月刊パントマイムファン編集部電子支局

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アーティストリレー日記(44)しいなまんさん

2014-09-10 23:47:18 | アーティストリレー日記
今号では、社会人パントマイマーで舞台を中心に活躍する、しいなまんさんの日記をお届けします。

8月◯日(日曜日)

今日は仕事も休みだ。
夏休み中の息子とプールに行く約束をしている。

私はパントマイマーを自称しているが、堅気の仕事で生計を立てている。
しかもその仕事は忙しく、残業も多く、夜勤や休日出勤もあったりして、息子と休みを共有できる時間はとても貴重なのだ。

ところが、夏休みも大詰めを迎えており、息子は母親から宿題を指定された所まで済ませるよう命ぜられていて、朝から取り組んでいた。仕方なく終わるのを待つことにした。
...待っていたらお昼を過ぎてしまった。

せっかくの休みなのに、大量の宿題で遊ぶこともできないのはどうなんだろう。フランスやスウェーデンでは宿題を禁止する法律があるそうではないか。何でも宿題は人権に繋がる問題

なのだそうだ。それに引き換え、日本人は人権意識が低いと、常々思う。

このように小学校の時期から組織のためにプライベートの時間を犠牲にするという習慣が叩き込まれ、そうでない人は落ちこぼれの烙印を押され、組織に従順な人間が製造され、社会に送り出される。そうして、私も身を置いている、今の日本が出来上がっているのだ。

ここのところ特定秘密保護法や集団的自衛権を始めとした安倍晋三の暴走が激しく、私は大変な危機感を抱いている。なぜこのような馬鹿げたことが通ってしまうのだろうか。その理由のひとつに、お上に従順な日本人が大量生産されてきたことがあるのではないだろうか。お上に逆らうことは悪いことだ、あるいは無駄だ、と思い込まされ、自ら考えることを放棄して諦めている日本人が多いのではないだろうか。

そうか、小学校の宿題は、大勢の犠牲の上に一握りの人が優遇される格差社会、さらに独裁者や戦争へと繋がっていたのだな。たいへんだ、すぐに止めさせねば。

そう思いながら宿題をしている息子を観察していると、計算ドリル1ページに1時間以上もかかっている。そのドリルには標準的な作業時間として1ページ12分と書いてある。どうみてもかかり過ぎである。

そんなことじゃだめだ、しっかりやりなさい。

8月○日(木曜日)

今日はマイムの稽古の日。
毎週楽しみなハトリミームラボの日である。

以前より私達は夫婦で通っていたが、子供ができて物心が付いてくると息子を連れて参加するようになった。
もともと夫婦が行きたいから息子を連れて行ってたはずだが、いつの間にか当の息子が行きたがり、どちらが連れて行かれているのか分からなくなっている。

特に彼はエチュードのような作品作りが大好きで、嬉々として披露する。それが意外と受けたりして、益々調子に乗っている。相手をしてくれる大人たちの包容力が並じゃないのだ。ありがたい。
その後は当然飲み会なのだが、そこでも毎回一番率先して行きたがるのは息子だ。

そこで出会う大人たちは、世間一般の大人とは異なり、彼にとっても面白いのだろう。そもそもパントマイムをやろうなんて人は、組織からはみ出したような人がほとんどで、でも人としての魅力は抜群だ。真剣に馬鹿なことを考えている大人もいるのだ、という環境がどれだけ凄いことか、彼は理解する前にすっかり馴染んでいる。

こんな環境に置くことによって、将来息子にどのような影響が出るのかは分からない。
でも、ひたすら組織に服従するよう教育され、その他の道があるなんて知らずに大人になってしまった私たち夫婦よりは、はるかに良いのではないかと思っている。

そうして今日も宿題ができなかった。

しいなまん


コメント
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