韓国旅の風景 五十六
韓国誌の謝礼 慶応大学出身の現代韓国人気質というかもろもろの民族性格について書いた本に接した同じ韓国研究家の川島正平氏の感想のなかに、翻訳本の印税トラブルが書いてあった。
韓国人の印税にかんしての出鱈目?ぶりの交渉についてであった。それほど大袈裟な話ではないが『韓国美の風景』と題して韓国の民俗、人間性にふれ、韓民族の諧謔性をほりさげた本を私は書いて、この本を韓国の知人に贈呈した所、『今月の韓国』…日、英、韓の三ケ国語…と題する大韓航空の機内誌の編集発行人から依頼があって、その月刊誌に一部連載を…とあったので、日本人の野人が見たあるがままの韓国の美をより多くの方に知っていただくべく許可をした。
翌月から掲載がはじまったが驚くなかれ、私のエッセイのなかで都合のいい、よく読まれそうな部分をすっかりコピーしてそのまま掲載したのである。
いくら当時の出版事情が日本より劣っているとは言え、驚いていると、さらに驚いたのは訪韓した時にホテルに訪ねてきて…ほんのお礼です…と言ってさしだしたのが、ウナギ皮製の財布だった。時価にして二百円くらいのものである。
雑誌編集人となればいかがわしい雑誌としても、編集者の良識は無学文盲ではあるまいし、日本の常識は通用しないにしても、物凄く単純なその発想ぶりに思わず苦笑を禁じ得なかった。
そんなことがあって五年後、韓国観光公社の韓国にかんする観光紀行文の全世界対象の懸賞論文募集に応募して入賞した時の賞金は(原稿枚数、十枚)F県の文学賞受賞賞金の三倍もあり、立派なハングル文字入りの盾もいただき、韓国観光公社の東京支店で祝っていただいたので『今月の韓国』のナンセンスは帳消しになった。
常識について山本七平の素晴らしいエッセイがあるが、常識の内容は時と場合で千変万化するにしても、韓国人を論ずるにはたんに日本人の常識を超えた、それもいろいろな過去の歴史認識も絡んでいちがいにのべられない。
三日の韓国、十日の韓国、百日滞在の韓国、五年滞在の韓国、民俗学者、比較文化研究家、経済評論、などなどそれぞれのもつアイデンティテイによって、ほんとの答えなんかでっこないと私には思える。
韓国誌の謝礼 慶応大学出身の現代韓国人気質というかもろもろの民族性格について書いた本に接した同じ韓国研究家の川島正平氏の感想のなかに、翻訳本の印税トラブルが書いてあった。
韓国人の印税にかんしての出鱈目?ぶりの交渉についてであった。それほど大袈裟な話ではないが『韓国美の風景』と題して韓国の民俗、人間性にふれ、韓民族の諧謔性をほりさげた本を私は書いて、この本を韓国の知人に贈呈した所、『今月の韓国』…日、英、韓の三ケ国語…と題する大韓航空の機内誌の編集発行人から依頼があって、その月刊誌に一部連載を…とあったので、日本人の野人が見たあるがままの韓国の美をより多くの方に知っていただくべく許可をした。
翌月から掲載がはじまったが驚くなかれ、私のエッセイのなかで都合のいい、よく読まれそうな部分をすっかりコピーしてそのまま掲載したのである。
いくら当時の出版事情が日本より劣っているとは言え、驚いていると、さらに驚いたのは訪韓した時にホテルに訪ねてきて…ほんのお礼です…と言ってさしだしたのが、ウナギ皮製の財布だった。時価にして二百円くらいのものである。
雑誌編集人となればいかがわしい雑誌としても、編集者の良識は無学文盲ではあるまいし、日本の常識は通用しないにしても、物凄く単純なその発想ぶりに思わず苦笑を禁じ得なかった。
そんなことがあって五年後、韓国観光公社の韓国にかんする観光紀行文の全世界対象の懸賞論文募集に応募して入賞した時の賞金は(原稿枚数、十枚)F県の文学賞受賞賞金の三倍もあり、立派なハングル文字入りの盾もいただき、韓国観光公社の東京支店で祝っていただいたので『今月の韓国』のナンセンスは帳消しになった。
常識について山本七平の素晴らしいエッセイがあるが、常識の内容は時と場合で千変万化するにしても、韓国人を論ずるにはたんに日本人の常識を超えた、それもいろいろな過去の歴史認識も絡んでいちがいにのべられない。
三日の韓国、十日の韓国、百日滞在の韓国、五年滞在の韓国、民俗学者、比較文化研究家、経済評論、などなどそれぞれのもつアイデンティテイによって、ほんとの答えなんかでっこないと私には思える。