Debussy La Mer movement 3 Abbado
表題曲が収められたDVDは,2003年8月14日のルツェルン音楽祭初日のガラ・コンサート後半の模様を収録したもの。この『海』,演奏としては素晴らしいものだが,一箇所,「おやっ?」と思ったところがある。
ご存じの方も多いと思うが,『海』には,録音により,第3楽章「風と海の対話」において,
(1)練習番号60の直前8小節のトランペットの合いの手の有無
(2)練習番号62のコルネットの音型
(3)練習番号63のコーダのコルネットの3連音の有無
に違いが見られる。
この辺りの詳細は熊蔵さんのHP「海のXファイルへのエスキース」をお読みいただくとして,アバド盤の(1)は「合いの手有り」,(3)は「コルネットの3連音有り」である。「おやっ?」と思ったのは(2)に関わること。
ここは,コーダへの導入部にあたる極めて重要なところ。その音型の如何に関係なく,コルネットにとっては聴かせ所である。
ステージ奥のコルネット奏者は,指揮台上のアバドのほぼ真正面。しかし,アバドにはコルネット奏者にアインザッツを送る様子など一切なく,やおらチェロとコントラバスの方に向き直り,左手でステージ床面を指さしながら,「低弦,アグレッシヴに!」と言わんばかりに彼らを煽っている。ここでのアバドは,自ら弦楽器を弾くような仕草をするほどの入れ込みよう。
ここで強調されているのはあくまで低弦。本来華々しく鳴り響いているはずのコルネットはほとんど聞こえないと言っていいほど。映像も,ゴリゴリ鳴る低弦の音と合わせるように,クリスティーネ・フェルシュ嬢らコントラバスの3人を大映しにしている。
ということで,このアバド盤の(2)は,言うなら,「コルネット無し」に近い。いやはや,こういうのは初めて。興味深く聴いたが,この試み,成功しているかはまた別の話し。
なお,この『海』,チェロの数がかなり多い。もしかしたら,ドビュッシーの指示通り,16人乗っているかもしれない。ルツェルン祝祭管のメンバー表を開いてみると,チェロ奏者としてきっかり16人の名前が記載されている。
追記1 ルツェルン祝祭管のメンバー表を眺めていたところ,2nd Violinの中ほどに「Alexander Kagan」と「Maria Kagan」という名前があるのに気付いた。どうやら,お二人とも,夭折した故オレク・カガンとナターリャ・グートマンのお子さんのようだ。なお,グートマンもこのガラ・コンサートに参加しており,ゲオルク・ファウストの隣でチェロを弾いている。
追記2 私が持っているDVD(GENEON GNBC-1009)では,練習番号62のコルネットは,パッセージの最後の切れ端がほんの少し聞こえるだけ。まぁ,「聞こえない」と言ってしまっても,間違いにはならないと思う。
しかし,先日,同じ演奏を YouTube で聴き直し,驚いた。こちらでは,7分38秒以降,弱々しくはあるものの,前半2小節の「2連符・3連符・2分音符」,後半2小節の「2連符・3連符・2連符・3連符」のコルネットの音型がはっきり聞こえたからだ。YouTube は聴いているがDVDは聴いていないという方の中には,本文を読んで不可解に思われた方もいるかもしれないが,この2つ,聞こえ方がまるで違うのだ。
思い返せば,この演奏,DVD購入前に YouTube で聴いていたが,その時は件の箇所について不自然な印象をもったという記憶がない。前から不思議に思っていたことなのだが,なるほど,得心がいった。
表題曲が収められたDVDは,2003年8月14日のルツェルン音楽祭初日のガラ・コンサート後半の模様を収録したもの。この『海』,演奏としては素晴らしいものだが,一箇所,「おやっ?」と思ったところがある。
ご存じの方も多いと思うが,『海』には,録音により,第3楽章「風と海の対話」において,
(1)練習番号60の直前8小節のトランペットの合いの手の有無
(2)練習番号62のコルネットの音型
(3)練習番号63のコーダのコルネットの3連音の有無
に違いが見られる。
この辺りの詳細は熊蔵さんのHP「海のXファイルへのエスキース」をお読みいただくとして,アバド盤の(1)は「合いの手有り」,(3)は「コルネットの3連音有り」である。「おやっ?」と思ったのは(2)に関わること。
ここは,コーダへの導入部にあたる極めて重要なところ。その音型の如何に関係なく,コルネットにとっては聴かせ所である。
ステージ奥のコルネット奏者は,指揮台上のアバドのほぼ真正面。しかし,アバドにはコルネット奏者にアインザッツを送る様子など一切なく,やおらチェロとコントラバスの方に向き直り,左手でステージ床面を指さしながら,「低弦,アグレッシヴに!」と言わんばかりに彼らを煽っている。ここでのアバドは,自ら弦楽器を弾くような仕草をするほどの入れ込みよう。
ここで強調されているのはあくまで低弦。本来華々しく鳴り響いているはずのコルネットはほとんど聞こえないと言っていいほど。映像も,ゴリゴリ鳴る低弦の音と合わせるように,クリスティーネ・フェルシュ嬢らコントラバスの3人を大映しにしている。
ということで,このアバド盤の(2)は,言うなら,「コルネット無し」に近い。いやはや,こういうのは初めて。興味深く聴いたが,この試み,成功しているかはまた別の話し。
なお,この『海』,チェロの数がかなり多い。もしかしたら,ドビュッシーの指示通り,16人乗っているかもしれない。ルツェルン祝祭管のメンバー表を開いてみると,チェロ奏者としてきっかり16人の名前が記載されている。
追記1 ルツェルン祝祭管のメンバー表を眺めていたところ,2nd Violinの中ほどに「Alexander Kagan」と「Maria Kagan」という名前があるのに気付いた。どうやら,お二人とも,夭折した故オレク・カガンとナターリャ・グートマンのお子さんのようだ。なお,グートマンもこのガラ・コンサートに参加しており,ゲオルク・ファウストの隣でチェロを弾いている。
追記2 私が持っているDVD(GENEON GNBC-1009)では,練習番号62のコルネットは,パッセージの最後の切れ端がほんの少し聞こえるだけ。まぁ,「聞こえない」と言ってしまっても,間違いにはならないと思う。
しかし,先日,同じ演奏を YouTube で聴き直し,驚いた。こちらでは,7分38秒以降,弱々しくはあるものの,前半2小節の「2連符・3連符・2分音符」,後半2小節の「2連符・3連符・2連符・3連符」のコルネットの音型がはっきり聞こえたからだ。YouTube は聴いているがDVDは聴いていないという方の中には,本文を読んで不可解に思われた方もいるかもしれないが,この2つ,聞こえ方がまるで違うのだ。
思い返せば,この演奏,DVD購入前に YouTube で聴いていたが,その時は件の箇所について不自然な印象をもったという記憶がない。前から不思議に思っていたことなのだが,なるほど,得心がいった。
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