不安な社会の健康番組/自己責任強いる日常が背景
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神里 達博『社会技術研究開発センター研究総括補佐』(科学史・科学論)
10年にわたって人気を誇った「発掘!あるある大辞典」が、様々な不正の発覚によ
って打ち切りとなった。目下のところ、制作サイドのモラルを追及する報道が多い。
それは無論重要なことだが、ここでは少し違う観点から問題を掘り下げてみたい。
今回の「捏造された納豆ブーム」のように、特定の食物に対しての過度の期待、あ
るいは過度の忌避が生じることを、「フード・ファディズム」という。米国では既に
1950年代にこの問題が学術的な研究対象となっており、商業主義の悪影響や、代
替医療などの文化的な背景を持つもの、また宗教的信念に基づく行為などに分類され
ることが知られている。最近では、米国で大ブームとなった「アトキンス・ダイエッ
ト」などもその一種とみなされ、専門家の一部は健康への懸念を表明している。
この現象は「とりあえず日々食うには困らない」先進諸国においては、いつでも起
こりうることだろう。食物は(いまのところ)代替可能性の非常に高い商品であり、
また人々の生活習慣病などへの不安は大きく、一方で残留農薬問題や、O157・
BSE(牛海綿状脳症)等の新興感染症の出現もあり、食の「質」に対する関心は依
然として高いからだ。
(2007.01.31 朝日夕刊/文化『その2に続く』)
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神里 達博『社会技術研究開発センター研究総括補佐』(科学史・科学論)
10年にわたって人気を誇った「発掘!あるある大辞典」が、様々な不正の発覚によ
って打ち切りとなった。目下のところ、制作サイドのモラルを追及する報道が多い。
それは無論重要なことだが、ここでは少し違う観点から問題を掘り下げてみたい。
今回の「捏造された納豆ブーム」のように、特定の食物に対しての過度の期待、あ
るいは過度の忌避が生じることを、「フード・ファディズム」という。米国では既に
1950年代にこの問題が学術的な研究対象となっており、商業主義の悪影響や、代
替医療などの文化的な背景を持つもの、また宗教的信念に基づく行為などに分類され
ることが知られている。最近では、米国で大ブームとなった「アトキンス・ダイエッ
ト」などもその一種とみなされ、専門家の一部は健康への懸念を表明している。
この現象は「とりあえず日々食うには困らない」先進諸国においては、いつでも起
こりうることだろう。食物は(いまのところ)代替可能性の非常に高い商品であり、
また人々の生活習慣病などへの不安は大きく、一方で残留農薬問題や、O157・
BSE(牛海綿状脳症)等の新興感染症の出現もあり、食の「質」に対する関心は依
然として高いからだ。
(2007.01.31 朝日夕刊/文化『その2に続く』)