洋楽な日々

洋楽を中心とした音楽の紹介。海外サッカー、格闘技等の雑文も。

ジム・ビアンコ

2005-05-16 | CD
Handsome Devils / Jim Bianco

 しゃがれた声で、フォーク、ジャズ、カントリー、ワルツなどを演っている、ルーツ音楽ベースのアメリカのSSW。3枚目のアルバムらしいが、前作はビッグバンドをバックにしたライブアルバムだったようで、オリジナルとしては2枚目となる。とにかく、このヴォーカルが地味に変幻自在というか、楽曲によって微妙に違う顔をみせる。トム・ウェイツ、ジョン・ウェズレー・ハーディング、コステロ、ジョー・ヘンリー。そんな豪華絢爛たる面々にそっくりに聞こえる瞬間があるのだ。まさにゴージャスな七色の変化球である。
 ジャケットはこんなんだが、中身はしっかりと腰を据えた堂々たるもの。まだ20代らしいが、かなり渋い奴だ。

マンU最終戦

2005-05-16 | サッカー
 英国プレミアリーグも寂しいことに最終節を終えてしまった。冴えないシーズンの末、3位確定しているマンUは激烈な降格争いのまっただ中にいるサウサンプトンとの最終戦。勝ち点差2の中に4チームがひしめき、そのうち3チームが降格するという厳しすぎる状況で最終戦を迎えたサウサンプトン。祈るような表情のサポーターや監督の映像を見ていると、この試合ばかりはマンUに負けて欲しい気分になったのだが、そんな意識で見ると、いつもは頼りないと思っていたマンUがやたらと強く映るから不思議だ。
 試合は、いつも凡ミスばかりのGKキャロルが余計なファインセーブを決め、怪我で冴えないシーズンを送り、肝心な試合で不発だったファン・ニステルローイが決勝点をあげてマンUの逆転勝ち。違う試合で頑張れよって突っ込みたくなる結末だ。それにしても、試合後ピッチに座り込む選手たちや、茫然自失ながら暖かい拍手を送ったサポーターたちを見ると、なんかハートウォーミングな残酷物語を見せられてるみたいで、妙な満足感に満たされてしまった。

 来季のマンUはアメリカの資産家がオーナーになるということで、現地では強烈な反対運動が起こっている。確かに、フットボール発祥の地における、その象徴的なクラブチームが外国人資産家に買収されることには拒絶反応が起こるのは当然だし、自己資金が25%というのも、いかにもマネーゲームくさい。まあ、日本にいても、なんとなく嫌な感じなので、生粋のサポーターからしてみれば、とうてい我慢できないことなのだろうとは思う。
 どうなるのかは分からないが、今のオールドトラフォードの雰囲気だけは絶対に壊して欲しくないと、それだけは切に願いたいものである。

ターミナル

2005-05-13 | 映画
 一つ間違えるととんでもない駄作になりかねない素材を絶妙に調理し、淀みなく楽しませる手腕はさすがにスピルバーグ&トム・ハンクス。肩肘張らずにのんびりと最後まで気分良く見続けられるって意味では、エンターテイメントのお手本のような映画である。派手なシーンもCGもないのだが、この映画は間違いなくファンタジー映画。映像や音楽から、空港全体に魔法が掛かっているような空気感がそこはかとなく漂っている。なので、都合の良い展開や、あり得なさそうな行動も全てが是。大きな感情の起伏こそ起こらないが、ファンタジーゆえにちょっとクサめな部分が逆にフックの効いた小技になっており、穏やかにして飽きさせない良質な作品となっている。キャサリン・ゼタ・ジョーンズも良い。
 
 
 

ブルース・スプリングスティーン

2005-05-12 | CD
Devils & Dust / Bruce Springsteen

 E・ストリートバンドとの競演ということもあり賞賛を浴びた前作「Rising」にしても、かつての傑作群「Born To Run」や「The River」あたりとは比べものにならなかったし、彼のアコースティック系アルバム自体があまり好きではないということもあって、それほど期待せずに買った新作「Devils & Dust」。いい意味で予想を裏切られたら良かったのだが、残念ながら予想通りの仕上がりとなっている。
 それにしても、このアルバムが全米、全英ともに初登場1位だという。クォリティの問題云々ではなくて、これにはかなりの違和感がある。ある種のアイコンと化した感のあるブルースに対する奉り方が何となく嫌な感じだ。
 しかしながら、ブルースが新作を出し、それを買う。この行為自体に喜びを感じるわけで、そういった意味では自分も間違った奉り方をしているような気がするのだが、まあ、自分のことは棚に上げておきたいところである。祈・来日。
 
 

ムーンライダース

2005-05-11 | CD
P.w Babies Paperback / Moon Riders

 前作がちょっと好きではなかったので、この新作に対しても期待半分&不安半分って思いだったのだが、聴いてみると満足度半分&不満足度半分って感じである。使用前、使用後ともにハーフ&ハーフという、なんとも中途半端な思いが交錯するムーンライダースの新譜。
 元々あんまり上手ではない慶一のヴォーカルだが、今回は特に上手く歌おうって気がないような歌いっぷりで、このへんはなんとも良い感じである。それにしても、ライダーズって歌が下手な人間が揃っていて微笑ましいよなぁ。
 楽曲も良い曲が多いのだが、テンポというか間が全体的にユルくて、そのへんでやや物足りなさを感じてしまう。M③④みたいな弾けた曲もあるのだが、なんとなく老境に入った感がなきにしもあらずだ。まあ、これはこれで良いんだが、個人的にはライダースに期待しているものとはちょっとズレがある。
 そんなことは言いつつも名古屋公演のチケットも購入。よくよく考えるとライダースの新譜って、初めはいつも期待はずれって感じていたような気もするので、もう少し聴き込んでみよう。

生への帰還

2005-05-10 | 
 ジョージ・P・ペレケーノス「生への帰還」読了。ワシントンサーガ4部作の4作目。ピート・カラスの少年時代に始まって、その息子ディミトリ・カラスが50歳になるあたりまでの連作大河ドラマの完結編である。30後半になってもドラッグから抜け出せなかったディミトリがようやく立ち直ったかと思ったら、今度は最愛の5歳の息子が強盗事件に巻き込まれて命を落としてしまう。おまけにそれが原因で離婚。精神的にドツボに陥ったディミトリだが、旧友の紹介で厨房で働き始めて、徐々に活力を取り戻していく。
 「これ誰?」
 「ビージーズよ」
 「なんだか、このヴォーカル、誰かにタマをにぎられてるみたいな歌い方だな」
 この部分はかなり笑えたのだが、まあ、こんな具合に元気になっていくディミトリ。そんな時、息子を殺した男が再び町に舞い戻ってくることを知り、さらには自分の父がかつてギャングを皆殺しにして恩人を守ったという話を聞かされて、自らも復讐を決意する。なんか、続けて読むと4作とも同じようなパターンなのだが、面白いのだからアリである。それにこの4部作の一貫したテーマは、男としてなすべきことであり、それは良い家庭を作ることであったり、真面目に生きることであったり、店を守るために働くことであったりと、つまりは地に足をつけて生きろということである。そんな生き方をする脇役たちと、そんな生き方が出来ずに過ごしながらも、命を賭した戦いに赴くことで人生の落とし前を付けようとする主人公たち。
 そんな、男の琴線ど真ん中を衝くこのワシントンサーガ4部作。おまけに最後の一行がまた素晴らしく、感動の余韻がジワジワジワッと心に沁みて、深い満足感にどっぷり浸れる至福の読後感が味わえるのである。
 

ダミアン・ライス

2005-05-09 | CD
O/ Damien Rice

 3年ほど前にリリースされていた作品なのだが、「クローサー」という映画に楽曲が使われている関係で、映画の封切りに合わせて再発されたようである。これが非常に良い。結構地味目な作品なのだが、なんとアイルランドの雑誌が発表した偉大なるアイリッシュ・アルバム・トップ100という企画ではU2の「ヨシュア・トゥリー」に次いで2位になったという。
 エリオット・スミス、ジェフ・ハンソン、ソンドレ・ラルケ、はたまたレイ・ラモンターニュをも想起させる、たおやかにして美しいメロディと悲しげなストリングス。叙情的ではあるけれど、いわゆる叙情派といわれるカテゴリーとは確実に一線を画した個性を有しているSSWだ。ドラマチックではありながら、大げさでもなく、自己憐憫が鼻につくわけでもなく、本当に極々自然な感情の起伏が表現されているという、そんな味わい深い逸品。

サッカー雑感

2005-05-09 | サッカー
 恐らく勝った方が優勝するであろう、注目のミランvsユベントスの直接対決。まあ、ディフェンシブで面白味に欠ける試合になるだろうとは思いつつも激戦を期待したのだが、ミランの出来が悪く、完全にユベントスペースの展開となる。先日のPSV戦も悪かったが、この大事な局面にきてミランは絶不調に陥ったみたいである。さすがにルイ・コスタ投入からの攻勢は迫力があり、あわやのシーンも作ったが、コンディションの差が如実に出た感じの完敗。2ヶ月ほど前は、ミランの方がユベントスの3倍くらい強そうだと思ったものだが、現状のミランは見る影もない。本当ならスクデットを捨ててコンディションを整え、チャンピオンズリーグ一本に絞るべきだろうが、勝ち点差が3なのでそういうわけにもいかない。こんなに良いチームなのに無冠に終わりそうだ。

 スペインリーグもレアルが頑張りをみせたとはいえ、バルサがバレンシアを破ったことで趨勢が決した感がある。バレンシアは前半はうまくゲームを支配していたのだが、ロナウジーニョの個人技に破壊された。ロナウジーニョはミドル級に紛れ込んだヘビー級ファイターのような理不尽な選手である。凄すぎ。

 ついでにマンU。軽く2対0で勝てる内容のゲームなのに終わってみれば1対1。インテルもそうだが、取るべきところで点が取れず、少ないチャンスをものにされる。ったく、いつもパズルの最後のピースが埋まらないようなゲームばかりだ。今思うとロナウジーニョをバルサにさらわれてのが痛いよなぁ。。。

雀鬼流無敵の勝負論

2005-05-07 | 
 20年間無敗の雀鬼・桜井章一。麻雀をする人ならば、ほとんどがその名を知っている伝説の男である。彼は相手の手の内が分かってしまうらしく、迷っている相手に(!)切る牌を教えてあげたりするのだそうだ。そんなアンビリーバブルな境地に到達した彼の著書。別に自己啓発本とかビジネス本とかではなくて、彼自身が感じたことを綴っていると、そんな本である。
 たいていはこの手の本は読まないのだが、浅草キッドの対談番組のゲストで桜井章一が出演し、“流れ”について語っていたので、非常に興味を持った。自分自身、流れというものをかなり重視していて、仕事でも流れが悪くなりそうだというだけの理由で人と会わなかったり、手を付けなかったりする。これが、どうしても理解できない人が結構いるのだが、桜井章一が「流れが存在しないと思う方がおかしい」と言ってくれれば心情的に鬼に金棒である。まあ、彼の感じている流れのレベルとは比較にならないとは思うが。。
 流れについて言えば、さらに面白いことが書いてある。それは負けるということ。敢えて負けたり、きれいに負けることによって流れを作りだすということである。恐るべし桜井章一。普通は負けると流れが悪くなると思いがちだが、負け方によってそれを覆すという発想。発想というよりも、彼には分かってるんだろうな、多分。
 麻雀の打ち方にしても「やわらかく牌を持つ」「最短距離でつもる」など、昔なら無意味に思えたであろう言葉が結構ピンときたりするし、自分がいかにダメな麻雀をしていたかもつくづくと思い知らされる。
 何かを学ぼうとかどうとか、そんな邪心を持たなくても単純に読み物としても面白い本。
 

イールズ

2005-05-06 | CD
Blinking Lights and Other Revelations / Eels

 2枚組で全33曲という大作。歌詞を読むのに疲れたぁ~~なイールズの新作は、素晴らしい傑作である。とにかく歌詞の内容が非常にパーソナルなもので、くぐり抜けてきた30数年間の人生の中で負ってきた、深い傷跡をなぞるような作業が繰り広げられている。特に一枚目においてそれが顕著で、絶望感が漂うダウナーな歌詞が全編を覆っている。2枚目は逆に、深淵の彼方にあるかすかな光に気づいたかのように、少しづつ小さな喜びが人生を彩り始めるような、そんな色合いとなっていく。彼にとってこの作品は2枚組というフォーマット以外には考えられなかったように思う。
 もちろん、楽曲的にも素晴らしく、ジョー・ヘンリーやトム・ウェイツを思わせたりもしながら、淡々と、それでいて心に刻まれる歌を紡いでいる。名盤。