なつぞら 009

なにかを失うこと、悲しみを知ること。幼い子には、それは早すぎる経験なのです。
　隠された過去を知ることで、失ったものを取り戻せるかもしれない。


　あるいは、失ったことの意味を知ることが出来るかも。
　

　世界がひとつの機械なら、
　その部品には余計なモノはない。
　部品があるのは、意味があるんだ―――



　と言ったのは、『ヒューゴの不思議な発明』の主人公、ヒューゴです。

　しかしなつには、そこまでの洞察力はない。
　あきらめることで逃げだし、一人で生きると決めたのでした。
　そんな彼女を、親としてやっていけるかどうか、不安に思う柴田家のおかあさん。
　なつへの柴田家の熱い愛情がうかがえます。

経済的にも、家庭的にも恵まれた自分たちと、まったくなにもない故に虚無的にさえなってしまっているなつのことを比較し、また、深く考えて、反省したりもする柴田家のおかあさんの優しさが、心を温めます。

　ついに川辺で柴田家となつが巡り会ったとき、なつは嗚咽を漏らし、泣きじゃくりながら叫びます。

「どうして、
　わたしには家族がないの？
　どうして？」


　戦争を憎む父の手紙を手に、絶叫するなつ。
　まっすぐにおじいちゃんの胸に飛び込んで行くのです。
　失われたことへの意味と夢は、どこにあるのでしょう。