世界標準技術開発フォローアップ市場展開

ガラパゴス化から飛躍:小電力無線IEEE802規格開発会議・・・への寄与活動拡充

自衛隊による新型コロナウイルス感染症への対応 ― 自衛隊の災害派遣等における活動と今後の課題 ー

2020-12-30 10:43:56 | 連絡
 
 
 
 
 
:::::
参議院常任委員会調査室・特別調査室
立法と調査 2020. 10 No. 428
(外交防衛委員会調査室)水間 紘史
1.はじめに 
2.自衛隊の災害派遣に係る法令等に基づく枠組み 
3.新型コロナウイルス感染症に対する自衛隊の活動 
4.自衛隊の活動等に生じた主な影響 
5.今後の主な課題
 1.はじめに 2020 年1月以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、自衛隊は、帰国した邦 人等の救援に係る災害派遣、水際対策強化に係る災害派遣、市中感染対応に係る災害派遣 等を実施したほか、自衛隊中央病院等における陽性患者の受入れ等を行った。 一方、新型コロナウイルス感染症は、自衛隊の海外における活動や訓練、防衛協力等に も影響を及ぼした。 そこで、本稿においては、自衛隊の災害派遣に係る法令等に基づく枠組みを概観した上 で、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた自衛隊の活動、自衛隊の活動等に生じ た主な影響を紹介するとともに、今後の課題となり得る点についても言及することとした い。なお、肩書はいずれも当時のものである。 
ー中略ー
5.今後の主な課題 
(1)災害派遣の在り方 先述のとおり、災害派遣の実施に当たっては、公共性・緊急性・非代替性が勘案される こととなる。この点について、国会においては、新型コロナウイルス感染拡大により訓練 が縮小・延期・中止される中、自衛隊でなければ対応できない事態と、行政や民間事業者 等による対応が望ましい事態との線引きを明確にするべきではないかとの指摘がなされた。 河野防衛大臣は、教育支援、輸送支援等を一週間行った後、民間の事業者等が感染防止の ための防護を行うことができることを確認し、業務を引き継いで撤収するという形式で行 っており、初動は自衛隊が対応することで民間事業者等の感染リスクを低減させることが できている旨答弁した44。 また、自衛隊が感染症対策のための災害派遣を行う意義について問われた河野防衛大臣 は、感染症の蔓延防止については、自然災害への対応と同様に、やむを得ないと認められ る場合には災害派遣の対象となるとの見解を示し、これまでは豚熱(豚コレラ)、鳥インフ ルエンザ等、動物の感染症に対して災害派遣を行ってきたが、今回は人間の感染症であり、 特に人命を守るために、より災害派遣を行う必要性が高いとの考えを示した45。また、河 野防衛大臣は、チャーター便への看護官派遣や、クルーズ船における支援等については、 都道府県知事による行政の範疇とは言い難い中、自衛隊が、自律的に動ける組織という強 みを活かして、政府全体の取組に貢献することができたとの評価を示した46。 内閣府が 2018 年1月に実施した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」によると、自衛 隊に期待する役割として災害派遣を挙げた者の割合が 79.2%と最も高く47、国民の多くは、 自衛隊に対し災害時の救援活動や緊急の患者輸送等を期待していることがうかがえる。他 方、日本周辺の安全保障環境が一層厳しさを増す中、自衛隊には、防衛・警備に係る万全 の体制を採ることも求められている。自衛隊の主たる任務が国の防衛であることを踏まえ た、自衛隊の災害派遣の在り方についての更なる議論が求められよう。 
(2)自衛隊の装備・能力 
防衛省は、2020 年度第1次補正予算において、自衛隊病院における感染者の受入れ等に 対応するための人工呼吸器や陰圧設備の整備、感染者等の輸送に必要となる救急車や機動 衛生ユニット(航空自衛隊の輸送機に搭載し、機内での患者の治療、搬送を可能にする設 備)の整備、新型コロナウイルス感染症対応に必要な防護服等の衛生用消耗品等の整備、 要隔離者の受入れにも活用できる外来者用の隊舎の整備等に係る経費を計上した。また、 2020 年度第2次補正予算においては、感染症対処能力の更なる向上のためのCT診断車や PCR検査機器、感染症患者搬送用器材の整備、自衛隊における感染症拡大の防止のため のサーモグラフィーの整備や隊舎の衛生環境の改善等に係る経費を計上した。 今後は、新型コロナウイルス感染症への対応において活用された医官・看護官といった 自衛隊内の医療関係者や対特殊武器衛生隊を始めとする衛生部隊に加え、NBC(核 (Nuclear)、生物(Biological)、化学(Chemical))兵器への対応を担う化学科部隊48も 含め、有事における対処も見据え、自衛隊の生物剤への対処能力の向上が求められる。 また、医官の充足率の向上も課題となる。医官については、2019 年3月 31 日現在、定員 1,100 名に対して、現員 939 名となっている49。防衛省は、医官の充足率が9割に満た ない原因は医官の離職にあり、その主な理由として「医師としての研修・診療機会の不足」 が挙げられると分析しており、医官の診療機会を確保するための各種取組の促進、感染症 や救急医療を始めとした専門的な知識・能力の取得・向上、モチベーションの向上など、 離職を防止するための様々なキャリアを想定した各種施策を継続して講じることで医官の 充足向上を図りつつ、医療技術の練度を維持・向上させているとしている50。 
(3)病院船をめぐる議論 
病院船(災害時多目的船)については、1995 年の阪神・淡路大震災、2011 年の東日本大 震災等の大規模災害の発生を契機として、その保有に関する議論が行われてきた51。新型 コロナウイルス感染症が拡大する中、国会においては、病院船を保有すべきではないかと の指摘がなされた。加藤厚生労働大臣は、病院船の配備の在り方について、「加速的に検討 していく必要がある」との認識を示した52。2020 年度第1次補正予算(内閣府所管)にお いては、病院船の活用に関する検討経費として 7,100 万円が計上された。 病院船保有の利点としては、災害時、被災状況によっては既存の医療施設のみでは大量 に発生した傷病者に医療行為を適切に行うことが困難となる、あるいは、医療施設が被災 して使用できない等の事態が生じた場合において、陸上の医療施設を補完する役割を担う ことができる点が挙げられる53。 課題としては、総合型病院船であれば2隻で最大 700 億円とされる高額な建造費、年間 50 億円とされる維持・運用費54のほか、船舶要員、医療スタッフ等、運用に必要となる人 員の確保が挙げられる55。また、船内で感染症の治療を行う場合、感染拡大が発生しやす いとの指摘もある56。さらに、感染症に備えて病院船を保有する場合、患者を隔離する個 室を多く用意する等の、一般的な病院船と異なる仕様を求められ、感染症対応以外の用途 における幅広い活用が困難になる可能性があるとの指摘がある57。 米国、ロシア及び中国においては、海軍が病院船を運用しており58、我が国が病院船を 保有する場合、海上自衛隊が運用の主体となることが考えられるが、海上自衛隊の態勢の 現状を踏まえ、政府全体として病院船保有に係る望ましい在り方を見極める必要があろう。 (みずま ひろし)
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2020pdf/20201001056.pdf




最新の画像もっと見る

コメントを投稿