音楽と映画の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

エンヤ 『Watermark』

2011-12-04 14:02:52 | その他の音楽
Enya - (1988) Watermark - 03 On Your Shore


On your shore
 by Roma Ryan

Strange how my heart beats
to find myself upon your shore.
Strange how I still feel
my loss of comfort gone before.

Cool waves wash over
and drift away with dreams of youth,
so time is stolen,
I cannot hold you long enough.

And so
this is where I should be now,
days and nights falling by,
days and nights falling by me.
I know
of a dream I should be holding,
days and nights falling by,
days and nights falling by me.

Soft blue horizons
reach far into my childhood days
as you are rising
to bring me my forgotten ways.

Strange how I falter
to find I'm standing in deep water.
Strange how my heart beats
to find I'm standing on your shore.


 最近,寝る前に安原顕編『私の好きなクラシック・レコード・ベスト3』(メタローグ)を拾い読みしている。これは,安原氏企画による,各界の著名人が2~4頁という紙幅でお気に入りの「わがクラシック」に対する思いを綴るというもの。そこには自ずと各人各様の人生模様も織り込まれる。発刊は1994年。寄稿された方の中には,編者の安原氏をはじめ,既に鬼籍に入られた方も少なくない。
セレクトされたものは概ね「西欧クラシック音楽」が中心だが,中には,歌謡曲,ジャズは言うに及ばず,古典落語や義太夫を採りあげる方も。もっとも,編者は,後書きで,それもまた想定内だったとお書きになっている。

 さて,中に,宗教学者の山折哲雄氏(1931年生)の項がある。山折氏が先ずあげたのは,美空ひばり『ジャズ・アンド・スタンダード』。山折氏が美空ひばりの大ファンだというのはつとに知られている。以前,講師役を務められたNHK人間大学『日本人の宗教感覚』の中で,その心情を告白されてもいたからご存じの方もいらっしゃると思う。
あの番組の第2回「都はるみとご詠歌」で展開された「高度差による感性の変異」の話しは面白かった。山折氏によれば,平地の成都(中国四川省)は美空ひばり,高度4千メートルのラサ(チベット)は山口百恵,高度8千メートルのニェンチェンタングラ峰(チベット)は都はるみという具合いに,高度差による風土の相違とその地で好まれる歌の間には相関性があるというのだ。この見立てには,「思考の自由な飛翔」,「高踏的」,「こじつけ」etc,感想はいろいろだと思うが,深い学識と無防備な遊び心に支えられたそれには,観る者の心を喜ばせ,グイと引きつけるものがあった。

 山折氏が2つ目にあげたのは,韓国の美空ひばりといわれた李美子(イミジャ)の『1988年・李美子』。そして,3つ目にあげたのが,表題のエンヤ『Watermark』。山折氏がエンヤの世界にはじめてふれたのは,龍村仁氏の映画『地球交響曲(ガイヤ・シンフォニー)』を見たときだったとか。山折氏は,その時の感動を「宇宙飛行士のシュワイカートや登山家のメスナーとともにエンヤが登場し,その神秘的な姿と自然の中からつむぎだされたとしかいいようのない音楽に心を奪われたのである。エンヤのメッセージは,おそらく太古の昔からこの宇宙の中で鳴り続けていたのであろう。」とお書きになっている。

 私が持っているディスクは輸入盤。対訳もないため,ヒーリング・ミュージックよろしく,いたって暢気な聴き方をしているのだが,お気に入りの1枚。今でもそういう言葉が残っているのかわからないが,こういうのをトータル・アルバムというのだろうな。いや,決して怠惰な聴き方を正当化するために言うのではないけれど。
その性格からすれば先ずはタイトル曲の「Watermark」,あるいは,よりポピュラーな「Orinoco Flow」をあげるべきかもしれないが,ここでは「On Your Shore」を。詩もメロディーも実に美しい。詩は,山折氏が「神秘的な姿」とお書きになったローマ・ライアンその人によるもの。
それにしても,密林の解説にある「自宅のベッドルームでレコーディングを行い云々」は本当だろうか? 「荘重」,「広大無辺」を想起させるこのアルバムがベッドルームという極々私的な空間から生み出されたというのは何か不思議な感じがするのだが・・・。でも,その逆説もまた面白いと思う。

ウォーターマーク
クリエーター情報なし
ワーナーミュージック・ジャパン


美空ひばりと日本人
クリエーター情報なし
現代書館


コメント
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