吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

韓国旅の風景 二十五

2006年05月17日 08時22分50秒 | Weblog
 韓国旅の風景  二十五

 仮面劇の僧侶
 仮面劇(タルチュム)はいつでも国立劇場で上演されている。
 劇場まで地下鉄で明洞から五分もかからないが、観劇は予約制になっていて内部の設備も一流の雰囲気だ。仮面劇は遠く新羅(シルラ)時代からあってそのまま高麗と李氏朝鮮王朝時代に引き継がれていった。
 李朝時代には宮廷に仮面劇専門の役部署まで作られて盛んに演じられていたが、一六三四年、第十六代の仁祖王の時、廃止されそのまま民衆劇にひきつがれていった。
 私はいつも、といってもまだ五回しか観劇してないが、アバタの僧侶面がおかしくて見ただけで笑ってしまう。それだけでなく身分の高い僧侶が女に揶揄されやり込められるシーンはほんとに面白い。高麗時代までは崇敬されていた僧侶は李朝になると身分を常民以下に落とされ、破戒僧もしばしば社会の問題になって、寺院では婬妓の問題もしばしばおきたり風俗の乱れなども必ず破戒僧によって起こされた。寺院の装飾も丹青をきんじたり、石仏を庶民に勧めし僧を罰したり、僧侶の横暴を糾弾する劇が多く演じられる。
 そんな仮面の表情は韓国ならではのユーモラス、諧謔、皮肉、へつらい、女好きというより女たらし、などなどとても優れた表現だから、もの言わずとも面がすべてを物語ってくれる。それに加えて、両班、妻、妾、の三角関係がわかっていて教養と知性の高い両班が狼狽するしぐさがたまらぬおかしみを滲ませてくれる。それらが伝統音楽にしたがって踊りや演技が続くが現実に劇場ではなく慶州南北道などで仮面劇とおなじストーリの五人の道化師による広大(芸人芝居)が行われていると聞いた。