goo blog サービス終了のお知らせ 

世界標準技術開発フォローアップ市場展開

ガラパゴス化から飛躍:小電力無線IEEE802規格開発会議・・・への寄与活動拡充

日本政府は「トランプ自動車関税」に対抗する手段がある 本当の勝負は「4月3日以降」に始まる#2025/03/29#かんべえ(吉崎 達彦)

2025-03-30 11:04:42 | 連絡
:::::
吉崎 達彦(よしざき・たつひこ)/双日総合研究所チーフエコノミスト。1960年富山県生まれ。
かんべえの名前で親しまれるエコノミストで、米国などを中心とする国際問題研究家でもある。
一橋大学卒業後、日商岩井入社。
米国ブルッキングス研究所客員研究員や、経済同友会代表幹事秘書・調査役などを経て2004年から現職。
日銀第28代総裁の速水優氏の懐刀だったことは知る人ぞ知る事実。
エコノミストとして活躍するかたわら、テレビ、ラジオのコメンテーターとしてわかりやすい解説には定評がある。
:::::
競馬をこよなく愛するエコノミストによる「東洋経済オンライン」の人気持ち回り連載を「会社四季報オンライン」でも掲載。
今回は双日総合研究所チーフエコノミストのかんべえ(吉崎達彦氏)のコラムである。(最新のドル円相場はこちらです)
アメリカのドナルド・トランプ政権、


もしくは共和党は、しみじみ「別件逮捕」がお得意なようである。
■「反トラスト法」を使って「ESG目標外し」に成功
例えばESG(環境・社会・ガバナンス)投資。
「企業の皆さん、環境に優しい経営をしましょう」「投資家の皆さんも、そういう優れた企業を応援しましょう」というWoke(意識高い系)な発想は、保守派が忌み嫌うところである。
そこでどうしたかというと、反トラスト法を使って「金融機関が企業にESG目標を押し付けるのは『気候カルテル』である」と言い出した。
昨年6月、共和党が多数を占める下院司法委員会が、「ESG目標は談合と反競争的行為」という報告書をまとめたのが始まりだ。
カルテルこそは独禁法が定める「至高の悪」であるから、その衝撃は深かった。
実際に大統領選挙でトランプ氏が勝利すると、今年になって世界最大の資産運用会社である同国のブラックロックが「脱・炭素」を目指す国際組織からの離脱を決めた。
同社のラリー・フィンク会長兼CEOは、長らくESGの旗振り役を任じてきたものの、党派色を帯びた議論から身を引きたかったのだろう。
たちまち大手銀行の多くもこれに追従。
今月になって、三井住友フィナンシャルグループなど邦銀でも、「右に倣え」が始まっている。
もちろん、個々の企業が「脱・炭素」を目指すのは構わない。
機関投資家がESG(環境・社会・ガバナンス)を金科玉条として、束になって企業に圧力をかけるのがけしからん、というわけだ。
言われてみればESGが本当にいいことで、投資としても儲かるのであれば、わざわざ「ESG」などという看板を掲げる必要はない。
このまま金融制約により、全世界の石炭開発がストップしてしまうと、太陽光など再エネのバックアップ電源に困るという事情もあった。
いかにも「別件逮捕」という感は否めないが、共和党側にも一理はある、といったところだろうか。
逆に「これはいただけない」、というのは、トランプ政権がベネズエラ移民を強制送還するために、戦時立法である「敵性外国人法」を援用した件である。1798年に制定された古い法律で、敵国出身者を裁判所の手続きを経ることなく、拘束もしくは国外退去にすることができる。
第2次世界大戦中には、日系人12万人に対して適用されたことで悪名が高い。それでもいちおう、2025年現在でも有効な法律ではある。
■恐れていた自動車関税が公表、日本も逃れられない?
ただしトランプ政権が、連邦地裁のジェームズ・ボースバーグ判事の差し止め命令を無視して、「ベネズエラのギャング組織メンバー」を中米エルサルバドルの収容施設に送ったのは、いくら何でもやりすぎであろう。 
トランプ氏はSNSで「こんな判事は弾劾だ!」と主張したが、
後からジョン・ロバーツ最高裁判事から異例の反論を受けている。
ご案内の通り、今の最高裁は9人中6人が保守派判事で占められているが、
「判事は司法判断によって弾劾されることはない」のは三権分立の鉄則というもの。
トランプ氏に対して、「教育的指導」が与えられた形である。
 とまあこんな具合に、トランプ政権は「別件逮捕」の法律解釈を平気で使ってくる。
それがアメリカ国内にとどまっているうちはいいのだが、乱暴な手口で「トランプ関税」がわれわれにも及ぼうとしているから厄介だ。
トランプ氏が「解放の日」(Liberation Day)と呼ぶ4月2日を目前に、
とうとう恐れていた25%の自動車関税が公表された。
完成車は4月3日から、部品については5月3日から発動されることになる。
恒久的な措置とされていて、日本も逃れられそうにない。
しかるにあらためて考えてみると、
「トランプ関税」の法的根拠はかなり強引だ。
まず国別関税であるところのカナダ、メキシコ、中国に対する追加関税は、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づくものである。
本来はイランやシリアや北朝鮮に対して適用されているもので、「異例かつ重大な脅威に対し」発動される。
 ■「麻薬戦争への対抗」のはずが「貿易戦争」に
今回の場合は、フェンタニルという薬物の流入が止まらないから、隣国のカナダとメキシコ、薬物の生産拠点である中国に対して25%の関税を課すという。これまた「別件逮捕」ではあるまいか。
「関税タカ派」と呼ばれるピーター・ナヴァロ上級顧問も、「これは”Trade War”ではなく”Drug War”だ」と2月時点で言っていたものだ。
しかるにその後の経緯を見ると、もはや「麻薬戦争」ではなくて単なる「貿易戦争」になっている。
おとなしいメキシコは不問に付され、
報復措置を取ったカナダばかりが矢面に立たされている。
まるでいじめられっ子の予想外の反撃に対して、アメリカといういじめっ子がムキになっているかのようだ。
面白いことに、トランプ関税に対して中国、カナダ、EUは報復措置を実施しメキシコや英国、豪州、そして日本は対抗措置を取っていない
どちらが賢明な態度かは、意見の分かれるところであろう。
ただし食料やエネルギーを海外に依存するわが国としては、「やられたらやり返す」ことのハードルは高い。
ここは上手にやらなければならない。
 3月26日に公表された自動車関税は、大統領令をよくよく読むと面白いことが書いてある。
すなわち第1期政権の2019年、トランプ大統領は自動車関税の導入を検討したが、結局は実施しなかった。
今はそのときよりも状況が悪化しているから、安全保障上の理由から自動車関税を実施しなければならないという。
 さらに、米韓自由貿易協定(KORUS)やアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)についても触れられていて、「改定したけど十分な成果を上げていない」と評価している。
しかし待っていただきたい。
2019年には、日米間でTAGこと「日米物品貿易協定」が締結されている。そのことがスカッと抜け落ちているのである。
読者もすでにお忘れであろうか。
日本側は当時の茂木敏充経済再生担当相、アメリカ側はロバート・ライトハイザーUSTR代表が、日米二国間で結んだ貿易協定である。
元はと言えば、アメリカがTPP(環太平洋パートナーシップ)から抜けたために、日本向け牛肉などの関税が豪州よりも高くなってしまった。
 
■日本側も「別件逮捕」を仕掛けることは可能
かくてはならじ、とアメリカが「TPP並み」の条件を求めてきたのが始まりである。
このとき日本側でコメが除外された代わりに、
アメリカ側では自動車と自動車部品に対する2.5%の関税が残ったのである。 
ただしFTA交渉というものは、互いに「関税ゼロを目指す」のが建前であるから、この協定は「さらなる交渉を行う」(Customs duties on automobile and auto parts will be subject to further negotiations with respect to the elimination of customs duties.)と明記している。
つまり「アメリカの自動車関税2.5%は残しますけど、われわれはゼロにすることを諦めてはいませんよ」ということだ。
ただし交渉はそこで終わり、後は「放置プレイ」となっている。
つまり日本側が2.5%の関税を認めたのは、いわば「保険」なのである。
日米交渉が継続となっている限り、関税を上げることはできないはず。
日本側としては、「TAG交渉はまだ終わっていないのだから、25%なんて許しませんよ」と言い返すことができる。
すなわち日本側が仕掛ける「別件逮捕」というわけだ。
 いや、もちろん、トランプ氏が何と言うかはわからない。
ただしこのTAGは、紛れもなく安倍政権と第1次トランプ政権が締結したものだ。
「安倍さんの置き土産」を足掛かりに、石破さんも堂々と粘ればいい。
二国間交渉を嫌がるような相手ではないはずだ。
思うに日米通商摩擦の歴史を振り返ると、「日米間に自由貿易なし」と言っても過言ではないくらいである。
特に1990年代の日米通商摩擦では、強烈な応酬があったものだ。
当時の日本は、人口でもGDPでもアメリカのちょうど半分程度であった。
だからこそ「悪目立ち」したし、アメリカから脅威と見なされた。
まして「貿易赤字の4割程度が対日赤字」となれば、自動車や半導体で過酷な仕打ちを受けたのも不思議なことではない。
■「感情」に走らず、冷静に「勘定」に重きを
しかるに今では、
アメリカは人口で日本の3倍、GDPは6~7倍である。
そして1.2兆ドルの貿易赤字のうち、日本が占めるのはたかだか685億ドル(5.7%)で第7位の存在である。
トランプさんが叩くべき相手は、もっとほかにいるはずだ。よくも悪くも、日本はアメリカを脅かす存在ではなくなっているのである。
おそらく「鉄鋼アルミ」も「自動車」も、日本は他国と同様に課税されるだろう。
ただし勝負はそれからで、TAG交渉を再開すればいい。そこから地道に例外措置を獲得していくのである。
通商問題はくれぐれも「感情」に走ることなく、しっかりと「勘定」に重きを置きたいものである
本編はここで終了です。
この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。
あらかじめご了承ください。
・・・



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。