吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

韓国旅の風景 四十五

2006年06月04日 17時24分59秒 | Weblog
韓国旅の風景 四十五

 濟州島 その一
 朝鮮半島の南海上約八十キロに浮かぶ楕円形をした島である。歴史的に沖縄孤文化にも関係があり、古代より海上の遭難寄港地などでその存在は知られていた。
 全島が火山島でその中心をなすのが漢拏山(ハンラサン)で標高が一九五〇米もある。 本来の地形から見て、その山麓から清流がのぞめるのだが、河川はほとんどなくて、裾野にあたる海岸周辺には泉が豊富でいたる所から湧き水がありその数も数百に及ぶ。
 海岸線から標高二百米まではミカン栽培が盛んで韓国全土の九十%もの生産を誇っている。それから上は豊かな牧草地帯になり、放牧がさかんに行われ、理想的な島の様相を呈している。
 かっては元の大軍に攻められた高麗軍が最後の抵抗をした有名な三別抄の戦いはこの島が舞台であった。今、NHKドラマで人気の『チャングムの誓い』で島に流されたチャンクムのこの島での暮らしのなかに倭冠の襲来シーンがあるが、対島を本拠地とする倭冠の跳梁でしばしばこの島の住民は襲われている。
 濟州島を考える時、私は日本の佐渡を思い浮かべる。共通するものは、両島とも、中央の貴族、政治家逹が事変の都度、島流しにあったことである。そのために両島の住民は祖先の血筋が高貴なところから人材も豊富に輩出している。この島の神話には、三姓穴(サムソンヒョル)物語りがあって、三っの穴から、高乙那(コウルナ)良乙那(ヤンウルナ)夫乙那(プウルナ)の三姓の始祖が生まれたと言う。
 漢拏山は自然の原子林や、高山植物や鳥類をはじめ五百種もの昆虫が生息する宝庫といわれている。
 近代化の進む濟州市の郊外にはいまだに美しい藁葺き農家が点在し、その屋根は一年中海風が強いので、繩できちっと固定され、屋根の勾配が饅頭の形になっているのがとても情緒がある。