全小中高に無線LAN 電子教科書に対応、20年までに
国、費用5割補助
- 2016/5/8 2:00
- 情報元
- 日本経済新聞 電子版
現在、無線LANを利用できる小・中・高校の教室は24%にとどまる。総務省はまず今夏につくる17年度政府予算の概算要求に必要経費の一部を盛り込む。
19年度までの3年間で計100億円を確保し、無線LANを導入するのに必要なルーターと呼ばれる機器の設置費用のうち5割を補助する。携帯電話会社などが国に納めている電波利用料を財源にする。
補助は国公立や私立を問わず、全国すべての小学校(2万1千校)、中学校(1万校)、高校(5千校)が対象だ。各教室のほか、職員室や体育館にもルーターを置いて、校内どこでもネットにつながるようにする。導入後の諸費用は学校側で負担する必要があるが、総務省は国の補助で普及率が大幅に高まるとみている。
無線LANはケーブルにつながずにインターネットに接続する仕組み。光ファイバーなどの高速通信回線が敷かれた施設のルーターを通じ、一人ひとりのタブレット端末やスマートフォン(スマホ)、パソコンをネットにつなげる。
文部科学省の専門家会議は4月、デジタル教科書を20年度に導入することを提案した。音声や動画を盛り込めるため、学習内容の理解が深まりやすいとされる。教科書の内容をタブレット端末に取り込む際などには無線LANの環境が欠かせない。正式な教科書に位置づけるには法改正が必要なほか、端末代金を誰が負担するかなどの課題が残る。このため導入には国民的な理解とネット環境の整備の両方が必要不可欠だ。
もう一つの狙いは災害対策だ。大半の学校は地域の防災拠点に指定されており、地震などの災害が起きれば多くの住民が避難する。
4月の熊本地震では大手携帯会社の基地局が一時数百カ所で止まり、周辺地域で携帯電話が使いにくくなった。無線LANの設備が地震などで被害を受けていなければ交流サイト(SNS)や電子メールなどを通じて、安否確認や支援物資の情報収集がすぐにできるようになる。
学校は地域活動の拠点などになっていることも多く、こうした目的の利用者にも開放する。
学校によっては無線LANを整備しても、もともとの回線が大規模な通信に堪えられないところもある。そうした学校には文科省の補助金を活用して、回線の大容量化を同時に進めるように促す。