【動画】かかしの町に聖徳太子の巨大かかし登場=筒井次郎撮影

 安堵町窪田の休耕田に、聖徳太子の巨大かかしがお目見えした。高さは12メートル。町では2年前から地元の人々が次々と手作りのかかしを作り始め、今やその数200体。太子像はそのシンボルとして作られ、周りの休耕田は「案山子(かかし)公園」と名付けられた。

 町にかかしが登場したきっかけは、森中茂さん(67)の発案。製綿所を営む傍ら、米作りをしてきた。2016年秋、稲刈り後にふと見た風景が、フランス人画家ミレーの名画「落穂(おちぼ)拾い」と重なった。

 「日本もフランスも、穀物の一粒一粒を大切にした思いは同じと感じたんです」。製綿所で培った技術で、布と綿を使って仕上げ、名画を再現した。

 ログイン前の続きほんの遊び心のつもりだった。それが「田園風景に溶け込んでインスタ映えする」と、SNSで話題に。観光とは無縁の地に訪問客が増え始めた。米作りの再開も考えていたが、「喜んでもらいたい」と自らの田んぼを休耕田にして、展示を続けた。

 かかし作りの輪が広がり、森中さんを会長に「オブジェ『案山子』制作展示実行委員会」が結成された。メンバーは町商工会や消防団など21団体。森中さんから作り方を教わり、新作かかしが公共施設や休耕田に続々と置かれた。

 県道沿いには、かつての天理軽便鉄道を待つ乗客たちのかかしが並ぶ。西郷隆盛や、地元出身で人間国宝陶芸家の富本憲吉のかかしも登場した。

 そして、今年4月26日朝。町長らのテープカットで除幕し、巨大な聖徳太子が姿を現した。モデルは旧1万円札の肖像。鉄柱の周りを金網と樹脂でかたどり、布で覆って作った。遠くからも目立つ。

 費用は企業などからの寄付で賄った。縫製を担当した森中さんは「こんな大きなものができて感激です」と喜んだ。

 町は聖徳太子ゆかりの地。太子が斑鳩と飛鳥を行き来したと伝わる「太子道」が通り、太子が休憩したといわれる「太子腰掛け石」がある。石には、すでに太子のかかしが座っている。

 町の人口は1995年の8941人をピークに、現在は約7500人。「人口が減る分をかかしでにぎやかにしよう」。実行委は、町民とかかしを合わせた「人口」を4年後までに1万人にすることを目指す。

 目標まであと2300体ほど。実行委員会は、材料となる衣類や履物、木材、針金ハンガーなどの寄付を募っている。かかしの地図も作る計画だ。問い合わせは事務局の町農政課(0743・57・1511)へ。