国立社会保障・人口問題研究所が3月末に発表した2045年の推計人口で、最も人口減少が進むとされる全国上位10位の自治体に、奈良県の5村が入った。荒井正吾知事は11日、定例会見で「人口減少は必然。これからの時代、必ずしも悲観すべきでない」と述べた。一方、各自治体は移住・定住対策に奔走する。

 推計によると、45年の川上村の人口は270人、減少率は79・4%で全国1位。県内では上北山村、東吉野村、野迫川村、黒滝村と続き、いずれも7割以上の人口が減る見込みだ。特に、上北山村は全国で唯一、14歳以下の年少人口が0人との推計だった。

 この結果について、荒井知事は「全然へっちゃら。悲観していない」と述べた。報道陣は「自治体としてやっていけるのか」などと尋ねたが、荒井知事は「南部東部振興課で既に取り組んできた。すぐに効果が出る課題でもない」と返答。今後も雇用の確保や行政の効率化を支援すると説明した。

 ログイン前の続き県は10年、南部振興対策室(現・南部東部振興課)を設置。中山間地が多い南部、東部で農産物のブランド化、助成金による企業誘致や創業支援などを進めてきた。16年には、移住相談窓口「奥大和移住定住交流センター engawa」を開設した。県のまとめでは、15年10月~18年3月に389世帯672人が、南部東部地域外から地域内に移住した。

 全国1位の川上村は、移住人口を増やす対策を進めてきた。13年から移住体験ツアーを開催。16年に村などが一般社団法人「かわかみらいふ」を設立し、移動スーパーや公営ガソリンスタンドを運営している。村の事業を通じ、この5年ほどで約60人が移住した。

 川上村定住促進課の担当者は「頑張っていた矢先のショッキングな数字。住民が悲観するだけでなく、移住を検討中の人もためらうかもしれない」と懸念する。一方、14歳以下が0人と推計された上北山村地域振興課の担当者は「ある意味、名前が認知されたと受け止めて、対策を続けていくしかない」と語った。

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 農村計画が専門の中山徹・奈良女子大教授(59)は「移住者の獲得につながる新しい取り組みの芽は確かにある」と評価しつつ、「財政規模を考えると、小さな自治体だけで地域の交通や教育を維持するには限界もある」と指摘。市町村の連携や、国と県の支援が重要だとした上で、「今のままだと、これだけ減少するという予測。予測を変える施策は可能だ」と話す。(加治隼人)