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旅行と深部静脈血栓のリスク

2009-07-14 | 循環器・救急医療

Travel and risk for venous thromboembolism
Annals of internal medicine, 7月7日

序文
・現在25億人が述べ飛行機を利用 
・DVTの28日死亡率は11%
・現在まで旅行とDVTについては論文毎に評価が分かれている。 
・距離とDVTのリスクについては十分に検証されていな。

方法
・今回1レビューアーによりMedline, EMBASE, BIOSIS, CINAHL, Cochraneを使いonlineで検索可能な時期から2008年3月まで検索。言語制限無し 
・1560の論文を検出、ケースレポートやコメント等を除外し42を選定
・42の論文を2人のレビューアーにより検証
・旅行に関連し適切に比較している論文13を選定 
・14の論文について取り寄せ及び4つの論文について旅行の距離やリスク等について直接問い合わせ
・外部からの補助金等は無し

結果
・4055人(3980人11のコントロールスタディ:5413人のコントロール参加者)、29人(2つのスタディ、10932人のコントロール参加者)、46人(ケースクロスオーバースタディ:5408人の参加者) 7つの論文はリスク+ 7つでは- 
・全てをプール 2.0 (95% CI. 1.5-2.7 ; p<0001) (非均一性が強く 70%の変動がある。)→原因としてはコントロール群のセレクション基準(P<0.008)→6つの研究では対象群をVTEで紹介も検査でNegative群としている。こちらは差がない。5つの研究ではnon-referred な参加者。Referred patientsをコントロールとして群を除くと2.8(2.2-3.7)<br>
・DVT+PEではRRが3.0(DVTのみでは1.5)
・エアートラベル(2.2 1.4-3.2)> 非飛行機旅行(1.4 1.0-2.1) 有意差は無し
・2時間の旅行時間が増すごとに18%DVTのリスクが上昇 (P=0.010), エアートラベルに限定すると2時間毎に26%増加。(P=0.005)
・4600flightに1回発生 
制限 
非均一性が他に有る可能性 
西欧諸国に限定
Remote bias
Publication bias


DVT について CHEST ガイドライン2008 要訳
日本のガイドラインは循環器学会より2004年に作成され学会より無料ダウンロード可能

1.1初期抗凝固
・SC LMWH(Grade 1A) IV UFH (Grade 1A) Monitored SC UFH (Grade 1A) fixed-dose SC UFH (Grade 1A) SC fondaparinux(商品名:アリクストラ):ATIIIに高親和性に結合し,ATIIIの抗第Xa因子活性を顕著に増強、日本の適応:静脈血栓塞栓症の発現リスクの高い,下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制
・臨床的に強く疑われる症例に対しては診断確定を待つ間、上記投与(Grade 1C)
・初期投与は上記を最低5日間、INRが24時間2.0を超えるまで(Grade 1C)
・VKAはLMWHと同時に初日に投与(遅らせてはいけない)(Grade 1A)

1.2 IV UFHを初期投与として選択した場合
①5000単位又は80U/kgをIV後 18U/kg/h 又は1300U/hを持続静注
Anti-Xa活性を0.3 to 0.7 IU/ml とする(Grade 1C)

1.3 SC UFHとした場合
①17500単位 又は250U/kg SC後 6時間で0.3 to0.7IU/ml(APTT1.5-2.5倍:日本と同様)となるようにする(Grade 1c)
②モニターしない場合は333U/kgとした後、250U/KG (Grade 1c)

1.4 LMWH を初期投与として選択した場合(日本保険適応外)
①外来(Grade 1c)又は入院(Grade 1A)において1日1回又は2回で投与
②入院した場合APTTのモニタリングの必要なし(Grade 1A)
③高度の腎不全と伴うDVTではUFHを推奨(Grade 2c)
外科療法
1.9カテーテルによる血栓溶解療法
①広範囲な近位DVT(14日以内、ADL良好、1年以上の生命予後)、出血素因が少ない人では熟練された施設においては症状、予後を改善するかもしれない(Grade 2B)
②熟練した施設においてはCDT単独に加え薬物機械的な血栓溶解療法がよいかもしれない(Grade 2C)
③CDTをした群でも抗凝固療法は同様に行う(Grade 1C)
1.10 全身性血栓溶解療法
①CDTが困難な施設においてはよいかもしれない(Grade 2C)
1.12手術によるThrombectomy
通常はCDTを優先(Grade 2C)。できない場合でいいかもしれない(Grade 2B)

1.13 下大静脈フィルター
①通常は行わない(Grade 1A)
②近位深部静脈血栓で抗凝固療法ができない場合(Grade 1C),この場合でも出血のリスクが収まれば行う(Grade 1c),








1.14 DVTにおける安静
可能であれば初期臥床に優先して早期離床が推奨(Grade 1A)
→現在5論文が発表。計1700人のStudy。PEの発生率は上昇させずに浮腫や疼痛等を早期に軽減

2.1 抗凝固療法の期間
①reversibleであれば3ヶ月間(Grade 1A)
②原因がはっきりしない例では最低3ヶ月間、3ヶ月後再評価。(Grade 1C)。近位深部静脈血栓で出血のリスクが無く、コンプライアンス良好例では長期を推奨(Grade 1A)
③2回目の原因不明例では長期投与(Grade 1A)。原因がはっきりしない例でも遠位深部静脈血栓では孤発例では終生より3か月でよい(Grade 2B:日本の学会とは異なる)
④担癌患者では初期3-6か月をLMWHで行い、VKA,LMVHを癌が治るまで行う
⑤常にRisk-benefit ratioにより期間を評価

2.2 抗凝固の強さ
①INR 2.5(2.0-3.0)(Grade 1A).
②通院が頻回にこれない場合はINR1.5-1.9(Grade 1A)

その他
① 無症候性に見つかった場合も症候性と同様に加療(Grade 1c)
② 症候性の近位DVTではAnkle pressure を30-40mmHgとして抗凝固療法開始後、可能な限り早期に着用(Grade 1A)
③ PTSに伴う高度の浮腫はIPC(Grade 2B)
④ 軽度の浮腫はストッキング(Grade 2C)
⑤ 創部ケアに抵抗性の静脈潰瘍ではIPC (Grade 2B)
⑥ PentoxifyllineもIPCに加えて推奨(Grade 2B)


肺塞栓

1.1初期凝固
SC LMWH(Grade 1A), IV UFH(Grade 1A), Monitered SC UFH (Grade 1A), fixed-dose SC UFH(Grade 1A) SC fondaparinux(Grade 1A)
以下全てDVTと同様

1.2 血栓溶解療法
①循環動態が不安定な患者では血栓溶解療法(Grade 1B)
②殆どのPEでは必要ない(Grade 1B)
③肺動脈カテーテル経由より末梢より投与(Grade 1B)
④Short infution(2時間)が好まれる
1.3カテーテルによる血栓除去
①通常は行わない(Grade 1c) Pulmonary embolectomyも血栓溶解療法ができない例に限る(Grade 2c)
1.4下大静脈フィルター
①通常は必要ない(Grade 1A)
②抗凝固ができない場合では適応(Grade 1C)

他は全てDVTと同様




慢性肺塞栓
INR 2.0-3.0で抗凝固(Grade 1c)
肺高血圧を伴っているような症例で設備があれば手術も適応(Grade 1B)
手術困難な肺高血圧の症例は専門施設へ紹介(Grade 2C)

SVT
LMWH(Grade 2B)を予防量又は中等量、UFHを中等量(Grade 2B)を最低4週間。
VKAは上記と5日間かぶっていれば4週間(Grade 2C)
NSAIDは用いない。(Grade 2B)

上肢DVT
下肢と同様
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