▲ 福島原発の事故処理(3):[B-152]、
に佐久間氏が述べている通りで、 原発問題の対処には、
文系人間には不得意な語調での話、をすることになる。
放射能の強度と、放射線の強度とは別であることに念を押すとか、
物理量の次元を省略した(50kmの速度といった調子)の用語
で話をして誤解させる、 ・・・などのことの無いように、
理系の人間は、一応は配慮しているであろう。
しかし、盲点となり易いことが、もう一つある。 それは、
話題になる量の数値の幅が非常に広いことである。
生活で普通に現れる他の物理量とは、この点が異なるために、
間違いを生じさせる場合が有るのにも、注意が要る。
「絶対に安全である乗り物でないと、俺は乗らない」
なんて言っていながら、平気で飛行機でも自動車でも乗る
文系人間は、一義的には確率的、推計的思考といった
理科的資質の弱いところに、欠陥が有る。
だが、人間には、色盲の人も、難聴の人も、いるのだ。
それを前提に社会の仕組みを作るのと同様に、
推計的思考能力の欠けている人、でもフォローできるように、
話をしてあげることも、理系人の嗜みの一つ、だろう。
キャズ君が、昔[1978/5/17]、新聞のコラムに書き、
後に[2005/7/12]に、ブログに再録した
▲ 「不確定性原理」:[C-17]を、参照されたい。
飛行機事故の発生確率、といった議論を展開するのでなく、
色盲者相手には、色の話はしないとか、
犬ねこ相手には、3ケタの数字の話をしない、
とかの配慮も、教養の一部である。
例えば、チェルノブイリ事故で、
「放射線との因果関係」、が明かになっているのは、
子供の甲状腺がんの増加だけ、とされているそうだが、
こうした、確率的、推計的データも、
理科的資質の弱い人には追随し難いので、要注意だ。
参考までに、15歳未満が体外から1000 mSv(ミリシーベルト)
被曝した場合の、甲状腺がんのリスクは
15歳以上の7.7倍だという。
▲ 放射線関係の物理量単位:[A-129]、 に書いたとおり、
放射線リスクの話をする場合は、特に文系人間を
相手に話をするときには、 これらのことも、
十分に気をつけないと、間違いのもとになる。
後述のように、原発による汚染問題に現れる数字と、
当面の食品汚染の話題とは、同一の物理量の話だが、
一京(兆の万倍)倍のレベル差、の話になる。
「正確な数値」を伝える、よりも、「的確な情報」を伝える
ことが必要、なのだ、とのことを理解できていない
政治家、官僚、報道関係者が多いことが、
この物理量の幅の問題と絡んで、現在の人災の基本にある。
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食材に関連して、厚労省の暫定規制値は、原子力安全委員会の
「放射性沃素は年間50 mSv以下、セシウムは5mSv以下
ならば安全」、との見解を基礎にしている。 そして
一年間食べ続けてもこの上限に収まるように、として
食品ごとに定めた暫定基準値が、
セシウムの場合、
野菜、穀類、肉類については500Bq(ベクレル)/kg、
水と牛乳については同200Bq/kgとなっている。
沃素の場合は、野菜類については2000Bq/kg、
水と牛乳で300Bq/kg、となっている。
放射性沃素250Bqを、人体(大人の甲状腺)への影響
を表すSv(シーベルト)に換算すると、0.11 mSvで、
この量を毎日食べても
基準の50 mSvに達するのは450日後。
放射性沃素は半減期が8日と短くて、
影響は長期的に無視できる、としている。
大体は無難であるのに、各地の検査で、この値を
超えるモノが出ると、問題になっている。
ところが、3月20日に福島原発の北西40kmの飯館村で
採取した雑草から、254 万Bq/kg(=2.54 MBq/kg)の沃素、
265 万Bq/kg(=2.65 MBq/kg)のセシウムが検出された。
同時期に他の地域の雑草や土壌でも、例えば、いわき市、
南相馬市ほかでも、数十万Bq/kg、などの数値が
見られたことを、3/24に、文科省が公表した。
この数字は、上記の食品・飲料に関連して
現れた数字の一万倍の桁である。
これに比べれば、栃木の農産品の基準値からの
はみ出しなんて、問題にする方がおかしい。
この辺の理解や表現が、枝野官房長官には無理だった
ことが、産地農民の無用な被害を産んで
気の毒な事態を生じた。
私は、枝野には比較的好感を持っているが、
弁護士の彼には、上記の▲「不確定性原理」、の素養は無かった。
餌に含まれるセシウムが牛に移行する比率は、IAEAによると
最大約0.1という。 1万Bq/kgの藁を毎日1㌔食べる牛からは
最大で1000Bqのセシウムが検出される計算だが実際はもっと低くなる。
1000Bq/kgの牛肉(放射性物質は全てセシウム[換算係数0.000013]
として)を毎日100g食べ続けると、一か月で摂取する放射線量は
約0.04 mSvで、一年間で0.5 mSvの計算である。
従って、雑草から250万Bq/kgの検出が有った地域は、要注意である。
上記の食品・飲料とは桁が違うのだ。
我々は、将来の教訓、としなければならない。
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地震の3月11日時点で、福島第1原発
1~6号機の炉心と、使用済み核燃料
貯蔵プールに存在した放射性物質の総量は、
7億2000万TBq(terabecquerel, 1012Bq、兆ベクレル)
= 7万2000 京Bq = 720EBq(1018Bq)
だったという。
内訳は放射性の希ガスが1億TBq、沃素131などの
ハロゲン類が8100万TBq、その他の核分裂生成物
(ストロンチウム90、セシウム137など)が
5億3000万TBqである。
心配なのは、核燃料棒の損傷の可能性が指摘
されている1~3号機の炉心、3、4号機の
プールだけで計6億7000万TBqにのぼることである。
チェルノブイリ事故では、環境中に計370万TBqの放射性物質
が放出された、とソ連政府が報告したが、実際にはその
数倍あった、と推測され、520万TBqの数字が普通使われる。
その数十倍~100倍以上の量が、事故発生時点で
福島第1原発に存在していた、ことになる。
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福島第1原子力発電所事故で、海に放出した
比較的低濃度の汚染水は、計1万393トンで、
放射性物質(放射能)の総量は、
約1500億Bq(=0.15TBq)
だったと、東京電力は4月15日に発表。
大気中に放出された放射能で、
農作物や水道水などに、影響が出ている。
ハロゲン類については、総量の1%程度が
環境中に放出された、と東電が推定し、
大気中に放出された放射性の沃素とセシウムの量は、
政府の原子力安全・保安院(経済産業省)や
原子力安全委員会(内閣府)の試算では、
ヨウ素131が、 13万~15万TBq、
セシウム137が、6000~1万2000TBq、
と推定している。
チェルノブイリ事故での、環境中への放出量は、
ヨウ素131が、 180万TBq、
セシウム137が、8万5000TBq。
福島第1原発では、これまで大気中に放出された分
だけで、チェルノブイリ事故の約10分の1
に相当する量が放出されたことになる。
1~3号機タービン建屋地下などにたまっている
高濃度汚染水については、推定7万トンの
汚染水に、半減期が長いセシウム137だけでも
12万6000TBq、があると見積もっている。。
過去の深刻な海洋汚染としては、
1987のソ連灯台の日本海への、沈没放射能は
68万Ci=25.160TBq=2.5京Bq
1983年に英ウィンズケールの原子力工場から160TBq
の汚染水が放出された事故があった。
福島第1原発にたまっている高濃度汚染水の
0・1%(70トン程度)が海に流出すれば、
ウィンズケール並みの海洋汚染が生じる。
事故ではなく、意図的行為としては、
ソ連の日本海への放射性廃棄物(740 TBq)投棄
があったことを、前回記事に紹介した。
★ ★ 4/21補足 ★ ★
上記に関連して、4/21に東京電力から公表されたデータ
を、此処に収録しておく。:
東電は3月21日から原発近くの海水の放射能濃度を測定。
放射性ヨウ素の濃度は、3/25日に、 前日の
10倍以上に急増し、 タービン建屋地下などで
見つかった汚染水の海への流出、が疑われていた。
高濃度汚染水は、4/2日朝、2号機取水口
付近の、コンクリートの裂け目から漏れて
いるのが、見つかった。 止水剤などを地下に
注入して水が止まった6日朝まで流出は続いた。
東電は、漏れ発見の前日の4/1に流出が始まったと仮定。
裂け目の大きさや、流出した水の勢いなど、から
流量を見積もり、 総量を520トンと推定し、
1日から6日までに海へ流出した、高濃度汚染水に
含まれていた放射能の総量を4700 TBq(兆ベクレル)
とする推定値を、4/21に発表した。
上記のとおり、 4/4~10日にかけて、意図的に海へ
放出した低濃度汚染水は、1500億Bq(=150GBq)
だったから、その約3万倍の放射能が、
海に垂れ流されていたことになる。
今回の総量は、国の基準で定められた年間放出量の
約2万倍に相当する。 海の汚染は、3月下旬から
原発周辺の広い範囲で、確認されていた。
2号機で見つかった高濃度汚染水との関係が
疑われたものの、流出量はわかっていなかった。
東電は「4月1日以前の汚染は、大気中に放出された
放射性物質が海に落ちたか、 土壌から雨で
流れたため、ではないか」、と説明していたが、
高濃度汚染水が、何らかのルートで
1日以前から漏れ始めていた可能性もあるから、
そうすると、もっと量が増える訳である。
今回の結果から、この汚染水が、海洋汚染に
大きく影響している可能性が高い、とみられる。
★ ★ 6/6補足 ★ ★
政府は、福島原発事故で放出された放射性物質
総量を、従来の37万TBq(37京Bq)から
85万TBq(85京Bq)へと、修正した。
IAEA閣僚会議への日本政府報告書にも盛り込む。
★ ★ ★ ★ ★
この辺に現れる数字と、前段の食品の話題と、
同一の物理量(放射能)の話だが、
一京(兆の万倍)倍のレベル差の話である。
有効数字よりも、Bqに付いた接頭字が
Tであるか、Gであるか、Mであるか、無いか
が、重大なのだ。
★ ★ 参考サイト ★ ★
「放射能・放射線」:http://costep.hucc.hokudai.ac.jp/costep/news/article/121/
「あとみん」:http://www.atomin.go.jp/
「放射線医学総合研究所」:http://www.nirs.go.jp/index.shutml
「アイソトープ協会」:http://www.jrias.or.jp/index.cfm/1,14676.3.html
という仲畑流万能川柳がありました。
恵庭弘(恵庭、4/23)さんの作品。
他に、
安全な場所で安全いわれても
佐伯弘史(大阪)、というのもありました。