題名:Balanced Crystalloids versus Saline in Critically Ill Adults
雑誌:NEJM, 2018
著者:Matthew W. Semler
SMART:Isotonic Solutions and Major Adverse Renal Events Trial
(背景)
Balanced crystalloidに比べ、生理食塩水は高Cl代謝性アシドーシス、急性腎機能障害、死亡率の上昇に繋がると示唆されているが、結論は出ていない。
(方法)
・デザイン:unblined cluster- randomized, multiple-crossover trial
・施設:Vanderbilt大学病院にある5つのICU
・対象者:18歳以上のICU入室患者
・ランダム化方法:それぞれのICUで、生理食塩水・balanced crystalloidのいずれを使うか、各月ごとに変更した
(例. 偶数月 は生理食塩水、奇数月はbalanced crystalloid)
・balanced crystalloidの相対的禁忌:高カリウム血症と頭蓋内損傷 (脳浮腫の懸念)
→程度により生理食塩水を使用した
・Primary outcome: 30日以内のmajor adverse kidney event
(死亡, 腎代替療法 [RRT]の新規導入, 持続的な腎機能障害(退院時にクレアチニン値が本人baselineの
2倍以上)の複合アウトカム)
※baselineのクレアチニン値が分からない時は、下記式で推定。
creatinine = 0.74 − 0.2 (if female) + 0.08 (if African American) + 0.003 × age (in years)
・Secondary outcome:
死亡(入院中, 30日, 60日), ICU free days, ventilator-free days, vasopressor-free days, 組入28日後までのRRT free days
(結果)
balanced crystalloidは7942名, 生理食塩水は7860名。退院もしくは入院30日までの1日当たり輸液量は, 中央値でbalanced crystalloid 1000mL, 生理食塩水で1020mLだった。protocolからの逸脱は, balanced crystalloid 5.4%, 生理食塩水 4.4%だった.
30日以内のmajor adverse kidney eventはadjusted OR 0.90 (95%CI: 0.82-0.99), 30日以内の病院内死亡0.90 (0.80-1.01), 腎代替療法の新規導入 0.84 (0.68-1.02), 持続的な腎機能障害 0.96 (0.84-1.11)だった。
Secondary outcomeで有意差がついたのは, RRT free days 1.11 (1.02-1.20)だった.
敗血症患者に限定すると, primary outcomeはOR 0.80 (0.67-0.94)とbalanced crystalloidの患者に発生が少なかった。頭蓋内損傷がある場合はOR 1.09 (0.81-4.47)と両群で差はなかったが, ない場合は0.89 (0.51-0.98)とbalanced crystalloidの患者に発生が少なかった。
※ 神奈川・神戸・茨城のICU治療に携わったことがありますが、第一選択はいずれも乳酸リンゲルでした。日本のICUで生理食塩水を主体に使っている病院って、どれくらいあるんでしょうか??
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