二人のピアニストに思う

gooニュース、注目のトピックスで「フジ子ヘミングがNHK斬り」を見て自分でもブログを作り、発言したくなった。

放射線関係の物理量単位(続)

2011-04-17 01:52:43 | ニュースの見方

 ▲ 福島原発の事故処理(3):[B-152]、
    に佐久間氏が述べている通りで、 原発問題の対処には、
      文系人間には不得意な語調での話、をすることになる。

   放射能の強度と、放射線の強度とは別であることに念を押すとか、
    物理量の次元を省略した(50kmの速度といった調子)の用語
        で話をして誤解させる、 ・・・などのことの無いように、
  理系の人間は、一応は配慮しているであろう。

     しかし、盲点となり易いことが、もう一つある。 それは、


  話題になる量の数値の幅が非常に広いことである。

  生活で普通に現れる他の物理量とは、この点が異なるために、
  間違いを生じさせる場合が有るのにも、注意が要る。


      「絶対に安全である乗り物でないと、俺は乗らない」
       なんて言っていながら、平気で飛行機でも自動車でも乗る
       文系人間は、一義的には確率的、推計的思考といった
       理科的資質の弱いところに、欠陥が有る。

       だが、人間には、色盲の人も、難聴の人も、いるのだ。
          それを前提に社会の仕組みを作るのと同様に、
       推計的思考能力の欠けている人、でもフォローできるように、
         話をしてあげることも、理系人の嗜みの一つ、だろう。


   キャズ君が、昔[1978/5/17]、新聞のコラムに書き、
       後に[2005/7/12]に、ブログに再録した
   ▲ 「不確定性原理」:[C-17]を、参照されたい。

  飛行機事故の発生確率、といった議論を展開するのでなく、
    色盲者相手には、色の話はしないとか、
    犬ねこ相手には、3ケタの数字の話をしない、
  とかの配慮も、教養の一部である。

      例えば、チェルノブイリ事故で、
        「放射線との因果関係」、が明かになっているのは、
        子供の甲状腺がんの増加だけ、とされているそうだが、
        こうした、確率的、推計的データも、
        理科的資質の弱い人には追随し難いので、要注意だ。
      参考までに、15歳未満が体外から1000 mSv(ミリシーベルト)
        被曝した場合の、甲状腺がんのリスクは
        15歳以上の7.7倍だという。


▲ 放射線関係の物理量単位:[A-129]、 に書いたとおり、
  放射線リスクの話をする場合は、特に文系人間を
    相手に話をするときには、  これらのことも、
  十分に気をつけないと、間違いのもとになる。

後述のように、原発による汚染問題に現れる数字と、
  当面の食品汚染の話題とは、同一の物理量の話だが、
  一京(兆の万倍)倍のレベル差、の話になる。

正確な数値」を伝える、よりも、「的確な情報」を伝える
  ことが必要
、なのだ、とのことを理解できていない
     政治家、官僚、報道関係者が多いことが、
  この物理量の幅の問題と絡んで、現在の人災の基本にある。

     ★ ★ ★ ★ ★

食材に関連して、厚労省の暫定規制値は、原子力安全委員会の
  「放射性沃素は年間50 mSv以下、セシウムは5mSv以下
    ならば安全」、との見解を基礎にしている。 そして
  一年間食べ続けてもこの上限に収まるように、として

     食品ごとに定めた暫定基準値が、
      セシウムの場合、
        野菜、穀類、肉類については500Bq(ベクレル)/kg
        水と牛乳については同200Bq/kgとなっている。
      沃素の場合は、野菜類については2000Bq/kg
        水と牛乳で300Bq/kg、となっている。


放射性沃素250Bqを、人体(大人の甲状腺)への影響
  を表すSv(シーベルト)に換算すると、0.11 mSvで、
  この量を毎日食べても

        基準の50 mSvに達するのは450日後。
            放射性沃素は半減期が8日と短くて、

  影響は長期的に無視できる、としている。
       大体は無難であるのに、各地の検査で、この値を
          超えるモノが出ると、問題になっている。


ところが、3月20日に福島原発の北西40kmの飯館村で
  採取した雑草から、254 万Bq/kg(=2.54 MBq/kg)の沃素、
    265 万Bq/kg(=2.65 MBq/kg)のセシウムが検出された。

        同時期に他の地域の雑草や土壌でも、例えば、いわき市、
           南相馬市ほかでも、数十万Bq/kg、などの数値が
           見られたことを、3/24に、文科省が公表した。


この数字は、上記の食品・飲料に関連して
  現れた数字の一万倍の桁である。
これに比べれば、栃木の農産品の基準値からの
  はみ出しなんて、問題にする方がおかしい。

この辺の理解や表現が、枝野官房長官には無理だった
  ことが、産地農民の無用な被害を産んで
       気の毒な事態を生じた

         私は、枝野には比較的好感を持っているが、
     弁護士の彼には、上記の▲「不確定性原理」、の素養は無かった。

餌に含まれるセシウムが牛に移行する比率は、IAEAによると
最大約0.1という。 1万Bq/kgの藁を毎日1㌔食べる牛からは
最大で1000Bqのセシウムが検出される計算だが実際はもっと低くなる。
1000Bq/kgの牛肉(放射性物質は全てセシウム[換算係数0.000013]
として)を毎日100g食べ続けると、一か月で摂取する放射線量は
約0.04 mSvで、一年間で0.5 mSvの計算である。
従って、雑草から250万Bq/kgの検出が有った地域は、要注意である。
 上記の食品・飲料とは桁が違うのだ。

       我々は、将来の教訓、としなければならない。


     ★ ★ ★ ★ ★

地震の3月11日時点で、福島第1原発
  1~6号機の炉心と、使用済み核燃料
  貯蔵プールに存在した放射性物質の総量は、
7億2000万TBq(terabecquerel, 1012Bq、兆ベクレル)
    = 7万2000 京Bq = 720EBq(1018Bq)
 

  だったという。
      内訳は放射性の希ガスが1億TBq、沃素131などの
      ハロゲン類が8100万TBq、その他の核分裂生成物
      (ストロンチウム90、セシウム137など)が
      5億3000万TBqである。


心配なのは、核燃料棒の損傷の可能性が指摘
  されている1~3号機の炉心、3、4号機の
  プールだけで計6億7000万TBqにのぼることである。


  チェルノブイリ事故では、環境中に計370万TBqの放射性物質
     が放出された、とソ連政府が報告したが、実際にはその
     数倍あった、と推測され、520万TBqの数字が普通使われる。
     その数十倍~100倍以上の量が、事故発生時点で
     福島第1原発に存在していた、ことになる。


     ★ ★ ★ ★ ★

福島第1原子力発電所事故で、海に放出した
  比較的低濃度の汚染水は、計1万393トンで、
       放射性物質(放射能)の総量は、
    約1500億Bq(=0.15TBq)
  だったと、東京電力は4月15日に発表。

大気中に放出された放射能で、
     農作物や水道水などに、影響が出ている。
  ハロゲン類については、総量の1%程度が
     環境中に放出された、と東電が推定し、
  大気中に放出された放射性の沃素とセシウムの量は、
  政府の原子力安全・保安院(経済産業省)や
  原子力安全委員会(内閣府)の試算では、
    ヨウ素131が、 13万~15万TBq
    セシウム137が、6000~1万2000TBq
  と推定している。

チェルノブイリ事故での、環境中への放出量は、
    ヨウ素131が、 180万TBq
    セシウム137が、8万5000TBq
福島第1原発では、これまで大気中に放出された分
   だけで、チェルノブイリ事故の約10分の1
   に相当する量が放出されたことになる。
1~3号機タービン建屋地下などにたまっている
   高濃度汚染水については、推定7万トンの
   汚染水に、半減期が長いセシウム137だけでも
   12万6000TBq
、があると見積もっている。。


過去の深刻な海洋汚染としては、
       1987のソ連灯台の日本海への、沈没放射能
            68万Ci=25.160TBq=2.5京Bq
       1983年に英ウィンズケールの原子力工場から160TBq
          の汚染水が放出された事故があった。
       福島第1原発にたまっている高濃度汚染水の
       0・1%(70トン程度)が海に流出すれば、
       ウィンズケール並みの海洋汚染が生じる。
事故ではなく、意図的行為としては、
      ソ連の日本海への放射性廃棄物(740 TBq)投棄
       があったことを、前回記事に紹介した。



     ★ ★ 4/21補足 ★ ★

上記に関連して、4/21に東京電力から公表されたデータ
          を、此処に収録しておく。:
東電は3月21日から原発近くの海水の放射能濃度を測定。
  放射性ヨウ素の濃度は、3/25日に、 前日の
    10倍以上に急増し、 タービン建屋地下などで
    見つかった汚染水の海への流出、が疑われていた。
  高濃度汚染水は、4/2日朝、2号機取水口
     付近の、コンクリートの裂け目から漏れて
     いるのが、見つかった。 止水剤などを地下に
     注入して水が止まった6日朝まで流出は続いた。
東電は、漏れ発見の前日の4/1に流出が始まったと仮定。
     裂け目の大きさや、流出した水の勢いなど、から
     流量を見積もり、 総量を520トンと推定し、

1日から6日までに海へ流出した、高濃度汚染水に
  含まれていた放射能の総量を4700 TBq
(兆ベクレル)
     とする推定値を、4/21に発表した。

上記のとおり、 4/4~10日にかけて、意図的に海へ
  放出した低濃度汚染水は、1500億Bq(=150GBq)
     だったから、その約3万倍の放射能が、
     海に垂れ流されていたことになる。


 今回の総量は、国の基準で定められた年間放出量の
     約2万倍に相当する。 海の汚染は、3月下旬から
         原発周辺の広い範囲で、確認されていた。
       2号機で見つかった高濃度汚染水との関係が
       疑われたものの、流出量はわかっていなかった。
     東電は「4月1日以前の汚染は、大気中に放出された
       放射性物質が海に落ちたか、 土壌から雨で
       流れたため、ではないか」、と説明していたが、
    高濃度汚染水が、何らかのルートで
      1日以前から漏れ始めていた可能性もあるから、
      そうすると、もっと量が増える訳である。

  今回の結果から、この汚染水が、海洋汚染に
  大きく影響している可能性が高い、とみられる。


     ★ ★ 6/6補足 ★ ★

政府は、福島原発事故で放出された放射性物質
  総量を、従来の37万TBq(37京Bq)から
  85万TBq(85京Bq)へと、修正した。
  IAEA閣僚会議への日本政府報告書にも盛り込む。



     ★ ★ ★ ★ ★

この辺に現れる数字と、前段の食品の話題と、
  同一の物理量(放射能)の話だが、
  一京(兆の万倍)倍のレベル差の話
である。

有効数字よりも、Bqに付いた接頭字が
  Tであるか、Gであるか、Mであるか、無い
        が、重大なのだ。

     ★ ★ 参考サイト ★ ★
「放射能・放射線」:http://costep.hucc.hokudai.ac.jp/costep/news/article/121/
「あとみん」:http://www.atomin.go.jp/
「放射線医学総合研究所」:http://www.nirs.go.jp/index.shutml
「アイソトープ協会」:http://www.jrias.or.jp/index.cfm/1,14676.3.html 



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1 コメント

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Unknown (痩せ蛙)
2011-04-30 17:42:23
法令の500倍で低濃度
という仲畑流万能川柳がありました。
恵庭弘(恵庭、4/23)さんの作品。
他に、
安全な場所で安全いわれても
佐伯弘史(大阪)、というのもありました。
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