洋楽な日々

洋楽を中心とした音楽の紹介。海外サッカー、格闘技等の雑文も。

今月読んだ小説

2007-01-30 | 

新・餓狼伝 / 夢枕獏 

13巻まで刊行されていた餓狼伝の新作がなぜか新・餓狼伝として刊行されていた。この餓狼伝、格闘小説の傑作なのだが、内容を忘れた頃にポツリポツリと刊行されるため、なにやってんだか覚えてねぇぞという物語なのである。
で、どうでもよくなったタイミングで「新・餓狼伝一」としたのは、なかなかウマイ作戦というか、まんまと引っかかってしまったわけである。
もともと餓狼伝っていうのは、新日本プロレスの道場論をベースにした異種格闘技戦の物語である。
新日本プロレスの道場論とは、リングではワークをしているけれど道場ではリアルファイトの研鑽を積んでおり、レスラーは本当は最強なのである、というもの。
そもそもグレーシー出初めまではナンデモアリなら身体がでかいヤツが勝つ→レスラーよりでかいヤツは力士のみ→力士は倒れたら何も出来ない→レスラー最強。
こんな図式が割りと普通に成立していた上に、前田、佐山、高田、藤原らの存在が、そのへんに妙な説得力を与えていた。
しかしながら、現状のプロレス界の醜態とリアルファイトの技術の先鋭化をみるにつけ、この小説のベースが実に説得力のないモノになってしまっており、このへんは作者的にはあまりにもイタイと思われ、書く意欲もそがれようというもの。
読む意欲も削がれそうになるが、そこはさすがにプロレス者・夢枕獏。
試合中のバツグンの心理描写で一気に読ませる。

荒ぶる血 / ジェイムズカルロス・ブレイク 

去年の「このミス」上位にランクされていた「荒ぶる血」。
ブルージーなスイドギターが聞こえてきそうな、メキシコ国境付近のアウトロー小説。
そして、主人公ジミー・ヤングブラッドの物語である。
誘拐された恋人を救いに行くことや、ライバル組織のボスをヒットすることなどはメインストーリーでありながら、あくまで主人公を描くための道具立てでしかない。
ストーリーに厚みを持たせるための人物造形ではなく、人物を描くためにストーリーがあるといった感じ。
人物が縦軸でストーリーが横軸。
もちろんスリリングに展開していくストーリーも悪くなく、つまりは、相当にハイレベルな面白さなのである。
往年の船戸与一的というか、血と紫煙が臭い立つハードボイルド。

キングの死
/ ジョン・ハート 

新人とは思えない筆致である。
一人称での語り口はかつてのロバート・ゴダードやトマス・H・クックを彷彿とさせる重厚感があり、何か重いものがのしかかっているような雰囲気は非常に読み応えがある。
主人公の行動及び思考に感情移入出来かねる部分も多く、そのへんはイタイところだが、二転三転するストーリーの妙に引き込まれ、思わぬハイペースで完読。
600ページの長編かつこの文体にして、このペースで読みきれるとは!という感じである。
父親殺しのフーダニットであり、父の死をクリアすることによって忌まわしい過去の出来事にも決着をつけて、自分自身を初めて解放するという、冴えない中年男のビルディングストーリーとしても秀逸。
なかでも過去の出来事が、いかに真実とは真逆な方向に一人歩きしていたかというトコロが実にアイロニカルで、絶妙な味わいなのである。

その他

市民ヴィンス / ジェス・ウォルター 
青い虚空 / ジェフリー・ディーバー 
月の扉 / 石持浅海 


デヴィックス

2007-01-29 | CD

If You Forget Me / Devics

先週の水曜日から腰痛で結構大変な状態が続いている。
木、土、日(金は根性で出社)と腰以外は元気なのにゴロゴロしていなくてはならず、
おかげで今朝はスーツがきつくなり、ウェストが一回り大きい古いスーツを引っ張り出すという屈辱的な事態が起こってしまったのだ。
そんなゴロゴロ週末、バツグンに面白かったのがラグビーのマイクロソフトカップ。
今年はワールドカップだというのに盛り下がる一方のラグビー界だが、ここんとこ白熱の好ゲームを連発。
昨日のサントリーvsヤマハも1点差でロスタイム突入という実にスリリングな激戦だった。
こんなに面白いのにこの不人気ぶりは、いかにももったいないと思うのである。
ヴィジュアル的にはヤマハ・伊藤雄大が試合に出ていないのが残念だったが。。。

そんなわけで1998年リリースのデヴィックスのデビューアルバム。
最新作はまだ聴いておらず、彼らの作品は一つ前の「The Stars At Saint Andrea」しか聴いていないのだが、比較すると相当に違う。
「The Stars At Saint Andrea」はシンプルで芯が強く、一方コチラはけだるく妖しい、哀愁ムード歌謡といったトコロか。
アンニュイでトロ~ンとした雰囲気とドラマチックな構成は、あたかもヨーロッパ映画のようでかなり琴線。
ま、ヨーロッパ映画にもイロイロあるのだが、謎めいた美女、思索する男、夜の街、とかそんな雰囲気(ベタ!)。
で、どことなく安っぽい場末感も漂わせつつで、そんなところもまた良い感じ。
このジャケットのイメージにかなり近い。
空を暗くしたら完璧 か。


Olivier Savaresse

2007-01-23 | CD

Au milieu de nulle part / Olivier Savaresse

先週の木曜日から日曜日までアジアの某所へ行ってきた。
それもあってちょっと散財過剰気味である。

行く前に飛行機用に?I-pod nano を買い、現地では感覚以上に浪費していたことに気づき、帰ってきたら、頼んであったWiiが無事入手との連絡が。
ついでに飲茶太り解消のため、ウォーキングシューズなどもほぼ衝動で買ってしまった。

今回は基本的には観光コースだったのだが、隙をみては現地の知人にいろいろ案内してもらい、観光コースにはない庶民的な店で現地の空気感に触れながら、うまいものをたらふく堪能。
特に、40年くらい続いている人気店という小汚い店で食べたワンタン!!!
噛んだ瞬間に口の中に旨みがジューシーに広がり、微妙にして独特な味わいなのである。
美味かった~~。

おまけに欲しかったDVD「三国志」(全28巻)のボックスセットを露店で激安入手出来(怪しい)、勢いでインテル、マンUのまがいものワッペン等も購入と、なかなかに良かったのである。

さて、このOlivier Savaresse。
何者だかサッパリ分からないので調べようとしたものの、ザっと見たところフランス語以外の資料も見当たらず。
学生時代にフランス語を習ったはずなのだが、もちろんそんなモンはまるで役に立つワケもない。
なので経歴不詳の謎のフランス人ということになってしまうのだが。。。

フランス語のボソボソしたささやき系ボーカルは控えめに、エレクトリックな哀愁メロが前面に押し出され。
そこに時折絡むフラメンコ風ギターや、儚げな女性ヴォーカルも良い隠し味となっている。
楽曲も粒ぞろいで、なかなかに良いのである。


My Space


飛竜伝 宋の太祖・趙匡胤

2007-01-16 | 

小前亮という人の飛竜伝を読む。
飛竜伝といっても、ドラゴン藤波辰巳の伝記ではない
宋の太祖・趙匡胤を描いた小説である。

ちなみに藤波の本といえば確か「君よ苦しめ、そして生きよ」・・・これは猪木の本か。
なんだっけ?
調べてみると(調べるか?)「ライバルを作れ、そして勝て」であった。
当時の藤波のライバルといえばイナズマ木村健吾や、駅で老婆から財布を盗み一般人に取り押さえられたプロレスバカ剛竜馬といったところか。
いずれにしても大したことのないライバル達である。

藤波の著書には他にも
俺が天下をとる
「ドラゴン炎のカムバック」
「無我」
「藤波辰巳のボディトレーニング」
など、そそられるタイトルが多数あり、実に興味深い。

ハナシはそれたが、飛竜伝である。
この主人公趙匡胤の弟趙匡義に「楊家将」の楊家軍が仕えるわけで、そんなつながりの興味のみで読んでみた。
あまり期待はしていなかったが、悪い意味で昔の少年マンガ的というか、心理描写やセリフがどうにも浅いという印象。
なので人物造型にまったく深みがない。
特に北方中国歴史モノの後だけに、なんとも締まらない読後感なのであった。

まさに、ドラゴンロケット→足の引っ張り合い→両者リングアウトって感じか。
さすが飛竜伝。


ケリー・ジョー・フェルプス

2007-01-15 | CD

Tunesmith Retrofit / Kelly Joe Phelps

どういう経由で辿り着いたかは定かではないのだが、いつの間にやらゲットしていたアルバム。
この人、元々はスライドギター得意のブルースマンで、コレは7作目の作品となる。
この最新作では従来と比べてSSW寄りになっているとのことだが、フォーク、カントリー、ミラネーズ・・・じゃなくてブルース!の3角形の中心に位置するような音楽という印象である。
・・・どうも名古屋人のサガとして、カントリーとくれば反射的にミラネーズっ!となる。
付け加えるならば、カントリーとミラネーズを足したミラカンなるものもあるのだ。

ついついハナシがあんかけスパゲッティにそれてしまったが、いやいや、このケリー・ジョー・フェルプス。
ラッキーな拾い物である。

哀愁溢れるメロディ。
抑えた味わいの優しきスモーキーヴォーカル。
ブルージーに奏でられるアコースティックギターのピッキング。
レイ・ラモンターニュをさらに地味にして、キュッと締めた感じというか・・・。

なんとも渋いのだが、それでいて渋すぎず。

サイト


カリビアン

2007-01-10 | CD

Plastic Explosives / The Caribbean

こ、これは、凄くいいではないか!
ワシントンDCで1999年に結成された、ザ・カリビアンの3rd。
全18曲ながらトータル40分強。
捨て曲なし。

もう、1曲目の出だしからして、やる気がなさそうで微笑ましいのである。
脱力系かつ調子っぱずれ。
そして、不協和音をまじえつつのサイケデリックなオカズもたっぷり。
それでいて案外にワビサビがしっかりしているインディ系グッドメロディが次から次へと繰り出されるのだから、これは実に琴線攻撃。

実験的ながら、それを感じさせないまろやかさ。
そのポップ感はちょっとネオアコ的でもあり。
早くも今年のベスト盤候補かと思いきや、リリース去年かい。

非常に良い!


血涙

2007-01-09 | 

北方謙三の「血涙」(上下)。
副題「新楊家将」とくれば読まぬわけにはいかないのである。
もちろん、既読の「楊家将」(上下)をあらためて読み返しつつの4冊ブッコ抜き

当然面白い。
「楊家将」がアーいう結末で、「血涙」の設定がコーいうふうなら、そらぁつまらないわけがない。

散々理不尽な目にあいながらも、愚直なまでに国家に忠誠を尽くし続けた楊家軍が、最後は外交のカードのひとつとして扱われ、国家に見捨てられ、なぶり殺しに近い状態で戦わされる
外様軍閥の哀切というか、北方中国歴史モノの根底である「滅びの物語」をたっぷりと堪能でき、「ツワモノどもが夢の跡」的なラストは、あらゆる悲劇を包み込むほどに爽やかな印象を残す。
「楊家将」に劣らない傑作である。

が。
しかし。
ちょっとばかし引っかかりを感じたのも事実である。

まず、「楊家将」は楊家が主役なのだが、「血涙」は敵側に焦点があたっているので、感情移入という点で結構なブレが生じてしまった。
これがわりとイタイ。

もうひとつは石幻果というアイデア。

楊家軍とは、楊業とその息子たちがそれぞれに部隊を指揮している宋の軍閥である。
「楊家将」では隣国・遼との戦いで悲劇的な結末を迎えた楊家軍だったが、この「血涙」では楊家の一人が戦闘中に記憶を失い、遼の将軍に拾われて遼内で重要なポジションに就いていくという設定がなされている。
この記憶喪失時に遼で付けられた名が石幻果である。
そして彼の記憶が戻った時に、妻子を捨てて宋に戻るか、遼にとどまり宋と戦い続けて兄弟で殺し合いをするのかという究極的な選択を迫られることになる。

そりゃ、面白くないわけがないし、事実このアイデアゆえにバツグンに面白い物語になっているのだが、それでも、剛速球ど真ん中の「楊家将」なのに、そのタマを投げるか?との思いが頭をよぎったりするわけである。

ま、面白すぎるがゆえの贅沢な注文といったトコロなのだが。。。