GAOの隠れ処「ムンダナ」

都内のアマチュアオーケストラでVnとVaを弾いているGAOの、音楽を中心とした関心事についてのあれこれ

長谷川陽子・三舩優子デュオ・リサイタル

2010-02-27 23:19:03 | 音楽日記
今日(2/27)は、久しぶりに室内楽のコンサートを聴いた。
松戸市の“森のホール21”で開催された「長谷川陽子・三舩優子デュオ・リサイタル」だ。
ピアニストの三舩優子さんは、来る6月6日(日)の葛飾フィル第39回定期演奏会で、
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のソリストをお願いしている方である。
かなり前にどこかのプロオケの定期でピアノ協奏曲を聴いたことがあった記憶があるが、
この機会に、もう一度しっかり生演奏を聴いて、そして挨拶しておくことが目的であった。
勿論、長谷川陽子さんのチェロの生演奏も、以前からぜひとも聴いてみたいと思っていた。



■■■ 長谷川陽子・三舩優子 デュオ・リサイタル ■■■
 日時:2010年2月27日(土)14:00開演
 場所:森のホール21(松戸)小ホール
 出演:長谷川陽子(Vc)、三舩優子(Pf)
 曲目:ショパン/序奏と華麗なるポロネーズOp.3
     ショパン/チェロ・ソナタト短調Op.65
     ショパン/スケルツォ第2番変ロ短調Op.31
     モーツァルト(ヴォドロス編)/トルコ行進曲
     カサド/無伴奏チェロ組曲
     ブロッホ/ニーグン
     カステルヌオーヴォ=テデスコ/フィガロ
     ≪encore≫
     マスネ/タイスの瞑想曲


今日のコンサートは主催者側の要請もあり、長谷川さんと三舩さんのおしゃべりを交えながら
時折、客席の笑いを誘うようなリラックした雰囲気で楽しいものだった。

プログラム前半は、ショパン・イヤーにちなんだショパンの2曲。
チェロ・ソナタはあまり演奏される機会が少ないが、ピアノの詩人と呼ばれた作曲家が
チェロのためにこんなに美しくて素敵な曲を残していたのか!とハッとさせられる曲。
長谷川陽子さんのチェロは、音の遠近感と音色の様々な変化で細かいニュアンスを丁寧に描き、
この曲の魅力を余す所なく我々に伝えてくれるものだった。
彼女の生の演奏を聴くのは今日が初めてであったが、その音色の多彩さや音の奥行きの深さ、
音楽のスケールの大きさと豊かな歌心に、一聴して魅了されてしまった。
三舩優子さんのピアノは、これまた好サポートの域を超えると言って良い素晴らしい演奏で、
チェロとの掛け合いがなんともいえず聴きものであった。
音楽のキャラクターを自在に演奏し楽しんでいる様は、その表情からも十分にうかがわれ、
6月には彼女と共演できるのかと思うと嬉しくてワクワクしてくるものだった。

後半は、2人がそれぞれにソロ演奏を披露し、再びデュエットで締めくくるという流れ。
先発の三舩優子さんはショパンのスケルツォとヴォドロスという人の編曲したトルコ行進曲。

スケルツォ第2番の冒頭の部分がそう聞こえることから、邦人演奏家の間ではこの曲のことを
「トコロテン(心太)」と呼んでいるという面白い話を披露されてからの演奏だったが、
なるほど、そういう耳で聴くと確かにそう聞こえる。
・・・っていうか、そんな話聴いたら、これからはそのようにしか聴けなくなったりして・・・

まあ、そんな違った角度からの楽しみ方はあるとしても、三舩さんの演奏はスケールが大きく、
トコロテンどころの音楽ではない。
終演後、うかがったお話では少しミスもあったとのことだが、そんなことは気にもならない
スケール感と推進力(躍動感?)がしっかり音楽を支えているって感じで聴き惚れてしまった。
その上、よくコントロールされたタッチで微妙なニュアンスも見事に紡ぎだされて心地よい。
・・・そのこと自体を感じさせないから、コントロールされたなんて言うのも失礼か・・・

ヴォドロスの編曲によるモーツァルトのトルコ行進は大変ユニークな曲だ。
原曲の3倍くらいに音が増えた変奏曲の風で、多分、難しい曲なんだろうなと思う。
三舩さんは、初めてこの編曲を聴いた時に大変衝撃を受け、自らも演奏したいと思ったそうで、
今日の演奏からは、この曲に対する演奏家の愛情と楽しさが十分に伝わってくるものだった。

長谷川陽子さんのソロは、カサドの無伴奏組曲である。
この曲はまさにスペイン!というくらいにスペインが堪能できる私の大好きな曲である。
長谷川さんが「今日は体育会系のプログラムになってしまった」と話されていたように、
この曲も難曲だが、彼女の演奏は難曲だということを感じさせない情熱的な演奏だった。

プログラム最後の曲も難曲揃いだったが、長谷川さんの集中と精神力はそういうものを
超越していて、演奏とともに聞こえてくる彼女の呼吸だけで彼女の世界に惹き込まれてしまう。
彼女が20年程前にファーストアルバムを出した頃、FM放送で流れたその演奏を聴いた時、
なんだか物凄いチェリストが出てきたなと感じたものだが、生演奏を初めて聴いた今日、
その時の印象が確かなものだったということを改めて実感し、彼女に巨匠を感じた。
それから、チェロという楽器がこんなにも大きな世界を創り上げるものなのだということに
少なからず驚きも覚えた。勿論、彼女をしての世界であることは言うまでもないが・・・。

アンコールの“タイスの瞑想曲”は、なんとなく鼻歌を歌うようなそれだけに情緒豊かな演奏。
私には、非日常的世界から世俗的世界に戻るための魔法を解くおまじないのようでもあった。


近々葛飾フィルでお世話になる三舩優子さん。
彼女の出演コンサートが、我が家から1時間程度の松戸であるということをたまたま知った。
そんなら、挨拶も兼ねてちょっくら聴きに行ってみようか。
正直なところ、そんなことをふと思ったことが今日のコンサートを聴くきっかけだったのだが、
こんな素晴らしいコンサートが聴けて本当にラッキーだった。
そして、一度に長谷川陽子さんと三舩優子さんの二人もの音楽家のとりこになってしまった。
やっぱり、音楽は演奏会に足を運んで聴くもんだな。




終演後には、昨年リリースされた三舩優子さんのCD「バーバー/ピアノ作品集」を買い求め、
「GAOさん!」なんてサインをもらって、握手までしてもらっちゃうのであった。
このCD、「レコード芸術」誌で特選盤に選ばれるなど、なかな評価が高いそうだ。

いい歳したおっさんが、アイドルの握手会よろしくサインの列に並ぶのは恥ずかしかったが、
その際、葛飾フィルの演奏会よろしくとかなんとか色々とお話をさせていただくなど、
しっかりと副団長としての職責を果たすことができた。
マネージャーさんとも打ち合わせができて、松戸まで出かけたかいがあったというものだ。


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フィレンツェのお友だち

2010-02-22 23:02:18 | 音楽日記
去る2/7、娘のヴァイオリンのクレモナ君が我が家にやってきた
そして昨日(2/21)、娘のではないヴァイオリンがフィレンツェからやってきた。

娘のクレモナ君は、昨年生まれたばかりのまだまだ赤ちゃんなのだが、
今日から仲間となったフィレンツェ君は、既に成人式も済んでいる立派な大人だ。
クレモナ君と違って色々な経験を積んできているから、我々の要求にもよく反応する。



女房のヴァイオリンはトリノ出身。
トリノ君は、すでに100歳を越えているものの、ここ数年元気が出てきており、
若者達と一緒に生活することでさらに若返って活き活きとしてきそうな予感だ。
色々と達観しているところもあり、それゆえなかなか一筋縄ではいかないが、
さすが、年の功と言わんばかりの思いもよらない煌めきをみせることがある。

クレモナ君もフィレンツェ君も、トリノ君のそんな物凄いところを
たまにはお手本にしながら、それぞれの長所をどんどん伸ばして欲しいものだ。

私のヴァイオリンとヴィオラは西ドイツ出身。西ドイツのどこだかはわからない。
2人の西ドイツ君は、イタリアの名門出身の3人と違って庶民派である。
車なら、フェラーリやランボルギーニに対してフォルクスワーゲンって感じかな。
でも、西ドイツ(今はそんな国ないが・・・)君達の持ち味は何てったってその勤勉さだ。
長い下積み生活と酸いも甘いも知り尽くして得たその感性には捨て難い魅力がある。

お国柄もお家柄も違う西ドイツ君達だけれど、彼らもまだまだ将来のある身だ。
クレモナ君とフィレンツェ君は、西ドイツ君達からも学ぶものがあるかも知れないね。


今年になって我が家にはクレモナ君がやってきて、今日また、フィレンツェ君もやってきた。
みんなこれから家族としてつきあっていくわけだから、仲良く互いに切磋琢磨し、
それぞれの良いところをどんどん伸ばしてしっかり成長して欲しいと願うばかり。



あっ、そうそう、大したことじゃないんだけれど、この先、さらに仲間が増えることは、
まずないだろうと思うので、そこんところはよくよく頭に入れておいてくださいな。

よろしくね! 女房殿。



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有元利夫展 ~素描・立体を中心に~

2010-02-21 22:52:02 | 絵画など
女房も私も、久しぶりに何の予定もない日曜日だった今日(2/21)。
先日購入した娘のヴァイオリンの支払いについて、楽器屋さんに相談に行った帰途、
 ・・・実は、ヴァイオリンは、娘のだけで終わらなかったのだが、
   その話はまたの機会に。いずれにしても大変なこことになったのは間違いない・・・
千代田区三番町にある小川美術館の“有元利夫展”に寄り道してみた。


小川美術館には3年前に一度だけ足を運んだが、この美術館の造り自体も一つの芸術作品で、
有元の作品とこの美術館を、一度、女房にも見せてやりたいと思っていた。
丁度、先日、小川美術館から有元利夫展の案内をいただいたので、行ってみようということに。
さらに、女房と私の話を聞いていた娘が「なんか面白そうだから」とついて来た。





有元利夫氏の作品は、イタリアのフレスコ画を思わせる作風にどこか東洋的な精神を感じる
なんとも不思議な絵画で、静寂な空間に一陣の風が舞っているかのような動きがある。
その独特の世界は観る者を魅了し、私も初めて彼の絵を観た時からその虜になった1人である。

いつも思うが、この人の絵画は日常を超越した遥か彼方にある普遍的な何かを感じさせる。
描かれる人物が男性とも女性ともつかない中性的な感じだからであろうか。
その人物達の視線は、我々のほうを向きながら具体的な何かを見ているようにはなく、
どことなく不安で頼りない感じがする。
それでいて、実体はつかめないけれども確実に存在する何かがあるかのようでもある。

「この人の絵って、なんか彫刻みたいな感じ」というのが娘の感想。
娘のいう彫刻とは、ミケランジェロのダビデ像に代表されるルネサンス期の彫刻を
イメージしているようだが、なるほど、ルネサンス期の彫刻やフレスコ画にみられる顔が、
今日のこの素描展にそのまま移ってきたような感じだ。
小学5年生の娘には、これらの素描がどう映っているのだろう。


小川美術館での有元利夫展鑑賞は、1時間程度のほんのひと時だったが、
異次元に踏み込んで時間がとまったような瞬間だった。
自分の中の色々な事柄がリセットされたような気分。


◆◆ 有元利夫展 ~素描・立体を中心に~ ◆◆
 ○会  場 : 小川美術館《URL:www.ogawa-museum.jp
         千代田区三番町6-2 三番町彌生館1F (MAP
          (TEL:03-3263-3022)
 ○会  期 : 2010年2月21日(日)~2月28日(日) ※会期中無休
 ○時  間 : 11:00~17:00(入場は16:30まで)
 ○入場料 : 無料




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三日遅れの・・・

2010-02-17 23:55:22 | 日記
今日(2/17)、帰宅したら、女房がこれをくれた。



実は、本番(つまりは2/14)用に準備していたものがあったらしい。

が、女房と娘から、息子と私へと、ひと箱にまとめていたため、
留守だった私に先立って、息子だけが半分口にしたのをいいことに、
私がその存在に気づかぬうちに娘が残り全部をたいらげてしまったそうな。

「お父さんは、きっと私にくれるはずだから・・・」と現金な娘である。

まあ、言われてみれば、確かにそんな展開にはなるのだろうし、
チョコレートが食べれないからと駄々をこねるつもりなど毛頭なかったが、
昨晩、そういう話を女房に聞かされて、わざとゴネてみた。

そしたら、今日、夕飯の買い物ついでに用意してくれたらしい。

「なんか、そっちのほうが美味しそうじゃん?」と
一緒に買い物について行った娘は、抜け目ない一言を発したそうだ。

だが、今回は無事に私のもとに。
ふっふっふっ、娘よ残念だったな・・・



早速、コーヒーを入れてお茶の時間に。
今日は今日中に帰宅したので、少しのんびり女房と話をした。
最近、女房の音楽室の生徒さんたちにいろいろと出来事があり、
そんな話が間断なく展開していく。

「ねえ、早く食べたら?」話が一段落した女房曰く。
「ああ、このチョコね。」と気がつく私。

 ・・・と、ふと思う。
「ホントは、自分が食べたかっただけじゃない?」


「えっ?



・・・やっぱ、そうかい・・・    




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コバケンとその仲間たちオケ 2010 in いわき

2010-02-14 23:48:49 | 音楽日記
今日(2/14)は、“うつくしま コバケンとその仲間たちオーケストラ 2010 in いわき”公演の、
いよいよ本番その日である。
朝から雲ひとつない快晴で、演奏会の大成功が既に約束されているかのようである。

昨夜は、宿で同じ部屋のメンバーと軽く飲みながら音楽談義を楽しんでいたのだが、
話しながらいつの間にかウトウトして寝入ってしまい、11時前には就寝したので、
今朝はわりと早起きして、7時前から朝風呂で身体をシャキンとさせた。
さあ、気合入れていくゾ!




演奏会場となる“いわき芸術文化交流館アリオス”は、老朽化した平市民会館の建て替えを機に、
全く新しいコンセプトで開発、建設され、昨年5月にオープンしたばかりの新しいホールだ。
この巨大な建物は、市内でも結構目立つ建物で、写真は、楽屋口や搬入口などがある
施設のいわば裏手に当たる方向(東側)から撮影したもの。



アリオス大ホールの内部は、天井が高く、客席も4Fまであってゴージャスな感じ。
1F客席の通路が後方から舞台に向けて蛇行しているのがユニークだ。
写真ではわかり難いかもしれないが、1F中央部分に車椅子席のスペースが確保されており、
このホールの建設理念でもある「ノーマライぜーション」社会の実現を象徴している。

このホールの建設に当たっては、マエストロ“コバケン”氏も様々な活動をなさったようで、
昨年の竣工に到るまでの感慨めいた感想を、リハーサルの合間にも度々言及されていた。

たまたまこのオーケストラのメンバーになり、今回の企画に参加できたのでここにいるわけだが、
このような立派なホールで演奏させてもらえて、本当に贅沢なことだとしみじみ実感する。


さて、朝9時半にはホール入りしたものの、ピアノの調律のためステージはまだ使えない。
リハーサル開始は10時半なので、それまで、ホール周辺の市街地を散策してみた。
今、毎日10キロは歩くことを自分に課しているのだが、一昨日と昨日はほとんど歩いていない。
40~50分くらいあれば、5キロくらい稼げるだろう。
いわき市の市街地は初めて訪ねたが、私好みののんびりして落着いた雰囲気の街だった。
東京の我が家の近所に較べると人もまばらで少ないが、このくらいのほうが良いなと思う。




■■ うつくしま コバケンとその仲間たちオーケストラ ■■
          ~ 2010 in いわき ~
日時:2010年2月14日(日)14:00開演
場所:いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
指揮:小林研一郎
独奏:瀬明日香(Vn)、友野龍士(太鼓)、片岡亮太(太鼓)、
    池田理代子(Sp)、村田孝高(Br)、佐々木純一(Tp)
演奏:コバケンとその仲間たちオーケストラ
    常磐湯けむり太鼓
    福島県立磐城高等学校吹奏楽部
    福島県立平商業高等学校吹奏楽部
曲目:ヴェルディ/歌劇「アイーダ」~“凱旋の行進曲”
    イギリス民謡/ダニー・ボーイ
    サラサーテ/チゴイネルワイゼン
    ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界」~第4楽章
    小林研一郎/パッサカリア~「夏祭り」
    シベリウス/交響詩「フィンランディア」
    プッチーニ/歌劇「ジャンニ・スキッキ」~“私のお父さん”
    新井満/千の風になって
    プッチーニ/歌劇「トゥーランドット」~“誰も寝てはならぬ”
    チャイコフスキー/荘厳序曲「1812年」



午前中のリハーサルは、太鼓やブラスバンドとの合わせものの練習を中心に足早に進んだ。
というより、あまり時間がないからマエストロご自身がまいてまいてという感じだった。
時間がないないと言いながら、常磐湯けむり太鼓の皆さんや吹奏楽部の高校生達に対しては、
ステージへの入退場のタイミングや自分達の配置の確認からお客様への挨拶の仕方まで、
かなり厳しくそして丁寧にご指導されるマエストロ“コバケン”。

このマエストロ自らの細やかなご指導は、このオケの公演ではいつものことなのだが、
このことでいつも私は頭の下がる思いがするのである。
「はい、挨拶してーっ!」とコバケン先生が大声で号令をかけると、
舞台前面や側面に展開していた高校生達が一斉に客席に向かって礼をする。
が、大抵の場合、ここでダメ出しとなる。
「ダメーっ!!そんなの挨拶じゃないよっ!お辞儀じゃないっ!」とお叱りを受ける。
「頭を下げたら、今日、ここで演奏させていただいてありがとう、聴いて下さってありがとう、
皆さんに出会えてありがとう。そう思って心から感謝して、それから頭を上げる!!」
と、馬鹿丁寧なくらいに全てのことに感謝することの大切さを若者達に伝えるのである。

たかが演奏後のお辞儀ではないか。
ということもできるが、演奏が表現であるならば、挨拶もまた表現だと思うのだ。
高校生の頃の私は、やや内向的で人見知りをして人と話すのが苦手なタイプだったので、
人と挨拶するときも、挨拶したのだかしないのだか、声を出したのだか出してないのだか、
何だかよくわからない態度でしか自分を表すことができない若者だった。
この歳になって、同じ年頃の若者をみているとやはりそういう不器用な若者が多い。
自分の経験を省みて思うに何だかもったいない。不器用で終わらせたくない。
それが、そういう年頃の一つの特徴だともいえ、それを理解しながら受止めることも大事だが、
そこから一歩で踏み出して自分の気持ちを表現するということを後押ししてやることも大事。

実は、コバケン先生は挨拶で感謝の気持ちを伝えることが“心を動かす贈り物”になるのだと
お考えになっていて、そういうことを色々な機会に多くの人に伝えたいのではないか。

こんな形で人への感謝の気持ちを表現することを若者達に伝えようとするコバケン先生は凄い!
そして、素直にしっかりしたお辞儀を、お礼をする高校生達も偉いっ!
そんな些細なことで、私はリハーサル中に目頭が熱くなって、ここに居れてよかったと思う。
大人の我々も、そういう素直さや感謝の気持ちを見習いたいと思うのだ。


で、リハーサルが終わって、お昼をとって、開場となって、いよいよ本番。
こちらは、とにかく一曲ごとにコバケン・マジックが炸裂するものだから、
これまた、その都度、満員の客席が割れんばかりの拍手喝采となるのであった。

『夏祭り』の常磐湯けむり太鼓と友野、片岡の両和太鼓ソリストによるアドリブ演奏は、
舞台上の我々までがそのスリリングな展開に刺激、触発されてまさに祭りのノリとなった。

『チゴイネルワイゼン』の瀬明日香さんも、弾くたび違う表情が展開するオケとの対話で、
客席の集中を一挙に高めて静寂から興奮へと昇華させてしまった。
その上、またしてもこの難曲を演奏しながら客席を一回りする大サービスでブラボーの嵐。

池田理代子さんと村田孝高さんの歌も、マエストロ“コバケン”のピアノ伴奏という
この上もないサポートを得て、この空間を共有する皆の心に沁み入るものだった。

地元高校生達をバンダに迎えた『アイーダ』と『1812年』は、ストレートな若さが力となって、
まさに上も下も前も後ろもないような、調和と響きの大伽藍の世界が創造されたのである。

プログラム最後の『1812年』のクライマックスの祝砲は、止むことを知らない拍手喝采の渦と
客席の最上階にまでいたるスタンディングオベーションの大津波をひき起こし、
舞台の堤防をも呑み込んだ歓喜の渦は、音楽ホールが、聴衆と演奏者の心の核融合の場であり、
一つの無限な宇宙空間であることを現実たらしめたのであった。

・・・う~ん、ここまでくると、やや筆が走り過ぎたと言うべきか。
  まあ、でも、そんな音楽評論家宇野功芳的な表現になってしまう演奏会だった。・・・





大盛況だった今回の演奏会では、聴衆と演奏者がより身近で等身大の交流できる場もあった。
開場から開演までの時間と、休憩時間の間に開場ロビーで行ったロビーコンサートである。
開演前にはバッハのブランデンブルグ協奏曲第3番を演奏してお客様をお迎えし、
休憩中にはモーツァルトのディベルティメントK.138を聴いてリラックスしていただいた。

演奏後には、普段弦楽器に触れる機会のない子供達が集まってきて楽器に手を触れてみたり、
「これヴァイオリンじゃないの?」、「これはヴィオラって言って、ちょっと大きいでしょ?」
なんて会話が展開したりして、なかなか微笑ましいひと時だった。
私はお客様とともに演奏を聴き、この微笑ましい様子をながめていただけだが、
こんなちょっとした触れ合いの瞬間を目の当たりにするだけで幸せになれる。
演奏した皆様お疲れさまでした!



舞台袖に集合したヴィオラパート総勢11人。
世界を舞台に活躍しているプロの演奏家から私のようなアマチュアまでその境遇は様々。
このオケに参加し始めた頃は、とにかく足を引っ張らないようにとばかり考えていたが、
今は、プロのメンバーから演奏に対する真摯な姿勢やテクニックを盗み取るよう心掛け、
その場でしか創り得ない音楽をどれだけ増幅できるかということに関心の重きをおいている。
・・・そんなの当たり前でしょって言われると返す言葉もないのだが・・・

昨日のリハーサルでは、曲ごとにくじ引きでプルトをシャッフルして練習したので、
前に行ったり後ろに行ったり、プルトも色々な人と組むことができて勉強になった。
これが、ヴィオラのパートとしての安定感を増幅させたことは間違いない。
特に、パート全体、オケ全体の音をよく聴こうとする連帯感が得られたのは大きな収穫だ。
その成果が本番でも発揮されたと感じたのは私だけではないだろう。


色々なことを感じた今回の公演だが、いつもと違うのは女房や子供達が一緒ではなかったこと。
今回は女房がどうしても外せない用事のために参加できなかったのだが、
こういう現場を子供達に機会ある毎に見せておきたいということも含めて、
次の機会には、また、家族全員での参加ができると良いなと思うのであった。



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コバケンとその仲間たちオケ 2010 in いわき(前日公開リハ)

2010-02-13 23:36:35 | 音楽日記
明日は2月14日の“聖バレンタインデー”。
この日に向けて、街中のお菓子屋さんがチョコ一色に染まっている。

が、ここ福島県いわき市での我々は、そういう世の中の浮かれた気分とは一線を画していた。
というのも、“うつくしま コバケンとその仲間たちオーケストラ 2010 in いわき”なる演奏会が、
明日、この“いわき”の地で開催されるからである。
・・・やや大げさなものいいかな?・・・

“いわき”といえば、日本を代表し、このオーケストラの名前にもなっている指揮者
“コバケン”こと小林研一郎氏の出身地なのである。

今日(2/13)、明日の演奏会に向けたリハーサルの間やその前後で“聖地(生地?)”なる言葉を、
我々は何度耳にしたであろうか。
コバケン先生をめぐる、このオケの内外の関係者の感慨ぶりが伝わってくる一日である。



昨日、今日、そして明日と、我々はこのホールで丸三日間もの間十分なリハーサルができ、
明日の本番を迎えるのである。
プロのオーケストラでも、本番を迎えるホールで三日もリハができるなんてそうそうないが、
“コバケンとその仲間たちオーケストラ”がこれほどまでに恵まれた環境で練習できるのは、
このコンサートの準備をしてきた、いわきの実行委員会の方々の並々ならぬ想いの賜物である。

このオケで活動していて、いつも申し訳ないくらいに有難く感じるのは、
練習場所の確保一つにしても、思いがけないくらい多くの方々の熱意と努力があって実現し、
そういった方々の献身の上で、ようやく我々の活動が可能となっていることである。
東京都内での練習や地方公演でのリハーサルなど、我々は用意された場所で何の心配もせずに
演奏に没頭できるわけだが、それは決して当たり前にある環境ではないということを胆に銘じ、
多くの献身とエネルギーによってようやく実現された特別な環境であることに感謝したい。
・・・私のようにアマチュアで参加している者は、特に!だ・・・



ここ数回、“コバケンとその仲間たちオーケストラ”地方公演の前日リハーサルでは、
既に定着してきた感のある、コンミス瀬明日香さんによるヴァイオリン分奏。

今日まで比較的練習機会の少なかったドヴォルザークの新世界交響曲の第4楽章を丁寧に練習。
有名な曲でもあり、ここにいるメンバーは、誰もが何度か弾いたことがある。
それだけに、昨日の練習ではやや緊張感を欠いた手垢にまみれた演奏となっていた。
明日香さんの分奏は、先入観や慣れを一度ゼロクリアし、白い気持ちでアプローチするもの。

それぞれのメンバーが、それは真摯に演奏してはいるのだが、音楽のベクトルが違う。
ところが、この音楽のベクトルが収束すると、おそろしく拡がりをもった響きに生まれ変わる。
その瞬間、ベクトルを感じていた音楽が、場というか空間というか、別の性質に変容する。
そういう変化がこのヴァイオリン分奏で着実に生まれていくから面白い。
明日香さんも凄いが、ヴァイオリンの各メンバーの“気”なくしては実現しないことだ。



ステージでヴァイオリン分奏が様々な変容を遂げている頃、ロビーでは別の一団が何やら・・・
その響きは、バッハのブランデンブルグ協奏曲第3番である。
ヴァイオイリン3人、ヴィオラ3人、チェロ3人、ベース1人の10人の仲間達が、
明日の開演前にこの場所でご披露する、ロビーコンサートの練習をしているのである。
開演前のひと時、ここまで足を運んでくださったお客様をバッハ演奏で歓迎するという趣向だ。
こちらの空気も、ステージのヴァイオリン分奏に負けず劣らず真剣だ。

なんか、いい雰囲気。



今日のリハーサルは、一般の方々や招待者を客席にお迎えしての公開リハーサル。
最初の曲は、作曲家“コバケン”の「パッサカリア」の中の『夏祭り』という一曲で、
曲の途中に和太鼓による勇壮なアドリブ演奏が挿入されている曲でノリノリの賑やかな曲だ。
この和太鼓に、地元の“常磐湯けむり太鼓”の皆さんが威勢よく参加してくれるのだ。

赤地に黒字で太鼓と書かれた情熱的な感じのシャツがこの太鼓隊のユニフォームのようだが、
演奏もこのスタイルに負けず劣らず若さと熱気に溢れたイキのいい太鼓だ。
リハーサルとはいっても、全力で連打する彼女達の熱演に、客席から盛んに拍手が贈られた。



今回、ヴェルディの「アイーダ」の“凱旋の行進曲”とチャイコフスキーの「1812年」では、
バンダに地元の県立磐城高等学校吹奏楽部と県立平商業高等学校吹奏楽部を迎えて共演する。
両校とも吹奏楽コンクールの東北大会での金賞受賞校(磐城高校は全国大会でも金賞)だそうで、
よく訓練されたアンサンブルと、日々の練習に裏打ちされたパワフルなサウンドが心地よい。
我々も高校生達に負けてられないゾと年甲斐にもなく必要以上に気合が入る。
・・・実はそれが命取だが、オジサンオバサン達も、歳はとっても気持ちは若いからね・・・

高校生達も、地元が輩出した世界的指揮者コバケン氏との共演に気合が入っている。
特に、磐城高校はコバケン氏の母校であるからして、磐城高校の吹奏楽部の生徒諸君にとって、
母校が誇るコバケン先輩と共演については並々ならぬ想いがあったようだ。
実際、練習中に話した磐城高校の彼氏彼女らの言によれば、寝ても覚めても今回のコンサート
のことばかりが頭にあったというから、その胸の高ぶりも推して知るべしといったところだ。
そんな若さゆえのストレートな熱中ぶりが、私には胸がつまるくらいに嬉しく思われた。
この歳になるとついつい忘れがちな純な気持ちを思い起こさせてくれたことに感謝である。

我々のこのオーケストラは、地方公演で「アイーダ」や「1812年」を演奏するたびに、
地元の中学・高校生達とこういった形で共演し、ほんの瞬間ではあるが交流の場を持っている。
良くも悪くも思春期の素直な気持ちと照れくさくて正直になれない気持ちが共存していて、
それがそのまま演奏に現れてくることが、私にとって若さや無限の可能性を感じさせてくれる。
今回のようにブラボー!を連発しまくるときもあれば、たまにガッカリすることもあるのだが、
それが我々の元気の素にもなるし、私にはとても嬉しくてしょうがない。



と、まあ、本番を明日に控えた公開リハーサルは、モチベーションも徐々に高まってきて、
きっと明日はいい演奏ができそうだという予感のうち終わることができた。
公開リハーサルを聴かれた方々も、十分に満足されたのではないか。

そうそう、満足されたのではないかといえば、今日のチゴイネルワイゼンも凄かった。
我らがコンミスの瀬明日香さんが、その超絶技巧をご披露したわけであるが、
マエストロ“コバケン”の指示により、舞台から客席に降りて、この曲の後半のアレグロから
客席を歩き回りながら演奏するという芸当をやってのけたのである。
客席で聴いていた方々にしてみれば、ヴィルトォーゾヴァイオリンの代表格でもあるこの曲を、
一流のヴァイオリニストがそれこそ目と鼻の先までやってきて演奏してくれるのだから、
これはもう、いくらお金を積んでも惜しくないというくらいに忘れ得ぬ体験だったに違いない。

今日の天気はやや曇ったり雪が降ったりで、ホールの前庭にも白い絨毯が敷かれていたが、
明日は一日中晴れ渡るとのこと。
我々演奏メンバーが気合を入れて臨むのは当然だが、このイヴェントを長い時間準備してきた
多くの方々の労が酬いられるような、幸多き良い演奏会となるよう祈るばかりだ。


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やってきたクレモナの新作

2010-02-07 23:43:13 | 音楽日記
今日(2/7)、またしても娘と女房と三人で楽器屋さんに足を運んだ。
そして、娘のヴァイオリンが我が家にやってきた。

2009年、イタリアはクレモナ生まれの新作ヴァイオリンである。
若手ながら名門の工房で修行を積み重ね、既に評価も高い製作者の作品だ。
競走馬でいえば、まさにサラブレッド!



分数ヴァイオリンからフルサイズに変えるべく、2週間前に楽器探しを始め
あれやこれやと試奏してみたものの、最初の楽器店で出会ったこのヴァイオリンに決めた!
女房も私も運命を感じたのであった。

娘が大喜びしたのは言うまでもないが、女房も私も新たな家族を迎えたような喜びである。
娘とこのヴァイオリンとがともに成長してくれれば、親としてこれほどの楽しみはない。

このヴァイオリンとともに弓も良いものがみつかった。

こちらは、フランスはパリの生まれで、やはり弓作りの名匠によるものだ。
娘の師匠が「ヴァイオリンはイタリア、弓はフランスでしょう。」とおっしゃったそうだが、
今回の娘のヴァイオリンと弓は、結果的に師匠のアドヴァイスどおりになった。


今日は、我が家にやってきたヴァイオリンのおかげで、夢膨らみ心温まる一日だった。

さて、夢のある話には、当然のことながら現実的な話もついてまわる。
向こう2年間、父には支払いのお金を工面するという頭の痛い仕事が待っている。
そういう心情を察してか、楽器屋さんには親身になって相談にのっていただいた。
いろいろと節約せんとあかんな・・・。
「女房殿、よろしく協力してねん!」


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