昨日(3/30)、日比谷にある「三信ビル」の1Fで、57年もの間、営業を続けきた
カフェグリル「ニュー・ワールド・サービス」が、その幕を閉じた。
この日、最後の食事を味わうために、一目店構えを記憶にとどめておくために、
長らくこのお店を愛した人々がここに足を運んだ。
職場仲間と昼食に銀座まで出てきた私も、その後、仲間と別れ一人ここに来た。
最後のお別れにやってきた客さんが列をつくっている
解体が決まっている三信ビルの、最後の一店として孤軍奮闘を続けてきた
「ニュー・ワールド・サービス」の前には、別れを惜しむ人々が列を作っている。
最後のカフェの味はどんなものだろうか・・・
写真の奥には、このビルの通路が白い壁によって封鎖されているのが見える。
この壁の向こうには味わいと風格のあるエレベータールームがあったのだが、
それも観ることはできない。
ランチメニューは完売したが続々とお客さんがやってくる
午後1時過ぎにはランチメニューが品切れとなり、店員さんがお客さんに詫びていた。
あとのメニューはカフェを中心とした飲み物だけだが、誰も列を外れようとはしない。
それどころか、後から後から客足が絶えることはなく、彼らもまた列の一員となる。
昼食時にこうしてレストランの前に順番待ちの人が列を作っている風景は、
この辺りではごくありふれた日常風景なのだが、今日、ここはちょっと雰囲気が違う。
皆なんとなく口数が少なく、知り合い同士もあまり話が弾んでいるふうではない。
「別れ」の時は、様々な思いが胸いっぱいにあふれてくるからだろう、
思っていることを伝えようとしても、なかなか気持ちに相応しい言葉がでてこない。
そんな言葉にできない言葉が、この場の空気に満ちている。
この素敵な内装も今日で見納め
この二階までの吹き抜けたアーケードのとても優美なこと…。
二階の手すりや柱に施された装飾はアールデコの様式だというが、
そういう知識がなくても、このビルの内装は我々の目を癒し楽しませてくれる。
きっと、このビルの一番の魅力ではないだろうか?
三信ビルが建ったのは1930年というから昭和5年だが、そんな時代の建物だけに、
人肌のようなぬくもりが感じられ、この場でずーっと内装をながめていても飽きない。
ここを訪れた人の多くがはしばしこのアーケードに見入ったというがうなずける。
そして、この建物に入れるのも今日が最後だとのこと。
自らの記憶にこの風景をとどめようとする人は勿論のこと、
カメラを片手にやってくる人々も後を絶たず、シャッター音が断続的に鳴り響く。
解体作業の足場が取り付けられていく・・・
日比谷三井ビル側からみた三信ビル(南側)の外観は、その存在感と歴史が感じられる。
先週までは見られなかった解体作業のための足場が着々とビルを囲み始めている。
今日、ニュー・ワールド・サービスの閉店と共にこのビルは封鎖されてしまうのだ。
そして、このぬくもりと味わいのある外観も解体作業の足場で覆われてしまう。
その囲いが解かれたときには、もう、このビルはない。
三信ビルと桜
日比谷シャンテ側の三信ビルの前(正面玄関?側・東側)には一本の桜がある。
今日のこの日に別れを惜しむかのように満開となった。
時折、花びらを乱舞させる風が、やけに冷たく感じるのは感傷なのだろうか…
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