kouheiのへそ曲がり日記

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『城』

2006-04-29 16:50:00 | 日記
安部公房は「文体の中に一切儀式を持ち込まない態度が重要であり、それが現代文学の作者としての最低限の義務」であるという意味を述べた。

カフカは中学生の頃『変身』を読んだきりで、これが2作目である。
職業だけがアイデンティティの拠り所となった現代人の自己疎外と非人間的な官僚制批判がテーマであることは中学生にも分かるだろう。
21世紀を迎えた今日、もはや古めかしいと言えるほどの不条理小説である。

しかし、儀式的混濁をこれほどすっかり濾過してしまった作家も珍しい。
安部が「カフカはいつも僕を躓きから救ってくれる水先案内人だ」と述べているのも宜なるかなである。

カフカは決して言葉に酔わない。
カフカの紡ぐ言葉は、孤独で張りつめた、研ぎ澄まされた、・・・要するに、現代文学作家の見本のようなものである。
コメント
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