あすにゃん日記

500字程度のエッセイを書きます。

精霊の守り人 004の2 推理力には○○が必要

2019-06-02 12:47:50 | 守り人シリーズ
 狩人たちは、推理をしつつ、「用心棒が雇いたい」という名目でバルサの評判を聞き取り調査しています。このあたりも、どこか警察小説か刑事コロンボかというノリです。一般小説にはアリガチなのでしょうか。

 わたしは児童書しか読んだことがないので(しかもファンタジーはトールキンとかミヒャエル・エンデみたいなバリバリの非現実系です)、こういう足で稼ぐ地道な調査というのは珍しく思いました。

 そんなこんなで、狩人たちの一人が、バルサの頼ったなんでも屋のトーヤのことを聞きつけます。この話の持って行き方もうまい。直接バルサの話をするのではなく、青霧山脈に行く準備をしたならこういうことがあるだろう、という推理から何気ない口調でインタビューするんです。

 驚きました。推理力だけでなく、調査力も追跡力には必要なんです。わたしは警察でも探偵でもないし、推理小説はあまり読んだことはありませんので、そういう手段を狩人たちが自然な態度でやっているというところが目新しかった。
 
 この着実な足取りを読むだけでも、バルサの相手にしている帝の勢力がただ者じゃないと知れます。

 しっかりバルサの足取りをつかみ、追跡をはじめる狩人たち。バルサはだいじょうぶでしょうか。青霧山脈には、バルサの頼りにする人物がいるでしょうか。

精霊の守り人 004の1 狩人たちと推理力

2019-05-26 12:30:00 | 守り人シリーズ
 ここで、追っ手の狩人たちが出てきます。一番(モン)と呼ばれる頭は、手下といっしょに皇子を追いかけます。聖導師は皇子は生かせ、バルサは殺せと命じるんですね。

 皇子の命の危機にさらしたのも、水妖が取り憑いているかどうかを確認するためだった、といいます。聖導師にしてみれば、バルサなんてどうでもよく皇子ひとりが大切な人なのでした。このあたり、バルサがトーヤなどの命を助けてあげたりした優しさとは対照的です。

 そこで狩人たちは、自分がバルサだったらどう行動するだろうと想像しています。
 この想像力が論理的で的確で、さすがに帝の暗殺隊の面目躍如。ハラハラさせられてしまいます。

 手がかりを求めていろいろ推理するこのあたりのシーンは、シャーロック・ホームズも真っ青です。ファンタジーのなかにまたリアルが出てきていますよね。

『ナルニア国ものがたり』のなかの『ライオンと魔女』のシーンでも、推理をするシーンがあります。ルーシーが衣装だんすのなかに国を見た、というので、アタマがおかしくなったかと心配したピーターが、親戚のおじさんに相談を持ちかけるんですが、おじさんはルーシーは正しい、と論理的に証明してしまうのです。

 すぐれた小説には、すぐれた論理や推理が必要だということがこれでよくわかります。

精霊の守り人 003の4 バルサのキャラクター設定

2019-05-19 12:30:00 | 守り人シリーズ
ここでトーヤが皇子に、自分がバルサに命を救われたという話を始めます。
 バルサは、自分が用心棒として腕が立つことを宣伝したかったから、お礼は要らなかったんだと言うんですが、それなら薬までくれるはずがないって言うのです。

 バルサが、照れて顔を赤らめる表情が目に浮かぶようです。

 テレビドラマで見たときは、バルサが綾瀬はるかだったこと以外は、さほど興味はありませんでした(同郷のよしみで実写版をみたのです)。ドラマでは、どうしても少し軽くなりがちなのですが、雰囲気は想像していたよりずっと重厚で、大河ファンタジーと銘打つだけのことはありました。

(風呂のシーンはなかったけれど、皇子を救うシーンはバッチリでしたからね)。

 トーヤのシーンは『戦争直後の浮浪児』の生きざまを見るようで、胸が痛くなる気もしましたが、弁当のシーンにはタレがかかってなかった記憶があります。(うろ覚えですので堪忍ね(汗))

 命の恩人だ、とトーヤが慕うシーンがあることで、殺伐とした戦闘ばかりやってるバルサの心根が、ほんとうは優しいことがうかがえます。

 しかも意外と照れ屋なのですね(笑)

 用心棒みたいな仕事をしていると、どうしても自分以外の人間は、カネ勘定で見てしまう傾向はあるでしょうが、バルサのキャラクター設定は単調ではありません。

 二ノ妃の申し出を一旦拒否してみたり、作戦を練ってもトーヤには打ち明けなかったり、影の部分を描きながらも、そんな光があることを見せてくれるバルサ。
 ますます、魅力的な人物像だと言えるでしょう。
そんな彼女に、帝と化物の魔の手が迫ってくるのです。

精霊の守り人 003の3 化物出現

2019-05-12 11:59:00 | 守り人シリーズ
 バルサは、眠っている皇子に化物が取り憑いていることを皇子の異常から見て取り、自分たちが逃げるだけでは決して助からないことを悟ります。そこで呪術師のトロガイの助力を受けようとしますが、彼女はいまどこにいるか容として知れない。仕方なくバルサは、別な人間の助力を受けようとします。その人物に付いては、また別途お話しします。

 今回の話では、バルサが戦地をギリギリ戦ってきた死の恐怖とは違った恐怖を味わい、青ざめるというエピソードが出てきます。

 急流の川に飛び込む豪胆さを持っていながら、恐怖を感じるというところが人間的ですし、優秀な人間に特有の直感力があるのです。しかも、30代というオバサン年齢でありながら、適応力がはんぱない。報奨金をたっぷりもらったからって自力で何でもやっちゃうぞ、という冷静さを欠いた行動はしない。

 根性でなんでも片付けてしまう人間もいますが、適切なシチュエーションで適切な助力を仰ぐのは、戦略的にも間違ってない。ムリをしない、というのは戦いにおいては必須の項目でしょう。夢みがちなファンタジーより現実的で、苦みも若干混じっていて、大人のテイストですね。(とはいえファンタジーには違いないんですが(汗))

 何でも屋のきょうだいが帰ってきて、必要な物資を持ってきてくれます。バルサは巻き込むことと、要らない情報で怯えさせることを危惧して皇子の変化を打ち明けません。ひとりで抱え込むんです。

 ということは、これから会おうとする人物は、そうとうな実力者だということになります。トロガイがアテにならなくても、その人物ならなんとかなるだろうという判断。

 バルサの情報力・判断力が多岐にわたっていることが、このことでもうかがえます。ただの女用心棒ではないのです。いったい彼女の過去に、なにがあったのか。それはまた、別の機会に譲りましょう。
 

精霊の守り人:003の2 世界観への深いアプローチ グルメ編001

2019-05-05 06:00:00 | 守り人シリーズ
追われたバルサが、トーヤという便利屋を頼って下町に入りますと、トーヤは前払いされたおカネで弁当を買って、義理の妹や皇子と四人で食べることになります。

 この弁当が、

白米なんです。

 タレのついた弁当。香ばしいにおいが立ちこめそうな、おいしそうな描写。
 つくづく、和風ファンタジーです。お魚とご飯、昭和初期までの一般的な家庭料理でした。そこへまた、タレがかかってる。うまそう!

 緊張のなかに、ほっと一息つけるシーンをこうして取り混ぜることで、たっぷり異国情緒をかもしだす。しかも世界観とマッチしているので、違和感もありません。

 ごくたまにラノベで、唐突にクレープとかみたらし団子が中世西洋風異世界ファンタジーで出てくることがあります。

 日本とつながっているという設定だった記憶がありますが、わたしの感覚がおかしいのか、違和感ハンパないんです。

 中世西洋人の味覚は、クレープやみたらし団子を受け付けるのでしょうか!

 世界が違うということを、トールキンの『指輪物語』のように深くつっこんで考えているところが、上橋菜穂子のファンタジーの優れたところでしょう。

 料理は生活の基本です。

 異世界ファンタジーでも生きた人間がいる、と実感できる。ところが、話はそこで終わりません。