吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

韓国旅の風景 四十三

2006年06月02日 07時59分14秒 | Weblog
韓国旅の風景 四十三

 結婚式のトラジ踊り
 ホテルで披露宴をするカップルが増えている。
 七十年代にはあまり見掛けなかったが、八十年代に入って八八年オリンピックの会場準備工事や道路、橋梁、公園の整備などの工事でソウル全市が活況をていし、景気も活発になってホテルの結婚式場も頻繁に利用されだした。
 時折のエレベータの開閉でドア向こうから音楽の喧騒が耳に届く。
 参考のため、式場のある階に降りて、ドア近くで見物としゃれた。
 日本の場合、こんな時、警備の人に注意されそうだが、韓国はのんびりしたもんで、出入りの人逹は気さくにアニョセヨ!と声かけてくれる。そんな時、歌われるのはトラジの歌だった。
 チマチョゴリの派手な色彩の乱舞が始まっている。
 韓国の人々、とくに女姓逹は音楽のリズムに乗るとすぐ踊りだす。その踊りは沖縄と全く同じく、とくに両手を上に差し上げてしなやかにふり、体と足を器用に動かしてリズムにあわせ、笑顔で踊りまくる。
 ドゥン ドゥン ハ ミョン クッマン ヨォギンダ どーんどーんと音すればクツ (祭祀)と思う…それ程、などで巫女によるクツがおこなわれる時、長鼓が勇ましく打ち鳴らされる。
 昔から、韓国女性はこのクツに慣れている。
 クツ行事には必ず打楽器が賑やかに打ち鳴らされ、人々は狂ったように踊りだす。

  トラジ(桔梗の根っこ)トラジ ぺク トラジ シムシム サンチョンル ペク トラジ…トラジ、トラジ、白いトラジ、深い山川の白いトラジ…。

 有名なトラジの歌を聞くと、韓国人はうきうきしてくる。腰をふり、手をふり、体を動かして誰もがリズムを取って踊りだす。
 村娘のチマチョゴリが美しくひらめいてチョンガ逹は胸ときめかして眼をうるませながら色目をおくるのである。…あそこのあの山川にトラジがちらほら…このトラジを男に想像して乙女逹の胸も高鳴る。

韓国旅の風景 四十二

2006年06月02日 06時19分14秒 | Weblog
韓国旅の風景 四十二

 大統領警護室員
 少し堅い話が続いたので柔らかい話にしよう。
 そんなに耳をそばだてなくとも良い!美人の妓生(キィセン)のことを少しばかり…。
 彼氏に振られた名門R女子大学生…堅い約束を裏切ってS大学を出るとすぐパリに行って音沙汰なしと言う。父母を同時に亡くして悲しみにくれる妓生、若い男が嫌で爺さん好みの妓生、八代亜希が大好きで…雨、雨、ふれふれ、もっと降れ…アメアメウレウレモットウレと歌う雨売り?歌が上手で眼の凄い綺麗な妓生、日本の嫁では最近見られなくなった、謙虚で夫にどこまでもつくすのが生き甲斐と言う妓生、なにしめ百五十回もの訪韓で、酒豪の文化財の面々と一緒だからきりがない。
 妓生どうだった?帰国すると必ず疑いの眼で訊かれるので…いや、今度は韓国の原節子にあってきたよ!と大ぼらを告げる。料亭賞味(サンミ)のママは凄い美人で友人の陶芸家のB氏お気にいりであり、使用する料理皿、碗、花生、その他、調度品などすべてB氏の作品で夜になるとその青磁の釉調は高麗青磁の本歌と見まがうばかりに美しい。
 韓国女性の名前は、貞(チオン)蘭(ラン)順(スン)玉(オク)淑(スク)愛(エ)賢(ヒョン)…大韓航空爆破事件の北朝鮮の犯人、金賢姫(キムヒョンヒ)は知ってのとうり、姫(ヒ)などが圧倒的に多い。日本のような花子は聞いたことがない。
 ある夜の宴会で、魚得順(アトクスン)なる可愛い妓生に逢った。
 …私は魚料理が大好き…チョヌンアヨリヌンテェダニチョアヨ!…と言った途端爆笑された。ミス魚の彼女が好きと言う訳だ。ヨリの発音があゆしかったのでミス魚になったらしい。
 しかしママの説明によるとこの魚姓は中国は宋時代の恒公の子、子魚、後に魚をもって氏となす名門だそうである。宴を終えるとあの両班気取りのA氏が真っ先に玄関に向かう。 明堂の麦酒ホールに繰り出すのだ。日本のスナックを思えば良い。韓国ではどこでもオードブルが多いので辟易しちゃう。前に立って客と話する女の子はおよそ十分もすれば隣りに異動してしまう。ここで同じ女の子が気に入れば、別料金で専用の部屋で十分の会話が楽しめる。そこに二人の逞しい青年が入ってきて私の横に座った。
 私が麦酒をどうぞ!と挨拶しながら薦めた手があいにく左だったので、軽く注意され、すぐ丁重に詫びた。韓国人どうしだったら激しく怒鳴られても仕方がない。左手は不浄なのだ。彼は私の発音から日本人とすぐ分って許してくれたのだ。
 彼もどこかで真露をしこたま腹に流し込んだと見えて、アルコール臭い。
 名刺をくれた。大統領警護室係長とある。
 彼は突然、私の手をにぎって自分の左胸にあてがってにっこり笑った。堅い感触。小型ピストルである。           
 私は意気投合してそれからら三軒もはしごして遅くホテルに引き上げた。
 私の問いに…金海の金(名門両班)ですと胸を張った。