記は『womb』。その意味するところは『子宮』
「これが・・・こんなものが!こんなもののせいで!」
頭を駆け抜ける様々な人たち。肉体を交換させられ怒り狂う者。この計画に携わったばかりに運命を翻弄された者。そして死んでいった者。悠希は今にも感情が爆発しそうだった。
「アンタはもう1人なんだから全部、終わりよ!だからもうこんなバカな事はやめなさい!」
「バカではない。とても重要かつ意味がある事。これは人類の挑戦」
「人の魂を入れ替えて何が楽しいの?ここまで色んな人達を見てきた。けど、それで本当に幸せそうな人なんていなかった!」
「この技術が完成し、世界に出回ってからこそ真の幸福が訪れる」
「人の心を武器にして遊ぶような人達が正しいわけなんてない!」
「遊びではない。ソウルフルやソウルボムの事か?これはまだ、技術の発展途上の副産物として利用しているだけ。積極的にこんな物を用いようとは思っていない。これも人、一人の魂そのものなのだから・・・イッイッイッ」
先ほど投げた球を握って見せた。
「一人の魂その物?」
「魂を別人の肉体に固定するという過程で魂は肉体だけではなく物体に固定する事も可能であると分かった。それが武器に転用出来ないかと私は考えた。そして完成したのがコレらだ」
情報は無かったがソウルフルが人間の魂を利用しているという事は何となく分かっていた。撃たれた感覚で人の声を聞いた気がしたからである。一部ちょっと利用するぐらいだと思っていた。だが、完全に一人の人間の魂であったようだ。
「あまり勘違いして欲しくないのは、我々とて実験や戦力増強が目的に無差別に人の魂を抜く事はしていないよ。そこまで私達とて悪魔ではない。事故や瀕死の重傷を負った人や今にも亡くなりそうな患者の魂だけを利用している。肉体が死ねば魂も自然消滅する。折角の研究素材。勿体ないだろう。そういった魂を有効利用させてもらっているだけのことさ。亡くなる直前の人達も許可を出してくれている。イッイッイッ」
普通の人間の魂が急に抜かれるような事になれば警察も病院の行為を不審に思うことだろう。しかし、死に際の人間の魂を抜いたところで肉体もそのまま死ぬのだから警察にもさほど怪しまれる事もなく研究を進めることが出来るのだろう。
「当然の事として我々はその魂を1つたりとも無駄にはしていない。魂の一滴まで調査しているのだからな」
「アンタ達、正気なの?」
「イッイッイッ。その言葉、何度言われた事か・・・13回目か?」
悠希はソウルドを構えた。田町川がソウルフルを持ち腰のベルトに先ほど転がした玉がいくつも装着されていた。こちらは2人。どちらが有利であるかは分からない。相手の出方を伺いたいところであったが田町川は動かない。となれば、こちらから攻めるしかないだろう。
「行くぞ。悠希」
「アンタ、平気なの?」
元気は苦しそうな顔をしていたが立ち上がることが出来た。
「走る事は難しいが大丈夫だ。それにソウルフルもある。お前の援護ぐらいはやれる。だから早く!ここが俺達の目指した目的地だ!」
「うん!」
二人は分かれて田町川に向かう。苦悶の表情を浮かべたまま、持っているソウルフルを構えた。弾は馬場が持っていたものを装填していた。田町川は悠希にも元気にもソウルフルを構えなかった。二人に向かってこられているというのに余裕綽々と言った様子であった。何かある。確実に罠か何かがある。だが、分かりはしない。だから何か罠があるにしてもここは攻めるしかない。と、そこで田町川は懐からリモコンを取り出した。
「?」
「悠希ちょっと待て!あれはソウルド発生器ではないのか?」
悠希は構わず向かっていくと、田町川はボタンを押した。元気は慌てて周囲を確認し異変があるか確かめる。
『何だ?ただのダミーか?』
周辺を凝視しているがまるで魂に関して何も起こらない。
「ん?」
ふと気がつくと耳に鳴り響く電子音。
ピピピピピピ!
「何の音だ?」
アラームのようであった。まさか魂を音によって飛ばし、音を聞いた相手にダメージを与えたり意識を狂わせたりしてくる物ではないのかと疑った。もしくは催眠効果がある音かもしれない。だが、元気自身、負傷した部分の痛み以外は何もないし、頭はしっかりしている。無意識の間に異常をきたしているのであれば防ぎようもないが今のところ、正常そのものだった。
「何ともない。少なくとも今は・・・悠希。お前は何か?悠希!?」
「あ・・・ああぁぁ・・・」
悠希が耳を塞いで膝を突いて震えていた。
「どうした?悠希どうしたんだ?何が起きたんだ!俺には何もないが・・・」
「君は知らなかったのか?彼女の心の傷を。イッイッイッ」
「ああ・・・知らねぇよ。お前は知っているのか?」
ソウルドは、人の過去のトラウマをきっかけに発動する事が多い。その為、過去に何があったのか話し合うものであるが、彼女からは何も聞いていなかった。元気は己の過去を彼女に語ってはいたが彼女からは何も語られる事はなかった。普通の話し合いの場であるのなら相手が話したのなら自分も語るものであるが、彼女はしなかった。それは、辛い思いに心の整理が付いていないのだろうという彼らの優しさであったからこそ深く追求しなかった。
「君達全員の事は全員調査済みだよ。彼女は、3~4歳の頃に・・・」
「喋るな!部外者のアンタの口から聞きたいとは思わない!本人が自分から話すまで待つ」
「そうかい・・・イッイッイッ。ご自由に・・・」
「頑張れ!悠希!いつまでもこんな音に悩まされているな!乗り越えるんだ!そうしなければお前は今後の人生、ずっと苦しめられるんだぞ!」
「ううっ!うっ!」
音は相変わらず鳴りやまず悠希は引きつけ起しているような状態であった。元気は駆け寄って彼女の肩を擦っていた。下手をすればソウルフルや先ほどの爆弾を投げつけてくる可能性がある。近くにいるのは危険であったが彼女を一人にして置ける状況ではなかった。
「悩みの原因からの脱却。だが、それには周りが思っている想像以上の苦痛を伴う。簡単な事ではない。イッイッイッ」
苦しむ悠希を見てニヤニヤとする田町川。ソウルフルを彼女に向けた。元気は彼女を守ろうとしていた。悠希はそんな現状など分からないようで、動こうとしなかった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!私が・・・私があなたを殺した・・・許して・・・許して・・・」
悠希はうわ言のように呟いていた。

それは悠希が4歳になった時であった。彼女のうちではうさぎを飼っていた。大型デパートのペットショップで見つけてそのつぶらな瞳に悠希は一目惚れして両親の前で駄々をこねて購入してもらったのだ。両親から『うさぎの面倒はあなたが見るなら飼ってもいいよ』と約束したので飼う事になったのだ。幼い子供の多くは、生き物を飼うという大変さを知らないで可愛いから欲しいと言い出すために実際に飼ってみて始めて大変さを知って同じような約束をしても完全に守れない子供が多く、結局、両親が面倒を見るというケースが多いが、悠希はそんなことはなく、餌をやったり、糞を片付けたり、ウサギ小屋を掃除したり、出来すぎというぐらいに面倒を見ていた。
そんなある日、留守番をしている日の事であった。
「ああ!ごめん!ミミーちゃん!」
ミミーと名付けたウサギに飲ませようと思って持ってきた水を入れた皿をこぼしてしまい、ウサギにかけてしまった。冬の寒い日だった為に、ウサギはブルブルと体を震わせて水を払ったので殆ど濡れていなかったのだが、非常に可哀想に悠希の目に映った。水をかけてしまった罪悪感もあるのだろう。
「すぐに温めてあげるからね。でも、どうしよう」
すぐにタオルで拭いてあげたもののそれでも不十分だと思えた。髪を乾かすドライヤーを使おうと思ったがどこにあるか分からなかった。周囲を見上げるようにして乾かせるようなものがないかと探し回って、見つけてしまったのだ。
「あれだ!」
椅子を引っ張ってきて、椅子の上に乗り、ふたを開いて、ミミーを箱の中に入れた。
「すぐに温かくなるから待っててね」
その箱にあったつまみをひねり、ボタンを押す。使い方は分からない。母や父が使っていたのでその見よう見まねである。パッと中が光りミミーの姿が映し出されたと思った直後・・・
「ウギュイァァァァァァァァァ!!」
それが始めて聞くミミーの声であった。今まで一度として聞いたことがない始めて聞くミミーの声であった。鳴いた事がないウサギが突如叫びだしたのだ。悠希はその恐ろしい声に驚き、後ろに下がると、バランスを崩した為、椅子ごと倒れた。悠希も床に体をぶつけたがそんな事などどうでもよかった。ミミーが叫び声を上げ、ドンドンと箱の壁に激しく体当たりをしているようであった。それから少しすると次第にその体当たりの回数は減り、声も弱々しくなっていき、果てにはなくなってしまった。悠希は恐ろしさのあまりその下から小箱を見上げるだけで中がどうなっているか見る事はなかった。
ピピピピピピピ!
辺りに電子音が響き、静かになった。
「ミミーちゃん?」
呼びかけにまるで反応はなく、体が動かなかった。怖いし、どうしたらいいのか分からなかったからだ。
「ただいま~悠ちゃん。良い子にしてた~?」
母親が帰ってきた。母親はわが子の異変に気付いた。
「どうしたの?悠ちゃん」
「あ・・・あ・・・あの・・・ミミーちゃんが・・・」
悠希が向かっている方向には例の箱。母親は恐る恐る箱を開けた瞬間に
「ウッ!」
吐いた。
悠希は当時4歳の女の子であった。一時期、子供は身の回りにあるものが一体どんな物なのかひたすら質問攻めにする傾向がある。その中で、電子レンジを指差して母親に聞いてみた。
「ねぇ!ねぇ!ママ!あれ!なぁに!」
「これはねぇ・・・」
そう言って、母親は冷蔵庫から牛乳を取り出し、カップに注ぎ、悠希に触らせてみた。
「冷たい」
「ふふ~ん」
その素直な反応に満足げな母親はその箱に牛乳が入ったカップを入れて、つまみを回してボタンを押す。暫くすると音がする。カップを取り出して触らせた。
「熱い!ええ!?さっきは冷たかったのに!どうやったの?どうやったの?」
「これは電子レンジと言って冷たくなったものを温めるものなの」
「デンジレンジ?」
「デンジレンジじゃなくて電子レンジ」
「この箱の中でカップさんが走ったんだね」
「え?」
「走ると体が温かくなるから~」
「まぁ、そんな所ね」
電子レンジの原理が分からない母親にとっては悠希に聞かれてはぐらかすしかなかった。
だから、幼い悠希には濡れて寒い思いをしているであろうミミーを温めようとしただけだったのだ。電子レンジの使い方は知らなかったが母親のやっていたようにやっただけだ。
それは無知なる優しさから生み出された悲劇だった。

その後、悠希は電子レンジの電子音に対して過剰反応してしまうのであった。しかもその事件は心のしこりとして深く彼女の中に残った。それから暫くウサギや電子レンジは見たくもなく成長していった。しかし、いくら離れて生活しようとしても完全に切り離す事は難しい。電子レンジなんてものはどこの家庭でも大抵あるものだし、ウサギは干支にもあるし世間で多くのウサギのキャラクターが存在している。
小学校に通い出したある日、小学校の動物小屋が目に付いた。高学年の児童が動物小屋の掃除をしていた。見るのも嫌だったから目を離そうとしたのだが悠希は見てしまった。動物小屋の中にあるダンボールサイズのウサギ小屋にその児童がウサギを入れようとしている瞬間を。
「だめぇ!!」
動物小屋の金網に張り付く悠希。その姿を見て驚いた。
「な、な、何よ。掃除が終わったからウサギ小屋に入れようとしただけじゃない」
「え・・・あ・・・うん・・・?」
金網を握っている手から伸びる光。手をぶんぶんと振るとその光は消えていった。
「何?今の・・・」
それから手を握ってみても特に変わりなかった。非常に気になったから友達に聞いてみた。
「ねぇ・・・ねぇ・・・手から光が出た事ある?」
「え?手から光?それって手品?火がパッとつくところなら見たことがあるけど」
「ううん。火じゃなくて光が手から出てくるの」
「そんなのある訳ないじゃない。手品でもしなければそんな事」
「だよね~」
友達だけではなく親にも聞いたがその反応は同じであった。それに、任意に出せるものでもなかったから悠希もその事に忘れていたが、またその事を及ぼす事を思い出した。
小学校中学年になり、家庭科の授業の調理実習でご飯を炊いてお味噌汁を作るというものであった。班毎で行っていたのだが一部の男子が料理を女子に任せてふざけていた。包丁や皿など料理に関係する道具は女子の手元にあったのだが、関係のないものは遊ぶ対象になっていた。調理が終わり、皿洗いに使用するスポンジとか剥いた後の野菜の皮などであった。その中で実習室の中にあった電子レンジに興味を示した。
「おお!すっげ!今、光ったぞ!」
「マジかよ!」
何と鉛筆を中に入れて温めているようだ。
「あああ!」
「大丈夫?悠!」
「どうしたの?」
電子レンジの中が目に止まってしまった。悠希は急に叫びだしてしゃがみ込んでしまった。自宅の電子レンジと同型ではなかったが電子レンジ自体に拒否反応が出るようであった。クラスメートが心配し、保健室に行った。そこに着いて落ち着いたところで気がついた。
「また光っている!?」
今度は前回とは違い、少し意識するとソウルドを出したり引っ込めたりする事が出来るようになっていた。しかし、誰にも見えない。自分は他人とは違う人間であり、おかしくなったのだろうと思った。
ある日の事、ソウルドを出し入れしていた。
「ねぇ!悠希~。先生に集めたノートを提出しなければならないんだけど一緒に行かない?」
「あ・・・」
急に現れたので誤って友達がソウルドに触れてしまった。そこにはその子の心の中があった。

『1人で行くと重いし疲れるから悠希といけばいいかな』

「いつっ!何!?今の!?」
友達が、痛がった。
「あ、あ・・・」
人の心を見、そしてこのソウルドの意味を知ってしまい、人が怖くなった。何を考えているのか分からないと・・・それから、心の底から友達を信用できなくなった。ソウルドがほとんどの人には見えないという点も彼女が人を遠ざける一因となっただろう。彼女はそれからどんどん内向的な性格となって行った。友達も極端に少なく、成人し、家を出て代わり映えの無い毎日を過ごしていた時、一条 昌成と出会った。それから一道達に巻き込まれていった形である。


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