文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

7 こゑのつかひかた(発音談義)(1)

2008年12月08日 | 発音談義

 

ゑんぎり志ことば』の第二丁表から第四丁裏まで、全十九項目にわたり清水卯三郎の発音談義「こゑのつかひかた」を聞くことができる。この説明解説は、実践的な言語活動の現われとして高く評価されている。その詳細にわたる解説の素晴らしさに惹かれて翻字の煩を恐れず杉本つとむ『日本英語文化史の研究』を頼りに、発音の奥儀には手だ届かないまでも、その入り口あたりを模索してみよう。「こゑのつかひかた」原文の最初の一項目は前書きを兼ねた書き方になっている。見出しを含めて全十行を挿図(早稲田大学:文庫08c0566 ) に掲げた。

  まづ冒頭の<ゑんぎり志と、アメリカは、その言葉、同じきといへども、アメリカは、訛る声あり>とあって、英語と米語を区別しているのに驚かされる。次いで、「アぬき、ヱぬき、オぬき」について、「いとまぎらわしくして、わがたふとき、やまとびとの、ごとくあきらかなぬゆゑに、なれぬひとは、ききとりがたし」この言い回しがなんとも言えない。場数を踏んだ卯三郎の鋭い感性が生かされているようだ。解説に従って発音を.声を出してたどってみよう。なるほどと合点がいけば、卯三郎の意図したことがキット伝わってくるに違いない。

  さて、外見的には、読点(とうてん)が目立つように大きく明瞭につけられている。崩し字に振り回されている素人には意味の区切りがはっきりする読点は有難い。また、左側にはみ出したように書かれている二字分に相当する「縦長のし」がなんとも云えない。その書かれた箇所を見ると省スペースの書き方の見本のようにも思われるが、如何であろうか。終りに「やまとのひとに、なきこゑあり、またかなづかひのことなるあり、いまこゝにそのことをあげしめす」として、以下18項目にわたり説明解説が続く。場数を踏んだ学者であり事業家であり商人であった卯三郎の説明解説を次回から順次聞いてみよう。