●なぜ映画か?
今日8月30日。夏休みも残すところあと一日となった子供達。
夏休みの宿題も終え、父も土日で休みだし、どこか遊びに遠出したい気分である。
…が、連日の激しい雷雨に、大雨洪水警報が出されている今日この頃。
家族揃ってハイキングにお出かけというわけにはいかない。
こういう日は、家でのんびりして音楽を聴いたり読書するのがいつもの私であるが、
今日はちょっと違った。
実は、子供達はこの夏休み中、何度か寝坊して休んだものの、
ほとんど毎朝早起きして、6:30からのラジオ体操を続けていたのである。
これは、学校や子供会が主催するラジオ体操が7月いっぱいだけだったので、
「お父さんの小学生の頃は、皆、夏休み中は毎朝やっていたぞ。」という話から
「夏休み中一度も休まずに続けたら、何でも願い事を一つ叶えてやるぞ。」
という話に発展してしまい、子供達がその気になって頑張った結果である。
娘など「ディズニーランドに連れてって!」と宣言してかなり真剣だった。
兄のほうは、最初、あまり乗り気でもなかったようだが、妹に付き合っているうちに、
誰よりも早く起きてラジオの準備をするという調子であった。
8月上旬の福島・米沢への演奏旅行や、箱根小涌園への一泊旅行の際も、
携帯ラジオを忘れずに持っていき、朝風呂の前後に部屋で体操するという徹底振り。
残念ながら、何度か寝坊してしまったので、願い事を叶えることは出来なくなったが、
かといって、その一回の寝坊であきらめて止めてしまったわけでもない。
いずれにしても、早起きしてラジオ体操を続けてきたことは、我が子ながらエライっ!
つまり、普通なら我が家でゴロゴロしていたい父が、懐の寒さをかえりみることなく、
今日は、子供達が夏休み中ラジオ体操を続けたという努力のご褒美として、
「観たい映画に連れて行ってやるぞ!」ということになったのである。
…めでたし、めでたし!ラジオ体操も無駄じゃなかったわけだ。
それで、兄は『20世紀少年』が観たい、妹は『崖の上のポニョ』が観たいという。
せっかく皆で一緒に観に行くのだからどちらか一つにしたらどうか?
といって、2人に相談を促すが、どちらも退かない。
比較的、我慢を強いられる立場の兄も、今回ばかりはなかなか譲らない。
どうも『20世紀少年』をよほど観たいらしい。
どうしたもんかの…と近所の映画館「船堀シネパル」の上映スケジュールを調べると、
うまい具合に2本の映画がほぼ同じようなタイミングで上映している時間帯があり、
そんなら、一緒に行ってそれぞれに観たい方を観りゃええということになった。
各々に母と父が同伴し、女組は『崖の上のポニョ』、男組は『20世紀少年』と別れた。
●『20世紀少年』とは?
さて、息子と一緒に観た本格科学冒険映画の『20世紀少年』、
丙午生まれの私にはまるで我がことのように主人公達に同化できる面白い映画だった。
原作者の浦沢直樹氏は自分よりも年上だが、確か同じ1960年代生まれの方なので、
主人公達が少年時代の映像には、何がしか共有できる独特の感情があるのではないか。
…といいながら、同名の原作は実は読んだことがない。
いや、正確にはたまに立読みした週刊「ビッグコミックスピリッツ」で読んだが、
登場人物のキャラクターはおろかストーリーさえまったく覚えていなかった。
私にしてみれば浦沢直樹氏といえば、氏の代表作でもある『YAWARA!』なのだ。
私の学生時代、『YAWARA!』は、丁度、当時の週刊「スピリッツ」で連載中だった。
大学周辺の学生相手の食堂や喫茶店には、大抵の週刊誌や漫画雑誌がおいてあって、
食事の後や、授業をサボってコーヒーをすする時など、必ず何がしかの雑誌を読んで、
中でも「スピリッツ」毎週欠かさず読んでいた。
だが、大学を出てからは、あまり日常的に「スピリッツ」を読まなくなった。
したがって、『20世紀少年』がここ数年で海外でも翻訳出版されて人気が高まり、
今回の実写による映画化が世界的に注目されていることぐらいは知っていたが、
どういう登場人物たちがいて、どんなストーリー展開なのかとか、
今日の映画が三部作の一作目だということとか、全て息子に教えられて知った次第。
酒屋を改装したコンビニエンス・ストアを経営する主人公ケンヂは、
夢と希望に溢れる子供の頃(1970年代)、遊び仲間達と草むらに秘密基地をつくり、
そこで、仲間たちで考え出した世界を征服し地球滅亡をたくらむ悪の組織と
それに立ち向い地球を救う正義のヒーローと仲間たちの空想物語を、
“よげんの書”というスケッチブックに想像上の絵とともに書きしたためていた。
映画は、1997年、ケンヂの小学校の同窓会や幼なじみの死をきっかけに、
徐々にその頃の記憶がよみがえってくるというところから始まる。
そして、世界各地で起こっている伝染病とされる異変が、実は、子供の頃に空想した
“よげんの書”のとおりに起こっていることに気づく。
一連の異変は、“ともだち”と呼ばれる謎の人物を教祖とする奇妙な宗教団体の仕業か?
彼らがたくらむ地球滅亡計画とは?
そしてそれを阻止せんと立ち上がったケンヂとその仲間たちに勝算はあるのか?
原作のコミックのほうは既に完結しているらしいが、
その内容を知らない私には、今日観た第一作の謎解きのような展開も楽しめた。
そして、主人公達の子供の頃の回想シーンで展開する1970年代の映像は、
私も体験した少年時代をそのまま再現するもので、懐かしいこともさることながら、
主人公達と同化してタイムスリップしたような気分であった。
私もまた、草むらや大木に秘密基地を作り、自らが正義の味方になる空想を楽しんだ。
今日(8/30)は、実はこの映画が封切られた初日だったそうだ。
映画館はそれほど混雑していなかったが、観覧客の多くは子供よりも大人であり、
私と同年代かそれ以上の年齢層が多かったのには驚いた。
浦沢直樹氏のファン層の厚さと、この映画の中身がそうさせたのだろうか。
少なくとも我々の世代には、子供心を思い起こさせワクワクさせる魅力がある。
第二作は、来年1月の公開だそうだが、これも面白そうだ。
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