まったりとした暑さの中石垣の1日が過ぎた、土産屋の仕事はまだまだ慣れない、渚はかなり疲れたまだった働き初めて数日だからだ。
オーナーは品のいい中年だった、しかしなぜだが何か妙に懐かしいと思う。
店の近くで夕食を綾香と食べた、軽のワゴンでアパートまで送ってもらう。
綾香「じゃ明後日ね」
綾香の運転する車が走り去った。
石垣の夜は静かに虫の声で過ぎてゆく、都会の喧騒とは違うおもむきがある。
部屋に戻るとかたずけをする、まだまだ散らかったままだ。
渚の携帯が鳴った、大工の大崎からだ。
渚「もしもし」
大崎「今西表にいるさぁー、まだ仕事の下見なんだけど明日帰るから飯どう」
渚「昼間は買い物とかあるけど、夜はなんとかなるかな」
大崎「じゃまた連絡するから」
あっけない電話だった。本当に言葉が少ない。
アパートの階段を上がる、少し空を見たが今日は少し雲が多いので星は見えなかった。
その時終わり屋はトレーニングをし終り、武器の手入れをしていた。
明日は渚と離れるが、ベビーフェイスの居所が解らない以上は下手に動かないほうがいい。
まだフォックスに動きがない、ベビーフェイスに接触したのか一度西表に行ってみる事になりそうだ。
今日は早めに買い物をして、明日のバーベキュウ食材は用意した。
渚と一緒に居なくとも石垣島にも情報屋はいる、日頃は探偵みたいな何でも屋をしているが、離島ではあまり探偵の仕事はない。
離島料金なので高くはなるが、自分が行かなくても見張りくらいにはなる。
ただベビーフェイスに狙われるかもしれないから、遠くで女を見張ってもらう。
情報屋は金沢と言う四十手前くらいだろう温厚そうな男だ、一年前に石垣に来た時捜しておいた。
終わり屋はいつも1人なので、金で相棒をしてくれる奴が欲しかったのだ。
金沢は山城を金持ちの物好きな中年と思っているらしい。
変装をしてしか会った事がないので、本当の自分は知られてない。
金沢を明日は1日中新しい従業員の素行調査名目で雇っておいた。何かあれば連絡がくる。
明日は晴れだろうか、綾香と何処か行った事はない。
変装している以上、いつも短い時間にしようと心がけてきたからだ。
思えば一年間よくやってくれている、終わり屋は別に店などどうでもいいが真面目な女だと思う。
休みの日くらい、若い男とデートでもするべきだろう。
もしかしたら何か感ずかれたかもしれない、どうも疑う事から考えてしまう。
今週の内に西表に行ってフォックスの様子を見るかと思う、ベビーフェイスが何処にいるのか確かめなくてはならない。
渚は朝早くから起きると掃除をしていた。
新しいアパート生活はワクワクする。
実家で生活していたので一人暮らしには憧れがあった。
やはり棚が欲しい、また会社の車を借りるか。そうだ大崎に頼もうと思った。
天井にヤモリがくっついている、今まで無かった生活空間だ。
考えると冷蔵庫に何も入っていない。
近くのスーパーにでも買い出しに行こうと思った。
サンダルをはくとアパートの階段を降りる、左にだいぶんと歩いたが店らしきものは見えない。
10分ほど歩くと小さなお店があった、カゴいっぱいに適当に買った。
そうだ調味料を買わないとと思った。
荷物を冷蔵庫に入れると、さっきの店で買ったアイスコーヒーを入れて休憩する。
パソコンのネットを申し込まねばと思った。
携帯で検索して通信会社を調べた、石垣の生活がだんだん現実味をましてきたなぁと思う。
でもなんとなくだが、やっていけそうな気がしてきた。
渚は一段落すると急に海が見たくなった。
まだ蒸し暑い外に出ると、海が見えるところにきた。風が気持ちいい。
ちょうど夕日が綺麗に見えた。
この数日で島の風景に溶け込んだ自分がいた。
渚の髪が急に海風にゆれて、海の向こうの雲が綺麗に赤く染まった。
渚の心が海風に包まれていった。
完
「海風が恋人前編完しばらく休憩したら後編になります」