吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

韓国旅の風景 八十五

2006年06月28日 14時12分33秒 | Weblog
韓国旅の風景 八十五                          

 韓国の食べ物 その十一
 松の実
 韓国では街でどこでも見かける茶房(ターバン)へ行くとコーヒでなく松の実茶の注文ができる。茶というが一種のスープと言って良い。
 やや渋い色の茶に白の松の実が浮いている飲み物だ。  
 松の実は新羅時代に盛んに採って食用にした。用途もいろいろで、酒の肴がわり、朝鮮菓子、飲み物などに使われた。
 正月十五日の薬飯(ヤクパップ)を祭祀に供える行事があるがその薬飯は炊き込んだ飯にナツメ、栗、胡麻、醤油、を混ぜ合わせ松の実を入れて再び蒸して作る。
 またその日は朝、クルミ、銀杏、生栗、松の実などをぽりぽり齧って…今年も無事で腫れ物ができませんように…と祈る習慣が農村にある。また宮廷料理にもでてくるが、九月九日の花菜(ファチェ)にも蜂蜜を解いた水に、ユズ、ザクロ、松の実などを入れてこれも祭祀の供えものにする。
 また風邪予防に十一月には、干し柿を煮た汁にショウガと松のミを入れたのを飲む。
 菓子やバンのおもてに松の実をまぶすことがよくあるが韓国はじつに松の実を使ったものが多い。
 松の実は滋養強壮、疲労回復、いまで言えば栄養ドリンクの効果がある食材でふるくから愛用され日本や中国にも伝わっていった。
 松の実は柏子(ペクチャ)と言いベクチャは百子とも書くから健康食もさる事ながら男の子の誕生を願う縁起のたべものでもある。

韓国旅の風景 八十四

2006年06月28日 09時24分06秒 | Weblog
韓国旅の風景 八十四                          

 韓国の食べ物 その十
 ヨモギ
 三十年前に初めて韓国のサウナに入って感心したのはふつうのサウナとは別に蒸気が吹き出すヨモギサウナがあった事だ。鼻をつくヨモギの香り自体が全身に染み込んで疲れが吹き飛んでしまった感じがした。壁にヨモギ束がぎっしりとつり下げている。
 韓国とヨモギはニンニクとともに古代神話から関係が深い。
 『檀君神話』である。天帝の庶子、桓雄(ファヌン)が洞窟に棲む熊と虎の二頭から人間になりたいと頼まれた。
 桓雄はヨモギ一束とニンニク二十ケを与え、これを食べて百日間日光をみなければ人間になれる…と告げた。熊は二十一日まで我慢をしてやっと女の人間になれたが虎は我慢できずにとびだした。
 熊女は子がほしいと必死に神樹のしたで祈った。そこで桓雄は熊女と結婚し、やがて子が生まれた。その子の名を檀君王倹とし朝鮮建国の祖となった。
 韓国人ならだれもが知ってる建国神話である。
 日本の別名は蓬莱というが(ヨモギの茂った草地)野草のなかでもっとも親しまれ食べられてきたものである。
 ヨモギと言えば子供の頃によく食べたヨモギ餅をすぐ頭に浮かべる。
 韓国でも古く三国時代から文献にヨモギが食べ物として登場してくる。古来からのヨモギ信仰に加え、毒気を払うのでヨモギで入り口を飾る習慣もある。
 ヨモギを使った餅と行事では、三月の環餅(五色餅)五月の車輪餅(丸い木型に押して作る)十月の艾湯(ウエタン)…艾はヨモギの事。艾団子…ヨモギ団子に蜂蜜をつけて黄粉をまぶす。
 日本のヨモギ餅の初見は十五世紀とされるから韓国はヨモギ餅では先輩国となる。