ビル・エヴァンスのリヴァーサイド時代は,1956年の『New Jazz Conceptions』から1963年の『Bill Evans Trio at Shelly's Manne-Hole』まで。
リヴァーサイド時代のアルバムでは,スコット・ラファロ(b),ポール・モチアン(ds)との4部作が有名である。
その中では,表題の『Explorations』が間然する所がなく,『Portrait in Jazz』と同じくらい,あるいはそれ以上に,よく聴いたアルバムだ。各曲の演奏時間は必ずしも長くはないが,3人の交歓,ソロとも充実しており,4部作の中では一頭地を抜くものだと思う。
曲目は,次のとおり。
イスラエル
魅せられし心
ビューティフル・ラヴ
エルザ
ナルディス
愛は海よりも
アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー
スウィート・アンド・ラヴリー
名演の誉れが高い演奏ばかり。「エルザ」「アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー」は,「イスラエル」などの影に隠れがちだが,センシティヴで素晴らしい演奏だと思う。特筆すべきは,「愛は海よりも」のセンスの良さ。最後にほんの少しテーマを弾くだけなのに,冒頭から,聴く者にその曲を感じさせずにはおかない。ただただ,感嘆。
しかし,この盤での白眉は,やはり,「ナルディス」だと思う。テーマの後,最初のソロはラファロがとるが,バックでは囁くような調子でエヴァンスの助奏が鳴り続ける。やがて渾然一体となり,気付いたときはエヴァンスが主旋を弾き,ラファロがこれに寄り添うといった感じ。この演奏は,このトリオ,もっと言えば,ジャズ・ピアノ・トリオが到達した1つの頂点といっても差し支えないように思う。
ラファロのプレイについては,『Sunday at the Village Vanguard』の方が聴き応えがあるのかもしれないが,前記のとおり,「ナルディス」での内省的なプレイが素晴らしい。
モチアンは,トリオの性格上,どうしてもリズム・キーパーとしての役割が重くなるが,見事なブラッシュ・ワークで,2人を支えている。モチアンについては,あまり語られることがないが,録音盤では,1963年12月の『Trio '64 』がビル・エヴァンス・トリオでの最後の収録になるようだ。
ビル・エヴァンスのプレイは,殊更に「リリシズム」「耽美的」といったことが強調されているような気がする。そういった面があるのは否定しないが,「リリシズム」といった言葉で表現できるのは,彼の音楽の極々一端に過ぎない。ヴァーヴの『Bill Evans at Town Hall』はもちろん,この盤の「スウィート・アンド・ラヴリー」などを聴かれた方なら,私見にご賛同いただけるのではないだろうか。
なお,ラファロ亡き後,ビル・エヴァンスが目指したものは,ラファロ,モチアンと到達した音楽的頂点を取り戻すことだった,といった言い方がされることもある。
しかし,これは,チャック・イスラエル,ゲイリー・ピーコック,エディ・ゴメス,マーク・ジョンソン,マーティ・モレル,ラリー・バンカー,エリオット・ジグモンド,ジョー・ラバーバラといったプレーヤー達に対し,コーテシーを欠く表現ではないだろうか。
ビル・エヴァンス,スコット・ラファロ,ポール・モチアンのトリオに対する愛情・追慕といったものの裏返しかもしれないが,やはり適切ではないように思う。
ビル・エヴァンスが亡くなったのは,1980年9月15日。時の経つのは本当に早い。
リヴァーサイド時代のアルバムでは,スコット・ラファロ(b),ポール・モチアン(ds)との4部作が有名である。
その中では,表題の『Explorations』が間然する所がなく,『Portrait in Jazz』と同じくらい,あるいはそれ以上に,よく聴いたアルバムだ。各曲の演奏時間は必ずしも長くはないが,3人の交歓,ソロとも充実しており,4部作の中では一頭地を抜くものだと思う。
曲目は,次のとおり。
イスラエル
魅せられし心
ビューティフル・ラヴ
エルザ
ナルディス
愛は海よりも
アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー
スウィート・アンド・ラヴリー
名演の誉れが高い演奏ばかり。「エルザ」「アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー」は,「イスラエル」などの影に隠れがちだが,センシティヴで素晴らしい演奏だと思う。特筆すべきは,「愛は海よりも」のセンスの良さ。最後にほんの少しテーマを弾くだけなのに,冒頭から,聴く者にその曲を感じさせずにはおかない。ただただ,感嘆。
しかし,この盤での白眉は,やはり,「ナルディス」だと思う。テーマの後,最初のソロはラファロがとるが,バックでは囁くような調子でエヴァンスの助奏が鳴り続ける。やがて渾然一体となり,気付いたときはエヴァンスが主旋を弾き,ラファロがこれに寄り添うといった感じ。この演奏は,このトリオ,もっと言えば,ジャズ・ピアノ・トリオが到達した1つの頂点といっても差し支えないように思う。
ラファロのプレイについては,『Sunday at the Village Vanguard』の方が聴き応えがあるのかもしれないが,前記のとおり,「ナルディス」での内省的なプレイが素晴らしい。
モチアンは,トリオの性格上,どうしてもリズム・キーパーとしての役割が重くなるが,見事なブラッシュ・ワークで,2人を支えている。モチアンについては,あまり語られることがないが,録音盤では,1963年12月の『Trio '64 』がビル・エヴァンス・トリオでの最後の収録になるようだ。
ビル・エヴァンスのプレイは,殊更に「リリシズム」「耽美的」といったことが強調されているような気がする。そういった面があるのは否定しないが,「リリシズム」といった言葉で表現できるのは,彼の音楽の極々一端に過ぎない。ヴァーヴの『Bill Evans at Town Hall』はもちろん,この盤の「スウィート・アンド・ラヴリー」などを聴かれた方なら,私見にご賛同いただけるのではないだろうか。
なお,ラファロ亡き後,ビル・エヴァンスが目指したものは,ラファロ,モチアンと到達した音楽的頂点を取り戻すことだった,といった言い方がされることもある。
しかし,これは,チャック・イスラエル,ゲイリー・ピーコック,エディ・ゴメス,マーク・ジョンソン,マーティ・モレル,ラリー・バンカー,エリオット・ジグモンド,ジョー・ラバーバラといったプレーヤー達に対し,コーテシーを欠く表現ではないだろうか。
ビル・エヴァンス,スコット・ラファロ,ポール・モチアンのトリオに対する愛情・追慕といったものの裏返しかもしれないが,やはり適切ではないように思う。
ビル・エヴァンスが亡くなったのは,1980年9月15日。時の経つのは本当に早い。
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