「原理講論」の誤謬と正解

原理読みの原理知らずたちへ

Wikipedia「蕩減」 ver.2021.11.18

2022年02月01日 | 資料

★ 「蕩減」の真意を知ることによって初めて「キリスト教統一」への道が始まる。

 

蕩減
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 

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蕩減とは、借金を全部帳消しにすること。借債を悉く免除してやること。remission

 

解説

原義

蕩減(タンガㇺ 、탕감

朝鮮起源の漢字語)借金を全部帳消しにすること。借債を悉く免除してやること。remission。[1][2] 「蕩」の字義は「すっかり無くする。『蕩尽/掃蕩』」[3]
韓国では一般に金融用語として「債務の減免」の意味で使われ[4]、頻繁にマスコミに登場する[5]。 また韓国語聖書で負債や罪の「ゆるし」の訳に用いられており[注 1]、韓国のキリスト教会の説教でも頻繁に用いられる[7]

「앞서 정부는 문 대통령 공약대로 1000만원 이하 장기 소액 연체자의 빚을 전액 탕감줬다.」
先に政府は、文大統領の公約通り、1000万ウォン以下の長期少額延滞者の借金を全額帳消しにした。

「박근혜 정부 때도 원금을 최대 90% 탕감해주는 등 여러 차례 빚 탕감 대책이 나왔지만. 」
朴槿恵政府も、元金を最大90%帳消しにするなど、複数回借金帳消し対策が出てきた。

「주님은 우리가 죄인이었을 때에, 하나님과 원수 되어서 용서 받을 자격과 능력이 없을 때에 그 크신 사랑으로 우리 믿는 자들의 죄를 탕감해 주셨고」
主は、私たちが罪人であったときに、神の怨讐(敵)になって赦される資格と能力がないときに、その大きな愛で私たち信じる者の罪を帳消しにしてくださった。


 朝鮮半島では歴史的に漢字教育に様々な変遷があった影響により、朝鮮起源の常識的な言葉であるが老若に関わらず知る層と知らない層に別れ、特に漢字の認知度は低い。[4][8][9]
 用法として、日本的表現では本来債権者が「蕩減(帳消しに)する」と言い、債務者は「蕩減(帳消しに)してもらう」と言うが、韓国では債務者も「蕩減する(탕감 하다)」と略して言う。例として、韓国ベストセラー小説「商道(상도)」(崔仁浩 著)の日本語版翻訳の際、文中、債務者が「탕감 할 수밖에 없었다(帳消しにするしかなかった)」[10]と書いてある所を、日本語版では「帳消しにしてもらうよりほかなかった」[11]校正されている[12]

 

統一教会用語(原理用語)

蕩減(とうげん)

 朝鮮起源の漢字語のため一般的に朝鮮半島以外で使われることはない。日本では統一教会(世界基督教統一神霊協会)[13]においてのみ教会用語(原理用語)として使われている。
統一教会の教義「統一原理[14][15]」の中核にあたる救済観を「蕩減復帰原理」[16]という。統一教会の教祖文鮮明が「蕩減」と言う時、その99%は略語で「蕩減復帰原理」「蕩減復帰」「蕩減条件」「蕩減条件を立てること」のいずれかの意味になる。原義で言うことは1%未満。[17]文鮮明教祖は「蕩減(原義)」と「蕩減復帰」の意味を次のように語っている。[18] 

「蕩減とは何であるかというと、百以下のものをもって百と同じに認めてくれることです。」1980年7月1日の説教「蕩減の歴史的基準」


「蕩減の本当の意味は何でしょうか。神は私達が負っている負債の総額に充当するために、その内の一定額を支払うことを求めておられます。しかし私達がその条件を満たすことにより、総額が返済されたという立場に立つのです。神は常に誰もが救いを受ける機会が得られるように(負債総額よりも)小さな条件を設定されています。」1981年2月10日の説教「蕩減復帰摂理歴史」

「蕩減復帰とは、小さな条件を通して大きなことを蕩減する(赦す)ことです。例をあげれば百人を赦してあげるために、善なる一人の人間が打たれることを代価として百人の罪が蕩減される(赦される)のです。人間百人の代表として一人を立て、彼が百人の代身として打たれることによって、百人が打たれることを赦され、悪なる立場から善の立場へ帰ってゆくのが蕩減復帰というのです。」1967年6月4日の説教「蕩減が行く道」

 文鮮明教祖より「統一原理」体系化の最終版「原理」の執筆を任された李相憲[19]は「蕩減」の意味について論文「統一民族史観」[20]の中で、新約聖書マタイによる福音書第18章21節~35節[21]に基づいて説明している。

「僕の主人はあわれに思って彼をゆるし、その負債を免じて⦅蕩減して⦆やった。」マタイによる福音書第18章27節
(그 종의 주인이 불쌍히 여겨 놓아 보내며 그 빚을 탕감蕩減⦆하여 주었다)

「イエス様は、人間が犯した罪は借金をすることと同じだとしばしば表現されています。例えばイエス様は王様から借りた一万タラントの借金を返す事が出来ないでいる僕の例を挙げています。王様は『もし一万タラントの借金を返すことが出来ないのであれば、お前と妻子と持ち物全部を売って返しなさい』と命じました。それらを全部売っても一万タラントにならないかも知れないが、それで一万タラントの借金と相殺してやるという意味です。これも蕩減を意味します。
 ところが僕がひれ伏して『必ず借金を返しますから、暫くお待ち下さい』と言って哀願しました。その姿を見て気の毒に思った王様は『お前の心掛けは殊勝だ。負債を免じてやるから帰りなさい』と言って彼を赦してやったのです。これもやはり蕩減なのです。

イエスの御言葉によって蕩減の意義が明らかにされたと思います。
第一に、蕩減とは、負債に関する概念であると同時に、罪に関する概念です。
第二に、蕩減とは、一定の条件を立てて、借金を減らすか相殺するのと同様に、罪を減らすか、なくしてもらうこと、罪を赦してもらうことを意味します。
第三に、蕩減には、必ず債務者と債権者、または罪人は神様に一定の条件を立てなければ蕩減(赦してもらうこと)を受けることが出来ないことを意味します。
第四に、蕩減(赦してもらうこと)は一定の条件を立てて、借金のない、あるいは罪を犯さない状態に戻ること、つまり復帰を意味します。」
— 月刊「ファミリー19935月号」李相憲著「統一民族史観」

 上記の通り文鮮明教祖、李相憲共に原義に則っており、またキリスト教の「赦し」の説明に頻繁に引用される新約聖書マタイによる福音書 18章21~35節 [22] [23] [24] [25] に基づいた説明がなされてあるため [26] 、既成神学との連続性が認められる。ただ異なるのは「条件」という言葉を使ったことである。[注 2]


 ところが文鮮明教祖より「統一原理」の体系化を最初に任された劉孝元の著書「原理講論」では教祖とは異なる定義がなされている。

「무엇이든지 그 본연의 위치와 상태 등을 잃어버리게 되었을 때, 그것들을 본래의 위치와 상태에로 복귀하려면 반드시 거기에 필요한 어떠한 조건을 세워야 한다. 이러한 조건을 세우는 것을 "'탕감"이라고 하는 것이다.」韓国語版[28]


「どのようなものであっても、その本来の位置と状態を失ったとき、それらを本来の位置と状態にまで復帰しようとすれば、必ずそこに、その必要を埋めるに足る何らかの条件を立てなければならない。このような条件を立てることを『蕩減』というのである。」日本語版[16]

「When someone has lost his original position or state, he must make some condition to be restored to it. The making of such conditions of restitution is called "indemnity".」英語版 [29]
— 緒論 ()蕩減復帰原理 (1)蕩減復帰[30]


 これを読んだ金東俊神田外語大学名誉教授は、韓国語版、日本語版、英語版いずれも「これは間違いです」と明言している。[31]
統一教会信者達は原理講論の影響で「蕩減とは償い、罪滅ぼし」と原義とは真逆に解釈する[32]。但し「蕩減」に「償い」の意味は全くない。また「蕩減」の「蕩」の字義を「放蕩/遊蕩」の「蕩」と間違って教えている[3][33]
 このように原理講論の定義が原義及び文鮮明教祖の定義と異なっている原因は、教会創立当初、創刊に関わった信者達にとって教祖の略語が判別し難く正確に理解されなかったためと思われる。[注 3]正確に理解していた記録があるのは李相憲のみ。[34]

 「原理講論」を見るとキリスト教用語や漢字語の初歩的な誤謬が散見され、著者劉孝元がそれらに無知であったことが判る。[注 4][注 5][8]更に劉孝元は「原理講論」及びその前作「原理解説」を執筆する際、元となった文鮮明教祖の著作「原理原本」の中の「蕩減」[38][注 6]が悉く略語であること[17]が見抜けず、校正することなく意訳して定義している。[注 7]

「하나님이 사랑하는 사람들이 惡한 者에게 죽게 하신것은 그들로 인하여 世上의 惡의 血를 맑히기 위하여 蕩減的立場으로 죽게 하신것이었다.」P.45

神が愛する人々を悪しき者のために死なせたのは、彼らによって世の悪の血を浄化するための蕩減蕩減条件の略)の立場として死んだのだった。

「예수 죽음으로 歷史的 罪를 蕩減하며 사탄으로 하여금 뜻 成事하는 것을 없애기 위함이다.」P.109

イエスの死によって、歴史的罪を蕩減蕩減復帰の略)し、サタンの意図が成就することをなくさせるためである。
— 鮮文大学校教本「原理原本」より


 そのため「蕩減」本来の意味であり、キリスト教が神の大いなる恵みとして最も重要視する「赦し」の概念が「原理講論」からは完全になくなり、それとは逆の罪人による「償い」の概念のみになった。後に文鮮明教祖は「蕩減復帰原理」に誤謬があることを認めたが改訂は一切許すことはなかった。

 英語版は翻訳者の崔元福が韓国語版原理講論に従って、本来「remission(赦し)」[1][2]と訳されるべきを、「償い」と訳そうとして「indemnity(賠償金)」[39]と、従来のキリスト教用語とは異なる用語で訳し[注 8]、世界に広められることとなった。 そのためキリスト教会側から、本来キリスト教が説いて来たキリストの贖罪の恵み、神の無条件の愛と憐れみを否定し、罪人自身に賠償を強要するものだという批判を招いている[42][43]
 統一教会では無原罪で生まれた再臨のキリストとされる文鮮明(今は否定され妻韓鶴子[44])が生誕した韓国を最も迫害したとする日本が支払うべき「賠償金(indemnity)」の意味で使われることが多い。[45]

 文鮮明教祖は「原理講論」初版(1966年5月1日)から18年以上経った1984年7月20日、米国コネチカット州ダンベリー刑務所に収監され、所内で「原理講論」を通読した際、「蕩減復帰原理」の部分にいくつかの重要な誤謬や欠如があるとして、1985年8月20日出監後にそのことを説教している[46]。その頃から文鮮明教祖は「私の最後の仕事は『原理』を書くことだ」と教典の最終版の著述を表明し、それを李相憲に任せていたが未刊に終わった。

 

脚注

注釈

  1. ^聖書に記載されている箇所[6] ネヘミヤ10/31、マタイ18/27、マタイ18/32、ルカ7/42、ルカ7/43
  2. ^一般にキリスト教会は「神の赦し」に「条件」があると解釈することを否定する。[27]それに対し統一教会は「神の赦し」には「条件(蕩減条件)」があり、それが「人間の責任分担」と説く。[18]
  3. ^文鮮明教祖が「蕩減」と言う時、99%は略語で意味は5通りある。①「蕩減復帰」②「蕩減条件を立てること」が9割以上、③「蕩減条件」④「蕩減復帰原理」が数%、⑤原義は1%未満。(光言社版・文鮮明著「罪と蕩減復帰」に於ける概算比率)[17]
  4. ^劉孝元のキリスト教歴は公式サイト「劉孝元先生の苦悩と探究の道」[35]に「ラテン語を8カ月で習得してカトリック聖書を読んだ」とあるのみ。
  5. ^「蕩減 remission」「体恤 compassion」「受肉 incarnation」の誤謬からキリスト教用語、漢字語の基礎知識がないことが判る。[36][37]
  6. ^「原理原本」には「蕩減の定義」「人間の責任分担」の記載はない。
  7. ^「蕩減条件を立てること」(直訳すると『赦しの条件を満たすこと』)を「償い」と意訳し「蕩減」の定義とした。
  8. ^本来キリスト教では「償い」を英訳する場合、atonement, expiation, reparation, satisfaction を使う(「現代カトリック事典」エンデルレ書店)[40]。「indemnity(賠償金)」は保険用語[41]

出典

  1. ab 精解「韓日辞典」高麗書林
  2. ab remissionの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書
  3. ab 小学館 大辞泉
  4. ab 「蕩減」の意味を金東俊教授に聞く
  5. ^「蕩減」韓国一般の使い方co.kr "탕감"
  6. ^다국어 성경 Holy-Bible "탕감"
  7. ^「기독교 탕감」
  8. ab 豊田有恒著「韓国が漢字を復活できない理由」P3、8~11行目
  9. ^呉善華著「漢字廃止で韓国に何が起きたか」(PHP研究所)
  10. ^韓国語版「商道」第一巻120・11行目(崔仁浩著 全5巻)
  11. ^日本語版「商道」<上> P.19・11行目(崔仁浩著 全2巻)
  12. ^「蕩減」韓国の相反する2つの使い方
  13. ^統一教会(世界基督教統一神霊協会)
  14. ^統一原理
  15. ^原理講論
  16. ab緒論 (一)蕩減復帰原理
  17. abc 「蕩減」には複数の意味がある(教祖様のスラング)
  18. ab「蕩減」文鮮明師による定義
  19. ^統一思想研究院院長、「勝共論」「統一思想」著者
  20. ^李相憲著「統一民族史観」月刊「ファミリー1993年5月号」
  21. ^「仲間を赦さない家来」のたとえ
  22. ^탕감(蕩減)의 비유에 대하여 - 뉴스앤조이
  23. ^「蕩減(マタイ伝18章21~35節)の解釈」カトリック
  24. ^「蕩減(マタイ伝18章21~35節)の解釈」プロテスタント
  25. ^「蕩減(マタイ伝18章21~35節)の解釈」アーミッシュ
  26. ^「蕩減(マタイ伝18章21~35節)の解釈」統一教会
  27. ^中川健一著「<聖書流>生き方指南」124 2~6行)
  28. ^원리강론탕감복귀원리
  29. ^Divine Principle
  30. ^世界平和統一家庭連合 原理講論 緒論
  31. ^「蕩減」金東俊教授が原理講論を訳す
  32. ^林恵子著「統一原理への架け橋」(広和)
  33. ^原理講義の間違い例「蕩減」
  34. ^李相憲著「統一民族史観」(月刊「ファミリー1993年5月号」)
  35. ^劉孝元先生の苦悩と探究の道
  36. ^キリスト教用語の誤用(1)
  37. ^何故、初歩的なキリスト教用語の間違いが多いか?
  38. ^「原理原本」の中の「蕩減」
  39. ^プログレッシブ英和中辞典(小学館)「indemnity」の「2 賠償金,補償金;損害賠償」
  40. ^資料「償い」のキリスト教的英訳
  41. ^「洗脳」「マインドコントロール」の虚構を暴く
  42. ^Criticism of the Unification Church concept of indemnity
  43. ^"Indemnity is a Moon Trap"
  44. ^真のお母様の「無原罪性」―「血統転換、私は母胎からなのです」の意味について | 真の父母様宣布文サイト
  45. ^藤田庄市著「日本における統一教会の活動とその問題点」134
  46. ^「原理講論に書かれていない」と言われた御言葉(1)

関連項目

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