滝を目指して、渚達は歩いていた。
歩きながら思った、自然の中にいるうち渚はしばらく石垣で暮らそうと思っていた。
心が癒される色んな出会いもあったし、石垣で見た武志の幻も頭から離れない。今もしているペンダントが気になった。
その時、マングローブの森の中を歩いている男がいた。
山口と名乗る男は防水のトレッキングシューズに迷彩服で滝の上を目指していた。
昨日隙を見て、渚の化粧ポーチに発信器を付けておいた小型のナビには渚の居る場所が小さな点で映っている。もちろんリュックには武器も入っている。奴は必ずそばに居るはずだ。
早足だが息ひとつ乱れてはなかったが、湿度が高いので鍛えあげた腕から汗がしたたる。さっきから誰かにつけられている気がする、どうもおかしい。
マングローブの中には自分の進む音だけだが、時おり後ろが静かになる。
湿った地面に伏せて耳をすます、風の音がするだけだ。
いや奴がいる、本能がそう言っていた。
男はリュックからサイレンサー付きの銃を出すと、静かに振り向き自分の後ろに向かって撃ってみた。
ビシッ、ビシッとマングローブの森に音が響く。
バターン、後ろで何か倒れたような音がした。
急いでマングローブの中を走る、何か手応えがあった。
十メートルほど戻った、マングローブ中にピカピカ光る丸い金属の玉があった。
山口は直ぐに川に飛び込んだ、高性能爆弾だ直ぐに凄い音と共に爆発した。ドコーン爆風でマングローブの森にポッカリと穴があいた。
山口はしばらく川の中を潜水で進み、ゆっくりと頭を出した。
その間も手には銃を持っていた。
音もなく山口の眉間を目掛けて、ナイフが飛んでくる。
素早くかわすと、再び潜水した。かなり長く潜ると同じ場所から顔を出し、周りを見た。
黒い影に向かって発砲した、同じ場所に上がってくるとは思っていなかったようだ。
影はマングローブの森に消え失せた。
やはり終り屋だ、今日の夜には仲間が着くはずだ。決着は遅からずつくだろう。
山口は渚の後を追うのはやめて一度戻る事にした。
鋭い眼光はマングローブの森を静かに見張っている。
もう1人マングローブの森の中を、トカゲのように早く進む男がいた。
肩から少し血がしたたる、うかつだった振り向きざまに撃ってくるとは。
弾が少し肩をかすったが大したことはない。始末できなかったのは不味かったと思うが、こうなれば皆殺るだけだ。
その頃渚は滝の下でインストラクターが入れたコヒーを飲んでいた。
亜熱帯のジャングルみたいで気持ちがいい。
中年のカップルが少し気になった、どうも夫婦には見えなかった。女の方が一回りくらい若く見える。
不倫旅行かとも思う、女の人はどこかのお店のママで男はパトロンかしらん。
女子大生は写真をインストラクターに撮ってもらっている。
時おりジャングルの中に陽射しが射し込む。
今自分が浴びているのは、マイナスイオンかしらんと思う。
カヌーに乗ってゆっくりと帰る、今日は半日のコースだ。時折カヌーとすれ違う「こんにちわ」「こんにちわー」と声がかかる。
西表だというのに、川にいっぱいのカヤックやカヌーが浮かんでいる。
渚も少しづつカヌーを操れるようになった、今度は石垣でシーカヤックでもしようと思う。
バンで民宿に送ってもらう、中年のカップルは仲良く女の人が男の人にもたれて寝ていた。
やはり不倫旅行か少し気になった、女子大生は相変わらず元気に見える。
さて昼から何をするかしらん。
つづく