あるバス停から、車椅子のお婆さんと付き添いのお爺さんが乗った。スロープを出している時も、車椅子を固定している時も、お爺さんとお婆さんは「すいませんねぇ…」「お世話かけます…」と何度も繰り返すので、私も「いえいえ…」「いいですよ…」と何度も返事をした。
終点に到着して、私が車椅子の固定器具を外していると… お婆さんが「ここで降りるの?」と言ったので、私は「はい、ここが終点ですので…」と答えた。しかし、お婆さんが「ここで?」と2~3回繰り返したので、私は「まさか… この場所が坂で危ないから、特例として“いつもはもう少し先の平らな場所で降りている”なんてことはないよなぁ…」と不安になった。
その時! お婆さんが「大腿骨が両方とも折れた」と言い出したので、私は一瞬「えっ!? いつもと違う場所で降ろされそうだから、そんな言い掛かりを???」とドキッとしたのだが… そんなことはなく“なぜ車椅子が必要になったのか”を話し始めたのであった。(当たり前じゃ!)
そんな会話の後、私の名札を見たお婆さんが「松井さんだって… 同じだね」とお爺さんに言ったので、私は「お二人も松井なんですか? 遠い親戚かもしれませんね」と言った。すると、お婆さんが「私らは富山(の出身)だけどね」と言ったので、私は「私の父は愛知の山の方ですが… 富山には松井が多いのですか?」などと会話を続けながらスロープを出した。
そんな会話の間、お爺さんはほとんど口を開かなかったけれど、ずぅ~っとニコニコしていた。このような“幸せそうな老夫婦”に出会うと、こっちまで幸せになったような… ん? 松井も諦めずに頑張れって!? はい、80歳までには何とか…(遅ぇよ!)