その後、鉄鋼スラグを埋めると、海藻が再生した
=新日鉄提供
■鉄鋼スラグ:藻場再生、CO2吸収増に効果 新日鉄など実験成功
鉄鉱石から鉄を取り出す際に生じる副産物「鉄鋼スラグ」を使い、海洋中に不足していた鉄を補って海藻の成長を促すことに、新日本製鉄や東京大などの研究チームが成功した。海藻は二酸化炭素(CO2)も吸収するため、漁業の活性化に加え、地球温暖化防止に役立つ可能性がある。
日本各地の海岸では藻場が減少する「磯焼け」が毎年拡大。現在では沿岸約5000キロにわたって発生している。原因としてウニによる食害や海水中の鉄濃度の減少などが指摘されている。
研究チームは5年前に鉄鋼スラグを沿岸へ埋めて鉄を人工的に補給する実験に着手した。鉄が海水に溶けやすくなるよう鉄鋼スラグ8トンを腐植土4トンと一緒に混ぜて袋詰めにし、磯焼けが発生している北海道増毛(ましけ)町の日本海沿岸に沈めた。
その結果、海藻1本当たりの重さは何の対策も取っていない近くの場所に比べて、約8カ月間で8倍に増えたことが分かった。また、埋設場所から算出されるCO2吸収量は海藻1平方メートル当たり年間5・5キロだった。
日本は京都議定書で年間6%の排出削減を義務付けられている。過去30年間に消失した日本沿岸の藻場のほぼ半分をこの方法で再生すれば、日本の年間排出量(約13億トン)の約0・5%に当たる700万トンを吸収することになるという。
現在、北海道以外にも三重県や長崎県など十数地点で実験しており、効果の継続期間などを検証していく。
【田中泰義】(毎日新聞 2010年1月4日 東京夕刊)
以前にも畠山重篤さんの「鉄が地球温暖化を防ぐ」という本の紹介しましたが、海に鉄をまいて、海藻を増やし、海からC02を吸収させようという試みがあります。
実験は試行錯誤があるようですが・・今回の新日本製鉄や東京大などの研究チームが行った実験の成功は、とてもうれしいです。
研究者の皆さん、ありがとうございます。よかったですねえ。
特に今後もし、CO2排出量に比例して環境税などが導入されれば、製鉄業などは負担が増えるのは必至でしょうから、新日鉄のような取り組みが功をなせば、企業としても節税につながり、助かりますよね。
これがきっかけになって、30年前の海の環境が、戻ってくる・・・とは単純にはまだ言えないのかもしれませんが、一つ、弾みがついたことがうれしい希望です。
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