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髭を剃るとT字カミソリに詰まる 「髭人ブログ」

「口の周りに毛が生える」という呪いを受けたオッサンがファミコンレビューやら小説やら好きな事をほざくしょ―――もないブログ

The Sword 第十一話 (5)

2010-11-05 18:59:09 | The Sword(長編小説)
「パーティか・・・俺は何をしてやるかなぁ?」
毎月のようにある事なのでさほど悩むほどのことではないかもしれないが、一道は大体他人任せであった。一緒に歌を歌ったり、劇をやったりといった事ばかりで何人かで一緒にやる事ばかりだったので今回のように個人で何かする事を考えるのは難しい。
「俺、個人に、得意な事といったら、剣道ぐらいだが・・・それで何か出来るものだろうか?」
一道はパーティの事を考えていくと、少しずつずれていった。
「引越しか・・・昌成って言う子供と一緒にって事は残った俺達は一体、どうするんだろうかな・・・その魂の研究しているという連中と敵対するしか方法は残っていないのか?」
その研究している者達の規模を知らない一道たちはどうすればいいのだろうか?
「カナさんもそのメンバーに入っているのなら何とかやめさせる・・・いや、その前に仕事をやめさせる方が先なのかもしれないな・・・」
悪い事ばかり考えてまず、一番初めに考えていた事を忘れていた。
「おっと。まずパーティの事を考えるのが先決か・・・」
授業中は殆ど、上の空で、放課後になったので剣道の練習は相変わらず続ける。
「練習に関しては集中して行わなければならないな・・・」
いつまでも、雑念にとらわれていては特訓の意味がない。特訓をするのならば完全に特訓の方に集中させなければならない。深呼吸を数回し、まずは筋トレをし、それから竹刀を振るう。最近は、竹刀に集中する事に慣れてきた気がする。
「もし何かあった時、間 要。金田 直。この二人を倒せるようにならなければ俺達に明日はない」
金田 直は1ヶ月ほどまるで話を聞かないがいずれ現れるだろうと思って、敵という対象になる。この二人と戦うには他の者が戦うとすれば荷が重すぎるだろう。だから最もしっかりしなければならないのは自分なのだと己に重圧を課し、練習に励む。6時になって忠志と港の二人が合流した。
「はぁ・・・はぁ・・・」
汗だくで湯気が出ていながらもまだ竹刀を振り続けている一道。適当に振り回しているのではない。1度1度の打ち込みに念のようなものがこめられているように思える。
「凄いな・・・」
その一道の入れ込みように一緒にやっていた忠志と港はただ圧倒されていた。
『隆って剛の兄貴・・・だったか?それと犬のオッサンとかいう奴も殺されているとなれば真剣になるのは当然だよな。俺も負けてはいられねぇな!』
事情を知っている港もまた、竹刀を振り続けていた。
「港もか?な、何だ。この二人・・・いや!俺も負けていられない!」
忠志は一人取り残されているような状態であったが自分のこの二人と同じようにしなければ差をつけられると思った忠志もまた竹刀を振るい続けた。
「何だ・・・あいつ等・・・そろそろ学校が閉まるのに、まだやっているぞ」
「元気が有り余っているんだろ?」
「それにしたってやりすぎだろ」
その他の部活で下校途中の生徒達が3人の熱中振りに引いていた。
「おいおい。お前ら、部活熱心なのは結構な事だがもう門を閉めるぞ。サッサと帰れ」
「はぁ・・・はぁ・・・」
教師が声をかけに来たのだが全員息切れしており、まともに応対できなかった。
「どうしたんだ?全員倒れそうじゃないか?」
暫くの間の後、忠志が声を出した。
「だ、大丈夫です。すぐに下校しますので・・・」
歩く姿も全員ふらついており、誰もが心配するような状態であった。
「一生懸命やるのは大切だ。だが無理のし過ぎは体の毒だぞ。しかし、ここ最近の若者はそれを真に受けて大したことをやろうとしないから成長しない。俺がお前達ぐらいの時もそんな感じだったな」
教師は感心しながらそんな3人を見送った。水を飲み、着替えて下校する。全員、疲れきっているので話す事などまるでなく、別れの挨拶もなく全員、去っていった。

そんな毎日が週末まで続いた。週末になり、ついに小屋にて引越しのお祝いが行われる事になった。予定時間よりも早くに来いという元気が言っていた為、練習を行わず帰ろうとしていた。
「あれ?今日はもう帰るんですか?」
下駄箱で一道は港に出くわした。彼は剣道の防具を着込み、これから練習をする気満々である。
「そうだ。ちょっと私用があってな」
「どんな用なんです?まさか、秘密の特訓ですか?それは気になりますね」
「そういう訳ではないがちょっと大事な用だからな」
「もしかして魂の剣の事で、何かあるんですか?」
一道は無言で、睨みつけた。周囲には人はいなかったが言い方が非常に無神経であり、癇に障った。少し近付いて耳元で囁くように一道は言う。
「滅多な事は人が多い場で言うんじゃねぇ。どこに耳があるか分からないんだぞ。下手をしたらここの高校にも使い手がいるかもしれない」
「心配性ですね~先輩は!俺みたいに普通の人には見えないんだからそこまで神経過敏になる必要はないですよ」
「お前なぁ・・・」
相手にしていてもしょうがないと思って、一道は無視して玄関を出た。が、港は黙って着いて来た。走って撒こうと思ったが港は小屋の場所を知っている。小屋に行くかは知らないだろうが、小屋に来る可能性は捨てきれないので、一道は振り返った。
「生憎だったな。これから誕生日会を開くんだ。プレゼントがない奴は来てはいけないんだ」
「誰のです?」
「お前が知らない人だ。20代の女性」
それを聞くやサッと近くにあったバッグの店に入っていった。
「買って来ました。これでOKでしょ?」
その行動力に呆然としている一道。包みに入れられているので何を買ったのかは分からない。だが、バッグの店であったから何かしらバッグなのだろう。
「いくらしたんだ?」
「それは言えませんよ。でも、そんな大した事はないですよ」
見知らぬ犬の手術費で10万をパッと出せるぐらいの男である。それがいくらの代物なのかは分からなかった。だが、一道からすれば目玉が飛び出るぐらいの価格だろうと思った。だが、本人にとってはそれほど痛いと思える金額でもないのだろう。
「じゃ、行きましょうか?」
自分で嘘が下手だと思った。誕生日などはなく、もっと集まる条件が厳しい事にすればよかったと思った。お店に人数分、予約しているから今からでは入れないなどだ。既にプレゼントを買わせてしまっている以上、更に、嘘を重ねて、来させないようにするというのでは一道の良心が痛くなる。ここは着いて来させるしかないだろう。そのまま歩いていき、小屋に到着した。
「おう!いちどー!予想通り早いな!手伝え!」
集合時間よりも45分も早く来たと言うのに、元気が小屋にいて、何やら小屋の中を飾り付けしていた。
「信弘?あれ?お前呼んでないよな?なのに、どうして花なんか持ってきているんだ?」
「着いてきたんですよ。来るなとは言ったんですけどね・・・」
「ここまで来たのに返すわけにはいかないだろ。花なんて買ってやる気満々だしな。それにお前なら場が盛り上がるだろう」
「お!さすが元気さん!話が分かる!」
「今回のパーティは剣を使う者が集まるからこそ意味があるんじゃないですか?部外者が入って・・・」
「それじゃ、小屋の飾り付けをしてくれ」
一道の話を無視して、二人は楽しそうに話していた。だが、すぐに港から素っ頓狂な声が出た。
「えぇ?」
「何もせず飛び入り参加するつもりだったのか?甘いぜ兄ちゃん。甘い甘い。人生舐めすぎ。いちどー。お前も掃除手伝え!」
元気は床を掃くと砂埃かなり長い間放置されていたようで、砂埃がかなり舞う。一道は元気が集めた砂埃を集めて外に捨てる。港は元気に飾り付けをしろと言われた袋を開くと動きを止めた。
「プラスチックの星や玉に、雪に似せた綿?これってクリスマスの時に使う奴なんじゃないですか?」
「お!鋭い!飾れる物と言ったらそんな物しかなかったからな」
「だったら、季節的に近い七夕の方がいいんじゃないですかねぇ?」
今週中に七夕があるのだ。施設の子供達は笹に願い事を書いた短冊を吊るしているのを思い出していた。
「それもそうだな・・・ま、細かい事は気にするな!」
「こんにちは!小屋に飾りをつけているんですか?しかも、クリスマス風に」
次に剛がやって来た。港が来た理由を説明し、彼もまた手伝わされる羽目になった。
「剛は、テーブルを作ってくれ」
「テーブルって?どこにあるんです?」
「そこにあるだろ?キャンプ用のが・・・それを組み立ててくれ」
元気に言われたところをみると、確かに折りたたみ式のテーブルがあった。
「でも、僕、組み立て方知らないんですけど・・・」
「んな事、一々聞いてくるなよ!そんなに複雑じゃねぇんだからそれぐらい自分で考えて何とかしろ!男ならアウトドアの一つも満足に出来ないとヘタレ扱いされるんだぞ」
剛はあれこれ試しながらテーブルを作るとそこに安っぽいシートをかけてテーブルの完成である。
「椅子が足りないんですけど・・・」
「んなもん。そこらにあるダンボールとかに座ればいいだろ?無ければ頭を使って代用出来るものを探す!これぐらいアウトドアの常識!無人島に放り出されたら生きていけねぇぞ!」
元気がいくつか折り畳みの椅子がある。しかし、全員分はない。だが、ここは物置なので様々なガラクタが置かれている。ガラクタというよりゴミであるが、色々な物が置かれている。中身が分からないダンボールやら雑誌類、引き出し、テレビぐらいの大きさの木箱など、様々だ。皆、埃まみれなので椅子にするにしても埃を払う必要がある。それらの作業をしていると和子がやって来た。大きな箱を持っていた。
「あれ?港君、来るって言ってたっけ?」
「勝手に着いてきたんだよ」
「ええぇ~!ケーキ8等分なら出来るけど9等分なんて出来るかな?」
「一人、40°分って事になるな」
元気は即座に計算する。
「どうやってその40°を計るんですか?分度器なんて持ってないですよ。私」
単純に考えれば360÷9で40と言う事になるが、8人分であれば4等分を2回すれいいが、9人ではそうも行かないだろう。
「気にしないでくださいよ。俺は、飛び入り参加ですから・・・」
その割に花束なんて物を持ってきていた。
「元々8人来る予定だったんですよね?今、来てないのは俺含めないと4人じゃないですか?その女性と子供の2名の他に誰が来るんですか?」
「後、お前も知っている慶と無愛想であるけど石井 亮って奴の2人が来る予定だ」
「亮さんも呼んだんですか?また緊急事態って事で?」
そう言った和子だけではなく一道や剛も意外そうな顔をしていた。呼ぶ事に意外というよりは良く亮が来る気になったという事に驚いていた。
「当初の予定で魂の剣を扱えるのは全員だったからな。アイツだけ省くわけにはいかないだろ?」
「それだけの理由ですか?」
「それだけって?また緊急事態なんて言ったってアイツは俺の言う事は信じちゃくれねぇよ。俺とあいつの間に何かあるとでも言うのか?俺は別に、そこまでアイツを嫌っちゃいない。寂しいように思えたからな?親しいホームレスやポチッ鉄のおっさんが死んでさ・・・心を閉ざしているんだよ。だから、前、うちに呼んだんだし、少しでもこういう事に参加させて世間を知らせた方がいいんじゃないかって思ったわけだよ」
「へぇ~。流石元気さん。優しいんですね」
皆、感心している様子であった。
「分かってる。分かってるって~。今頃、当たり前の事を言うなって・・・」
元気の満更でもない顔にそれ以上、煽てる者もいない。
「石井 亮って方。身近な人が亡くなって自棄を起こしているんですか?」
港が亮について聞いてみた。
「そういう訳でもないんだけどな。そうだ。お前、知っているか分からないけど、アイツの両親、ゲームクリエイターやっているんだぜ」
「そうなんですか・・・え?ゲームクリエイター?石井?石井夫妻!?あ、あの4Sのですか?」
Shooting Star Story Sries(シューティング スター ストーリー シリーズ)の略で4Sと言う人もいれば3Sシリーズとソフト名を略す人もいる。
1テンポぐらい遅れてその事を理解し、一気に興奮し始めた港であった。
「そうだよ」
「マジですか?そんな事なら早く教えてくださいよ!俺、めちゃ好きなんですよ!」
「そうだよなぁ?良いよな!あれ!!でも、本人にそれを言わない方がいいぞ」
「へ?」
少し亮の事情を言っておいた。だが港はイマイチ、ピンと来てない様子であった。
「だからって親が名作ゲームを作っているなんて物凄く名誉な事じゃないですか?俺なら胸張っていますけどね」
「だからって亮と絡むなよ。特に3Sは禁句だ。本人は内容を知らないどころか憎んでいるぐらいだしな」
「分かっていますよ。きっと俺とその亮って人とは合わないでしょうからね。折角の送別会で揉め事なんて起こしたくは無いですからね」
これだけ個性豊かな面々が揃うと、人間関係の1つを取っても悩みの種となる。しかも、トラウマを抱えた集団である。一癖二癖もあるに決まっているのだ。それが今まで一応、大した問題も無くやってこられたと言うのは評価すべき事柄なのかもしれない。
「来たぞ」
急に現れた長身の冷たい表情のイケメン亮。それ以上の挨拶も無くずかずかと小屋の中に入って来た。
「おいおい。こんにちはだろ?普通は・・・。お前も、参加者なんだから皿を並べるぐらい手伝え」
「・・・」
返事や頷くなどの明確な意思表示は無かったものの、言われたとおり皿を並べ始めた。全く協調性がないという訳ではないようだ。そこが少し意外であった。やはり先日、元気のうちに無理に来させた効果が出たのだろうか?
「何だ?こっちをじろじろ見るな」
亮は他の者達がこちらを見ている事に気にした。
「お前なら俺のいう事を無視するんじゃないかって思ったからな」
「手伝わなくていいのなら何もしないぞ」
「そう言うなよ。ったく・・・ちょっとしたことで噛み付く奴だな。軽い冗談なんだから笑うぐらいの余裕は見せろよな」
集合時間の直前でようやく慶が現れた。
「す、すいません!バイトでちょっと遅くなりまして!」
「出来るだけ集合時間前に来いって言っただろうが?まぁ、でもお前以外の全員が頑張ったおかげで準備は済んだからいいや。後は主役を待つだけだ」
あからさまな嫌味を垂れるので慶はもう一度謝った。
「あれぇ?この物置、もっと広々としていたと思うんだけど・・・」
確かに、和子が言うとおり、この小屋に現在7人の人間が集まっている。今まで1度としてなかった事だ。しかもこれ以上2人も入ってくるのだから更に狭く感じる事になるだろう。
「賑やかな事はいいことだ。狭くて結構」
元気は指を差しながら色々と確認していた。それから雑談などをしながら二人を待つ。集合時間から10分後に、二人が来る予定になっているのだが、後、1分ぐらいだというのに、まだ来なかった。
「来ないなんて事はないっすよね?」
「主役が来ないなんて事になったら俺達、ここに集まった意味がないな。ハハハ」
慶の心配に軽く答える元気。しかし、プレゼントを買っている人もいるのだからそれは大いに困る話だ。
「冗談じゃないっすよ!折角、全員が集合するって言うのに来ないなんてなったら・・・」
「そうはならないだろ。それにしてもどうしたんだ慶?悠希の事が気になるのか?ふ~ん。もしかしてお前のタイプってあ~いうのだったのか?意外だな」
「違うっすよ!みんな忙しい中来ているのに、それで来ないなんてここまで頑張って来た甲斐がないからっすよ!俺が呼んできましょうか?」
「元気さん。彼女は来るとちゃんと約束したんですか?」
逸る慶が動こうとする前に一道の冷静な質問である。元気の事だからいい加減にしているのではないかと疑った訳だ。元気からすればかなり舐められた話であるが・・・
「来いよ!絶対、来いよとは言っておいたぞ」
「え!?」
ここまで来て、本人の答えを聞かず、ただ言っておいただけという事実が発覚して困惑する一同。
「元気さんの事だからやっぱりそんな事ではないかと思ったんすよ。これで本当に来なかったら一体!」
慶が小屋から飛び出そうとしているところで小屋のドアが開き、そこには悠希が立っていた。


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