ねぇハニー
あなたが、並べるお洒落なセリフより
シャイな言葉で、詰まるあなたの方が
たぶん、私を、その気にさせるわよ…
じゃまたね…
ヘイ ベイビー
胸元は隠せても、背中は隠せないんだよ。
男は、女の背中の文字を読むものさ
ウソが、可愛い夜もあるけれど、
もっと上手につかなきゃ、ウソもウソじゃなくなるのさ
さ、さ、白状しろ…いつ整形したんだ
男と女のエトセトラ
…
この世には、たくさんのウソがある。
時には、つかなきゃならない、良いウソも、ある。
ウソは悪いが、上手なウソもある。
いつだったか、真面目そうな、若い女性のお客さんから、小声で質問されたことがあります。
ほうほう…何でしょう⁇
誰かに聞いてみたかったことなのですが、言い方を間違うと誤解を招きそうなことです。
そんなことを聞けるような、年配の知人もいなくて、でも、ずっと気になってる、不思議なことなんです。
…みたいな、前置きをすると。
…どうして、年配になると、みんな、作り話しを、するようになるんですか?…
つまり、大人は、ウソをつくのです。
それも不思議なのが、どうみてもバレバレな作り話でも、大人は、まるで今初めて聞く真実みたいな顔をしながら、大人どうし、相槌を打つことをしたりします。
それが、私には、どうしても理解できないのです。
あぁなるほど。
と、すぐに、彼女の質問の意図が理解できました。
なぜなら、ぼくも、若い頃のある日に、そんな疑問を感じた経験があるからです。
分類別でいくと、僕は、どっぷりその年齢です。
だから、決して冤罪ばかりではない年頃です。
…それ、ヤバい‼︎ 俺のこと⁇
と、かる~くジャブボケしてみせると、ムッとした顔をされたので、マジメに答えることにしました。
では、真面目に僕の意見を、お話しますね。
まず、最初に。
その大人のウソとは、自分の話であるはずです。
だから、まず前提として、誰も傷つけない、傷つかない、ウソなわけです。
ウソを、オシャレに上手につける大人は、誰からも慕われ、好かれます。
ウソが下品で下手な大人は、誰からも、嫌われます。
それだけのことです。
あなたが、疑問に思えた大人は、ウソが下手な大人です。
ウソが上手な大人は、あなたに、疑問も不快さも、感じさせません。
大人になると、生きてきた時間の分だけ、みんな、いろんな経験をしながら、いろんな場面と出くわす度に、いろんな自分を、見てしまうことになります。
だから、自分のことを作り話してしまうのは、ウソを紛れ込ませることで、現実の角を隠し、自分に折り合いをつけ、丸く納めるためだと思います。
そうしないと、生きる力が湧いてこなくなるからです。
なぜなら人生は、恥ずかしいことの繰り返しだからです。
まともに受け止めていたら、生きる理由さえ見つからなくなります。
日々の暮らしの中で、いい事なんて、十日に一度もあれば、良い方ですよ。
人生などとは、聞こえは良いけど、実は名ばかりの、嫌なことの方が多く、我慢することばかりなのが、僕の今までの人生への目撃証言です。
ある意味、実は、孤独を味わう、ことこそが、人生と言う学問であり、人生の醍醐味なのかもしれませんよ。
せめて10日に1度の、良い出来事のお陰で、残りの九日と、折り合いつけながら、みんな、生きてるって感じしますよ。
辛い過去や悲しい過去、恥ずかしい過去や忘れたい過去…を、ずっと背負って生きるより、過去や日常を、作り話で、自分を美化することで、人は心のバランスをとっているのでは…と、僕はそう思います。
大人になるとは、そんな自分も他人も、学んでいくことなのでは、ないでしょうか。
許すも力、許さないのも力。
許すも勇気なら、許さないも勇気。
人は、誰もが、強い勇気と力を持っています。
ですが、それが前者なら、心は拡張されますが、後者だと、心は病んでいきます。
でも、所詮、ウソじゃないですか。
つまりは、大人になると、本当の話は、してもらえないってことですか。
さすがに、そう問われると、僕は困ってしまいました。
しばらく、話題を変えながらも、ずっと、その返答を考えていました。
ありのままを装う人ほど、実は、誰よりも硬い鎧を見に纏う人なのだとは、まだ、彼女には、理解が難しいだろう。
そう思うと、やっぱり僕は、彼女への返答は、上手なウソを考えているのでした。