何年か前に自宅のベランダを自分でFRP塗装したことを書いたと思う。
大変な思いをしてゴムの塗装を剥がし、ヒビの入ったコンクリートを補修し、コーキングでヒビを埋め、ガラスクロスにFRP塗料を塗ったことを懐かしく思い出す。 今では多分腰がダメで、もう同じことは出来ないだろうな。
FRPとは、Fiber Reinforced Plasticの略で、ガラス繊維で強化したプラスチック塗装(車の部品の成型なんかも)という意味になる。
下地にプライマーという接着剤を塗り、不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤を混ぜて溶液を作り、乾いたプライマーの上に塗り、ガラスクロスを被せ、その上から再びFRP溶液を塗る。
硬化剤が効いてきて固まり始まる前に上記の作業を完了せねばならない。 溶液をあまりたくさん作ると作業途中で溶液が固まってしまう。 ガラスクロスの大きさ(塗装面)が大きすぎると途中で溶液が足らなくなってクロスにしわが入る・・・
というようなことで、最終的には小刻みに何度も何度も上記の作業を繰り返した。 おかげで塗装したところは部分部分で塗り重ねが出来て段々が沢山できてしまった。 それでも所期の目的であった、雨漏りの防止には成功した。
ところが・・・である
その時、一斗缶ひとつ(20Kg)では樹脂がほんのちょっと不足したので、余るの承知で一斗缶(20Kg)をもう一つ買った。
ところで硬化剤は樹脂の1%程度しか使わないので余ってしまうのである。 だから、前の一斗缶についてきた400ccの硬化剤が余っているところに更にもう一つ硬化剤約400㏄が届いたというわけなんだな。 だから、この400㏄の硬化剤は全く使わず仕舞だった。 もちろん、ほとんど8割がたのポリエステル樹脂も余ってしまった。 それを、スタッドレスタイヤの保管庫のようなところに置いておいたんだな。 その時はJeepチェロキーを廃車した後だったので、タイヤ保管庫は空だったんだ。
Jeepの後、RAV4を買い、再びスタッドレスタイヤを買った段階で、保管しておいた樹脂と硬化剤は別の場所に移されたんだ。 樹脂は屋外に、硬化剤は段ボール箱に入れて、ワシの大事なロッド作業室に移動しておった。 我家では訪問者が来るたびに、不要物はワシの作業室に自動的に移される制度になっておるのだ。
それからxxx年・・・
ポリエステル樹脂の方は庭の片隅で一斗缶の中でカチカチに固まってしまっていた。 こいつは市に電話して、持ち込みで処理してもらった。 なにがしかの金をとられたが安いもんだ。
前々から作業室にすっぱいような匂いがするのは気になっていたが、昨日はやけにクサいので作業室の窓を開け放った。 前の廊下の窓もすべて開け放った。 風を通すためだ。
一階にいても匂いが下に降りてくるので、おかしいなと肌で感じた。 なので作業室内を丁寧に点検すると・・・段ボール箱の下部が濡れているものがあった。 匂いを嗅ぐと、すっぱい匂い。 くっせ~・・・こいつだ!
あの硬化剤だ! 容器が化学変化してヒビが入り、中の硬化剤が漏れ出ておるではないかっか!
部屋の空気を少しでも嗅ぐと、扁桃腺付近が締め付けられ唾液の分泌が多くなる。 酢酸のようなすっぱいようなにおい。 腎臓に違和感。 頭が痛くなる。 明らかに有毒だと分かる。
すぐに段ボール箱を外に出し水を張ったポリバケツに漬けこんだ。 外でも匂う。 部屋に漏れ出たのはほんの少しだったのでキッチンタオルで拭きとり、水をつけて何度もふき取った。 キッチンタオルゴミは水に漬けて保管している。(発火の可能性があるというので・・・) 来週燃えるゴミとして捨てる。
ネットで調べてみると、他にも同じような経験をした人がいるようだ。 容器の劣化、よくあるようだ。
硬化剤の商品名はパーメック、その正式名称は、MEKPO (メタンエタンケトンパーオキサイド)という種類の過酸化有機物である可能性が高い。 赤い色付きのもの、透明のもの。 詳しくはよう分からんが・・・ かなりの危険物質らしい。 一応、消防法で第5類危険物に指定されている。 また、自己反応性物質でもある。
触れると炎症を起こす。 臭気も有害。 吸い込むと体に異常をきたす。
遺物混入で化学変化により自己分解し、揮発性ガスを発生し引火したり、場合によっては金属と反応して爆発したりする。 揮発したガスは他の物質と結びつくと発火の危険がある。 放置すると自然発火する。
当然、普通に捨ててはならない。 ごみ箱や下水、河川に流してはいけない。
今、安全な捨て方の勉強をしているところです。
樹脂に混ぜて固めてから捨てるのが良い、とはいうけれど、一斗缶でも余る程の量の硬化剤を使い切るには、捨てるための不飽和ポリエステル樹脂の一斗缶を一体いくつ買わねばならんのか。 不合理だ。 それに劣化しているかもしれんので固まらなんだらどないすんねん!
固めて捨てるには、FRP樹脂の20%以下までは混入ができるようだが、この際かなりの反応熱と引火性ガスが発生する。 混入しつつ撹拌し、すぐに同量の水を張る、ということらしい。 この方法の為に新たにFRP樹脂を買うというのは、なんとなく不合理な気がした。 また、この反応のためには金属製の容器でやること、と書いてあるが、本来のFRP樹脂の説明書には、絶対に金属の容器で硬化剤を混ぜないこと、という注意書きがある。 一体どっちなのか・・・間違っていたら、金属と反応してえらい目に合うんじゃないのか? といった疑心暗鬼が生じていた。
少量ならボロにしみ込ませてから水密し、燃えるごみとして出す、のが現実的かな。 これはメーカーでも認めている方法。 だが、400㏄プラスをこの方法で処理すると、燃えるゴミの収拾車のなかで煙がでたりしないか、なんて心配も生じる。
メーカーの廃棄ガイドでは、硬化剤の10倍量の20%水酸化ナトリウム水溶液に硬化剤を少しづつ混ぜながら撹拌すれば中和できる、とも書いてあった。 水酸化ナトリウムというと苛性ソーダのことだ。 この物質は、MEKPO以上の劇薬・毒物で購入するには用途を明確にしたうえで、印鑑と本人証明証が必要だ。 水溶液で売っているメーカーは存在するが、博多本社まで本人が出向かないと売ってくれない。 粉末や固形物で通販で売っているところもあるが、固形物で入手すると空気中の水分を吸収して液状になり、これが皮膚に着くと皮膚がとけてしまうという恐ろしいもの。 家庭で保管するには無理がある。
MEKPOの廃棄のために、こんな劇・毒物を新たに買う訳にもいかない。 苛性ソーダが余ってしまったら、それを廃棄するのにまた厄介な中和作業を強いられる。 中和には塩酸とか硫酸が必要だ。
そこで今回も市のゴミ処理課に相談したが、市では受け取れないという。 その代り、いろいろ調べてくれて、産業廃棄物の業者だとか、メーカーにも電話してくれた。
そのおかげでメーカーの担当者の人と連絡が付き、処理法が分かった。
”同量の水に混ぜてください。 それでMEKPOの物性が消えます。 つまり、自然発火や爆発をしなくなります。 その後、蒸発しますから混ぜた水が全部蒸発するまで放置しておけばいいです。”
とのことだ。
な~んだ、それでいいのか!と分かってしまえば簡単なことだった。 そこで早速ポリバケツに水を張り、2瓶のMEKPOを瓶ごと水中に沈め、容器の中まで水で何回も満たした。
水の表面には下から油が浮いてきて水面に広がるような反応が見られる。
最初は匂ったが、しばらくすると自然に匂いもしなくなった。 これで危険と匂いは去ったわけだ。 あとは水が蒸発して無くなるまで日向に置いておけばいいんだ。
あ~良かった。 苛性ソーダも新たなFRP樹脂も買わずに済む。 ボロにしみ込ませて、こわごわ燃えるゴミに出す必要もない。 下水にも川にも流す必要もない。
なにか肩の荷が下りたような気がした。
よかったよかった。
現在エポキシの硬化剤が余ってしまって処理法に困ってます。
コニシに電話して教えてもらおうかと思います。
またお越しください。
私も作品作りの為、凝固剤を使用してます。
ここ最近になって促進剤も使うようになって
固まるのが早くなったせいか……
熱を持って刺激臭が出る事が度々あり
仕方なく水に浸して様子を見る方法をとっていますが良いのか分かりません…………。
とにかく、扱いにくいですね(´;ω;`)