昨晩(2/26)、上野の東京文化会館で、東京混声合唱団第209回定期演奏会を聴いた。
創立50周年記念定期演奏会の一環で「未来へ“祈り”」というサブタイトルのついた
ちょっと力の入った演奏会であった。
私も職場を終業時刻とともに出て最初から腰をすえて聴くつもりだった。
…のだが、職場を出る直前にちょっと困った問題が発生し、そのため開演に遅刻。
2曲目が始まる寸前に東京文化会館に着いたが、受付で手間取って間に合わず、
仕方なしに2曲目は騒々しいロビーで聴いて、休憩後ようやくホールに入った。
ということで、後半の2曲しか聴くことができなかった。
もっとも、ロビーで聴いたとはいえ、それなりに楽しめた。
「夢の意味」という曲は、上田真樹という私よりも一昔若い作曲家が
リンボウというニックネームでお馴染みの林望氏の詩に曲をつけたものだが、
騒々しいロビーでモニターを通して聴く限りでは、非常に親しみやすいメロディーと、
透明感のある和声が用いられていて、「夢」のイメージが映像のように感じられた。
演奏が終わると、作曲家と作詞家が舞台に呼ばれて出てきた。
林望氏は、色々なメディアを通してよく写真をみかけるが実物は初めてだ。
この方も、実は本日の指揮者ヤマカズ氏のファンの1人だという。
作曲家の上田真樹氏も、初めて拝見する方だが、若々しく知的な雰囲気の人である。
最近の作曲家は素人には何やらこ難しい曲を書くというイメージがあるのだが、
上田氏のこの曲は、一聴して親しみ易くしかも抒情的で素直な印象を受けた。
人間、難しいことを考えていても、ボーっと単純な作業をしていても、
その頭脳に何がしかのリズムが生まれている時に、無意識に気持ちがノッてきて、
なんとなく口ずさんでしまうようなことがある。
そんな時に流れてくるメロディーは、思いがけないほど素直な心を反映しているが、
この曲は、そういう自然に流れてくるようなもの・・・そんな感じがした。
こういう素敵な曲を生み出していく上田氏に、なんだか嬉しくなった。
◆◆東京混声合唱団第209回定期演奏会「未来へ“祈り”」◆◆
日時/2007年2月26日(月)19:00開演(18:30開場)
場所/東京文化会館小ホール
指揮/山田和樹
ピアノ/中川俊郎、新垣 隆
共演/東京大学柏葉会合唱団OB・OG有志
■リゲティ:作曲-追悼- Gyorgy Ligeti(1923-2006)
永遠の光が Lux aeterna(1966)
■上田 真樹:作曲 UEDA Maki(1976-)
混声合唱とピアノのための組曲
夢の意味(2007)-委嘱初演-
Ⅰ.朝あけに/Ⅱ.川沿いの道にて/Ⅲ.歩いて/
Ⅳ.夢の意味/Ⅴ.夢の名残
林 望:作詩
■鷹羽 弘晃:作曲 TAKAHA Hiroaki(1979-)
混声合唱とピアノのための
ブルレスカ(2007)-委嘱初演-
I 紙(室生犀星:詩)
II. 言葉(原題「白い言葉」)(大手拓次:詩)
III. 軍隊(原題「軍隊(通行する軍隊の印象)」)(萩原朔太郎:詩)
■三善 晃:作曲 MIYOSHI Akira(1933-)
混声合唱と2台のピアノによるレクイエム(1972年委嘱作品)
(2004 新垣隆のリダクションによる)
休憩になってホールに入ると、客席がかなり埋まっているのに驚いた。
この合唱団の集客力か、私がお目当てとした指揮者ヤマカズ氏の人気か?
舞台上手側のかぶりつきに葛飾フィルの仲間をみつけたので一緒に聴くことにした。
後半最初の曲は鷹羽弘晃という作曲家の作品である。
ブルレスかというこの曲の3曲目は、萩原朔太郎の「軍隊(通行する軍隊の印象)」
という詩によるものだが、高校時代に詠んで、妙なリズム感に引きずり込まれた。
最初、反戦歌の重い気持で詠んだが、「づしり、づしり、ばたり、ばたり」の一節に
妙にユーモラスなリズムを感じて、カラカラっと笑った覚えがある。
この作曲家の音楽も、わりと素直でわかりやすいメロディとリズムで構成されている。
上田氏の「夢の意味」と同様に東混からの委嘱作品ということであるが、
両者とも、ある意味フツーっぽい感じの曲であることが新鮮で心地よい印象。
鷹羽氏のこの曲は、なんとなく重苦しい雰囲気、セピア色っぽい空気が感じられるが、
そのなかに、重機に注ぐ潤滑油から揮発してくる粘り気のあるにおいと、
肉体労働者の身体を滴り落ちる汗にイメージされる底知れぬエネルギーも感じた。
そして、、「づしり、づしり、ばたり、ばたり」の一節に感じたあのリズム感が、
そのまま、なにやらコミカルにすら感じたのであった。
一言で言うのは難しいが、面白い曲であった。
三善晃氏の「レクイエム」は、氏の代表作であり、私にも大切な曲の一つである。
この曲を何度も聴いてきた私にとっては、ただただ、圧巻であった。
実は、今日のような2台のピアノ伴奏で聴いたのは初めてだったのだが、
オケ伴奏とはまた違ったリアリティを感じた。
あれこれ言葉で感想を書くのは真意を表現できないようにすら感じた。
終演後、マエストロ・ヤマカズ氏がステージを降りて、客席の作曲家と抱擁するが、
何か、歴史的瞬間に立ち会っているかのような光景であった。
そのようにすら思わせる、集中度の高い演奏であり、聴衆ののめり込みようであった。
“東混”こと東京混声合唱団のコンサートは、今日が初めてのことであったが、
非常に素晴らしい演奏だった。
また、機会があればこの団体のコンサートに足を運びたいと感じた。
今日は素敵なひと時を過ごすことができた。
で、終演後、葛飾フィルの仲間と、ロビーで挨拶をされていたヤマカズ氏のもとへ。
葛飾フィルのメンバーは団長以下5人だったが、皆に握手をしていただき、
しかも、私がブログでヤマカズ氏のことを書いていることもご存知で、大変恐縮した。
インペク女史が贈物を渡していたが、中身は下町っぽいセンスにあふれるもの。
きっとヤマカズ氏も自分の演奏会でこういうものを贈られたことはないと思う。
そういう意味ではインパクトありそうだ・・・。
その後は、葛飾フィルの仲間で、お決まりの飲み会である。
上野のガード下で音楽談義に花が咲いた。
5人の担当楽器はそれぞれ、Ob、Fl、Vn、Va、Vcだったのだが、
何かの弾みでフルート・カルテットを演ろうなどという話になり、
その場でスケジュール調整となった。
こういうノリになったのも、今日のコンサートが刺激的だったからだろう。
それにしても、ヤマカズ氏の集中力と推進力の大きさには驚かされる。
帰宅して床に就いても、コンサートでの映像が幾度となく再現され、
なかなか興奮が醒めやまなかった。
←励ましの一本締めで一押しお願いします
創立50周年記念定期演奏会の一環で「未来へ“祈り”」というサブタイトルのついた
ちょっと力の入った演奏会であった。
私も職場を終業時刻とともに出て最初から腰をすえて聴くつもりだった。
…のだが、職場を出る直前にちょっと困った問題が発生し、そのため開演に遅刻。
2曲目が始まる寸前に東京文化会館に着いたが、受付で手間取って間に合わず、
仕方なしに2曲目は騒々しいロビーで聴いて、休憩後ようやくホールに入った。
ということで、後半の2曲しか聴くことができなかった。
もっとも、ロビーで聴いたとはいえ、それなりに楽しめた。
「夢の意味」という曲は、上田真樹という私よりも一昔若い作曲家が
リンボウというニックネームでお馴染みの林望氏の詩に曲をつけたものだが、
騒々しいロビーでモニターを通して聴く限りでは、非常に親しみやすいメロディーと、
透明感のある和声が用いられていて、「夢」のイメージが映像のように感じられた。
演奏が終わると、作曲家と作詞家が舞台に呼ばれて出てきた。
林望氏は、色々なメディアを通してよく写真をみかけるが実物は初めてだ。
この方も、実は本日の指揮者ヤマカズ氏のファンの1人だという。
作曲家の上田真樹氏も、初めて拝見する方だが、若々しく知的な雰囲気の人である。
最近の作曲家は素人には何やらこ難しい曲を書くというイメージがあるのだが、
上田氏のこの曲は、一聴して親しみ易くしかも抒情的で素直な印象を受けた。
人間、難しいことを考えていても、ボーっと単純な作業をしていても、
その頭脳に何がしかのリズムが生まれている時に、無意識に気持ちがノッてきて、
なんとなく口ずさんでしまうようなことがある。
そんな時に流れてくるメロディーは、思いがけないほど素直な心を反映しているが、
この曲は、そういう自然に流れてくるようなもの・・・そんな感じがした。
こういう素敵な曲を生み出していく上田氏に、なんだか嬉しくなった。
◆◆東京混声合唱団第209回定期演奏会「未来へ“祈り”」◆◆
日時/2007年2月26日(月)19:00開演(18:30開場)
場所/東京文化会館小ホール
指揮/山田和樹
ピアノ/中川俊郎、新垣 隆
共演/東京大学柏葉会合唱団OB・OG有志
■リゲティ:作曲-追悼- Gyorgy Ligeti(1923-2006)
永遠の光が Lux aeterna(1966)
■上田 真樹:作曲 UEDA Maki(1976-)
混声合唱とピアノのための組曲
夢の意味(2007)-委嘱初演-
Ⅰ.朝あけに/Ⅱ.川沿いの道にて/Ⅲ.歩いて/
Ⅳ.夢の意味/Ⅴ.夢の名残
林 望:作詩
■鷹羽 弘晃:作曲 TAKAHA Hiroaki(1979-)
混声合唱とピアノのための
ブルレスカ(2007)-委嘱初演-
I 紙(室生犀星:詩)
II. 言葉(原題「白い言葉」)(大手拓次:詩)
III. 軍隊(原題「軍隊(通行する軍隊の印象)」)(萩原朔太郎:詩)
■三善 晃:作曲 MIYOSHI Akira(1933-)
混声合唱と2台のピアノによるレクイエム(1972年委嘱作品)
(2004 新垣隆のリダクションによる)
休憩になってホールに入ると、客席がかなり埋まっているのに驚いた。
この合唱団の集客力か、私がお目当てとした指揮者ヤマカズ氏の人気か?
舞台上手側のかぶりつきに葛飾フィルの仲間をみつけたので一緒に聴くことにした。
後半最初の曲は鷹羽弘晃という作曲家の作品である。
ブルレスかというこの曲の3曲目は、萩原朔太郎の「軍隊(通行する軍隊の印象)」
という詩によるものだが、高校時代に詠んで、妙なリズム感に引きずり込まれた。
最初、反戦歌の重い気持で詠んだが、「づしり、づしり、ばたり、ばたり」の一節に
妙にユーモラスなリズムを感じて、カラカラっと笑った覚えがある。
この作曲家の音楽も、わりと素直でわかりやすいメロディとリズムで構成されている。
上田氏の「夢の意味」と同様に東混からの委嘱作品ということであるが、
両者とも、ある意味フツーっぽい感じの曲であることが新鮮で心地よい印象。
鷹羽氏のこの曲は、なんとなく重苦しい雰囲気、セピア色っぽい空気が感じられるが、
そのなかに、重機に注ぐ潤滑油から揮発してくる粘り気のあるにおいと、
肉体労働者の身体を滴り落ちる汗にイメージされる底知れぬエネルギーも感じた。
そして、、「づしり、づしり、ばたり、ばたり」の一節に感じたあのリズム感が、
そのまま、なにやらコミカルにすら感じたのであった。
一言で言うのは難しいが、面白い曲であった。
三善晃氏の「レクイエム」は、氏の代表作であり、私にも大切な曲の一つである。
この曲を何度も聴いてきた私にとっては、ただただ、圧巻であった。
実は、今日のような2台のピアノ伴奏で聴いたのは初めてだったのだが、
オケ伴奏とはまた違ったリアリティを感じた。
あれこれ言葉で感想を書くのは真意を表現できないようにすら感じた。
終演後、マエストロ・ヤマカズ氏がステージを降りて、客席の作曲家と抱擁するが、
何か、歴史的瞬間に立ち会っているかのような光景であった。
そのようにすら思わせる、集中度の高い演奏であり、聴衆ののめり込みようであった。
“東混”こと東京混声合唱団のコンサートは、今日が初めてのことであったが、
非常に素晴らしい演奏だった。
また、機会があればこの団体のコンサートに足を運びたいと感じた。
今日は素敵なひと時を過ごすことができた。
で、終演後、葛飾フィルの仲間と、ロビーで挨拶をされていたヤマカズ氏のもとへ。
葛飾フィルのメンバーは団長以下5人だったが、皆に握手をしていただき、
しかも、私がブログでヤマカズ氏のことを書いていることもご存知で、大変恐縮した。
インペク女史が贈物を渡していたが、中身は下町っぽいセンスにあふれるもの。
きっとヤマカズ氏も自分の演奏会でこういうものを贈られたことはないと思う。
そういう意味ではインパクトありそうだ・・・。
その後は、葛飾フィルの仲間で、お決まりの飲み会である。
上野のガード下で音楽談義に花が咲いた。
5人の担当楽器はそれぞれ、Ob、Fl、Vn、Va、Vcだったのだが、
何かの弾みでフルート・カルテットを演ろうなどという話になり、
その場でスケジュール調整となった。
こういうノリになったのも、今日のコンサートが刺激的だったからだろう。
それにしても、ヤマカズ氏の集中力と推進力の大きさには驚かされる。
帰宅して床に就いても、コンサートでの映像が幾度となく再現され、
なかなか興奮が醒めやまなかった。
←励ましの一本締めで一押しお願いします