音楽と映画の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

フリッツ・ライナー/シカゴ響 モーツァルト『交響曲第41番』

2006-01-27 23:07:14 | クラシック
モーツァルト生誕250年 クラシック危機鮮明 Sankei Web

 没後200年に発売された小学館の178枚のCD,本当に全部聴かれたのだろうか? 岩波書店の「モーツァルト」4巻,本当に全部読まれたのだろうか?
音楽文化隆盛の証のように持ち上げられたこれらは,何のことはない,バブル最後のあだ花だったということはないか?
石井氏や正高教授のご指摘は,ある部分,真理を突いているとは思う。しかし,一方で,「嵩上げされた虚構」と「実体」との齟齬・乖離の解消という意味で,経済の領域の話しとさほど変わらないような気もする。どうだろうか。

 さて,まさにモーツァルト生誕250年の日に何を聴こうかと迷うところだが,ここは気負わず,昨年末購入したフリッツ・ライナー/シカゴ響の3大交響曲の中から『ジュピター』。
ライナーのシカゴ響音楽監督就任は,1953年10月15日。この『ジュピター』は,1954年4月26日の録音。このコンビ,最初期の録音にあたる。

 演奏だが,沸き立つようなリズムが素晴らしい。これが52年前の演奏とは! ちょっと信じがたい。
タークイ著『分析的演奏論』のライナーの章(「フリッツ・ライナー にがい栄光」)には,「彼(筆者註:ライナーのこと)が就任した当時のシカゴ交響楽団は虚名のみあって沈没寸前のオーケストラだった」とあるが,それが疑わしく思えてくるほど,オケの機能,充実している。あるいは,オーケストラ・ビルダーとしてのライナーの手腕の賜物,ということになるのか。特に,逞しさと軽やかさを兼ね備えた低弦群が凄い。
ライナー就任前,前任のクーベリックを慕って(ライナーを嫌って?),ジュリアス・ベーカー(フルート)など,多くの名手が退団したといわれるが,替わりに,というのも変だが,ライナーは,アイタイ(コンマス),シュタルケル(チェロ),シャーロー(ファゴット)といった優秀な楽員を引き連れてきた。件の低弦チェロ群トップには,メトから移籍のシュタルケルが座っている。悪かろうはずがない。
圧巻は,第4楽章。演奏時間は,5分50秒。私が聴いた中では,たぶん,最速だと思う。これぞ,「モルト・アレグロ」。ライナー/シカゴ響の後,ジュリーニ/ベルリン・フィルで,同じ第4楽章を聴くと面白い。こちらの演奏時間は,7分20秒。ライナー盤,ジュリーニ盤ともに,反復はない。念のため ^^; 。

 ライナー/シカゴ響というと,先ずあげられるのは,バルトーク『弦チェレ』『オケコン』,R.シュトラウス『ツァラトゥストラ』といったところ。しかし,この『ジュピター』,今こそ,もっと聴かれて良い演奏のように思われる。

モーツァルト:後期交響曲集
シカゴ交響楽団 ライナー(フリッツ)
BMG JAPAN

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クーベリックのベートーヴェン交響曲全集

2006-01-22 21:03:52 | クラシック
 「余裕ができたらそのうち,などと言いながら,水戸黄門の主題歌よろしく,後から興味を持ったものに次々に追い抜かれ,結果,後回しになるCD」というのは,どなたも1つや2つお持ちだと思う。
私の場合,ラファエル・クーベリックのベートーヴェン交響曲全集が,長年,そのようなCDの筆頭格にあったが,昨年12月,中古盤ではあるが,ついに購入することと相成った。

 6枚組で3千円弱。当初,「そこそこ,いい買い物をした」程度の満足度だったが,いざ開封して,黒地に,お馴染みのDGのロゴ,クーベリックの指揮姿,という美しいボックスを目にした途端,自分でも驚くくらい感激してしまった。

クーベリックの全集は,9つの著名なオケを振り分けたというもの。もはや,説明を要しないと思うが,念のため記載すると次のような具合い。

第1番 ロンドン交響楽団
第2番 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
第3番 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
第4番 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
第5番 ボストン交響楽団
第6番 パリ管弦楽団
第7番 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
第8番 クリーヴランド管弦楽団
第9番 バイエルン放送交響楽団

いずれも世界の超一流オケだが,シカゴが入っていない。この点,企画として「画竜点睛を欠く」といった見方もあるかもしれない。クーベリックは1950年から1953年までシカゴの音楽監督の地位にあったのだが・・・。やはり,クラウディア・キャシディの件,尾を引いていたのだろうか。
それにしても,曲目ごとのオケの割り振りが何とも絶妙。仮に,ここにシカゴを入れ,どこかのオケを落とすとなったら,全て最初からやり直しになるような気がする。

 クーベリックには「その音楽は概して中庸で,素朴な味わい云々」といった評が付いてまわる。しかし,私に言わせてもらえるなら,クーベリックの特徴は,その音楽以前に,強烈で個性的な音にも,いや,音にこそある。これは,ベルリン・フィルとのドボ8,手兵バイエルンとのスラヴ舞曲などを聴いて気付いたこと。巷間云われる上記のような評は肝心要なところを取り落としているような気がするのだが,どうだろう。

 さて,まだ4番を聴いただけだが,次々と聴き進めるのが勿体ないくらいクーベリックのベートーヴェン,充実している。イスラエル・フィルの弦も美しい。
もちろん,「ギリシャの乙女」の意外な一面を披露したクライバーの功績は永遠のものであろう。しかし,である。クーベリック盤の冒頭,なが~く引き延ばされた木管から始まる序奏の心地良さといったらない。やはり,4番はこうでなければ。

追記 密林の画像は,本文に記載した私が購入したものとは違います。

ベートーヴェン:交響曲全集
クーベリック(ラファエル),ドナート(ヘレン)
ポリドール

このアイテムの詳細を見る

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モーツァルトに関する2つの番組

2006-01-13 21:29:57 | クラシック
 川口幹夫会長の頃,というから結構前の話し。NHKでラジオ第2放送の廃止が検討されていると報じられたところ,聴取者から思いもかけない程猛反対があり,結局見送られたということがあった。
現在放送されているラジオ第2「NHKカルチャーアワー 芸能・演劇その魅力」の「モーツァルトの世界~生誕250年にちなんで」(水曜日 PM9:30~PM10:00,再放送 木曜日AM11:00~AM11:30)を聴いていて,つくづく,廃止されなくて良かったと思う。パーソナリティーは高橋英郎氏。30分番組だが,モーツァルト好きには「至福の時」といって良いだろう。
今週11日の放送分は,K.466のピアノ協奏曲や歌曲『すみれ』が作曲された1785年,モーツァルト29才の頃の話しであった。来週放送予定は,いよいよ,1786年,『フィガロ』が作曲された頃の話し。

 ところで,9日のNHK総合「クローズアップ現代」の「大好き!モーツァルト」は,ご覧になった方も多いと思う。NHKとはいえ,3連休の最後の日のゴールデン・タイムでモーツァルト。
今年は,シューマン没後150年,ショスタコーヴィチ生誕100年の年でもあるが,今後,同番組で「革命万歳? ショスタコーヴィチ」が放送されるとは思えない ^^; 。やはり,モーツァルトは別格,ということなのだろう。
さて,肝心の内容。キャスターの国谷さんには申し訳ないけれど,正直なところ,ガッカリした。ベートーベンの『運命』とモーツァルトの『アイネ・クライネ』を聴かせて脳波を測定→モーツァルト人気とストレス社会の関係を説く,はいかにも紋切り型で,何を今更という内容。
『スプリング・ソナタ』と『ピアノ協奏曲第24番』で測定せよ,などとへそ曲がりなことを言うつもりはないが,『運命』と『アイネ・クライネ』を並べた段階で,何となく番組の底の浅さが見通せた。こんなことを言ったら,怒られかな。
特に,これはどうなんだろう? と疑問に思ったのは,N響メンバーによる『クラリネット五重奏曲』第1楽章の生演奏の際,楽想の転換場面でスタジオの照明を変えるという演出。確かに,演奏前,国谷さんから,「モーツァルトの音楽が見せる微妙な表情の変化が好き」という青柳いづみ子さんのお話しが分かり易いように,との説明はあった。しかし,聴く人それぞれであってしかるべき「音楽の感じ方」そのものを誘導するかのような演出。いくら何でも,あれは行き過ぎだった。たとえ,普段,クラシック音楽に馴染みのない人に向けたものであっても・・・。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新年明けましておめでとうございます

2006-01-01 11:53:26 | クラシック
 新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願いいたします <(_ _)> 。秋田,といっても広うございますが ^^; ,私の住む所は大変穏やかな元旦を迎えております。

 午後から初詣にでも,と考えているところですが,先程,NHK-FMの「NHK音楽祭スペシャル2005 セレクション」で,マリス・ヤンソンス/バイエルン放響の来日公演の一部を聴いたところです。先に,五嶋みどりをソリストに迎えてのプロコ『バイオリン協奏曲第1番』,その後,ベートーベン『交響曲第7番』。

 ベト7はパワフルな演奏でしたが,最終楽章のボウイングのコントラストが実にユニーク。この楽章だけは,先日のNHK教育で観ていましたが,映像付の方が2倍楽しめます。
それにしても,ヤンソンス,鳴らします。ニュー・イヤー・コンサートのウィンナ・ワルツもこんな感じかしら。「美しく青きドナウ」が,濁流を思わせる「激しく褐色のモスクワ河」なんてことにならなければよいのですが。これは,冗談 ^^; 。

 一方,みどりのプロコ。私には,繊細さを欠く演奏のように感じられました。
第2楽章はスケルツォ・ヴィヴァチシモ。ここはもともとユーモラスな楽章ですが,ロンド形式で言うBの部分のテンポ設定など,ユーモラスを通り越して,ちょっとグロテスクな感じ。
全体的に,少し粗っぽさの目立つ演奏で,心から愉しむというところまでいきませんでした。因みに,私のこの曲の愛聴盤は,ミンツ盤。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする