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福島第一原発の事故処理

2011-04-03 10:33:12 | 日記

福島第一原発事故の評価が行われている。
世界でこれまでに3例しかない 炉心溶融の記録を基に、福島原発で何が起きているかを科学的に推論するものだ。
特にフランスでは原発の依存度が高く、原発の安全は国の存亡にかかわっている。
必死に情報を集めるのは当然だ。

フランスの解析によると、福島の原子炉では冷却水の75%が失われ、炉心の温度が接し2500度以上に達したとされる。
この温度は核燃料を保護するジルコニウムを溶かすのに十分な高さだ。
水素爆発が起きたという事実だけとっても核燃料棒の温度が危険なレベルに達したことが分かる。
米エネルギー省長官スティーブン・チュウ氏は一昨日(先週の金曜日)、福島の原子炉の一つは7割が損傷し、もう一つでは燃料棒の1/3が溶融していると発表した。
実情は数年以上待たねば確認できないだろう。
ただ、ヨーロッパとアメリカの科学者達はいずれも最悪の事態 (complete meltsown) だけは回避できると見ている。

多くの観測データを基にしたコンピューター・シミュレーションでは冷却水が失われていた時間の長さから放出された放射性物質の拡散状況、直接観測できない炉心の状況などが科学的に推論される。
このシミュレーション用のプログラムをフランスで作成していた人と一緒に仕事をしたことがある。
彼から聞いた話によれば、 彼のチームが取り組んでいたのは膨大なプログラムを使って、各観測地点での核種や線量、気象データ、目に見える出来事(水素爆発など)等、様々な生データの経時的変化を入力し、事故の経過を再構築するものだ。

そういったシミュレーションによって福島からの放射性物質がいつどのくらいカナダや米西海岸に到達するかが予測され、実際にその正確さが示されている。
そのシミュレーションによって、福島第一原発は最悪のコースをたどっていないと推論されたのはよい知らせだ。
しかし同時に、これからの困難さも示している。

福島原発事故はスリーマイル島の事故に比べて重大さが格段に上だ。
一つの原子炉で核燃料棒が半分損傷しただけのスリーマイル島事故では160トンの汚染水が川に流され、1300万キューリー (4.8 x 10^17 Bq) もの放射性物質が空気中に放出された。
今回の福島原発事故では汚染水の量は東京ドームの何倍分にもおよび、最終的に放出される放射性物質の総量は想像を絶する。
規模が桁違いだ。

スリーマイル島ですら、NRC(原子力安全委員会)から安全宣言が出されたのが事故から10年近くも後で、核燃料の除去には14年を要している 。
Dickinson College で事故とその後の汚染除去作業の要約がまとめられている。
土壌やコンクリートに染みこんだ放射性物質は自然崩壊するのを待つしかないという付録までついてくる。
福島第一原発事故については専門家の言うとおり、現代で最も重大な災害を目のあたりにしている ("Clearly, we're witnessing one of the greatest disasters in modern time." - Alan Hansen, Areva NC)。
この後始末は政府が言うように数ヶ月単位とかではなく、十数年或いは数十年という単位で考えなければならない。
政府は不安をあおらないという大儀名分のもとで過小評価を発表するのをやめ、もっと真実を伝える様に改めるべきではないか。
政府発表にたいする信用度は地に墜ちており、風評被害を押さえるという意味ではむしろ逆効果だ。



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