本日は、前菜の一皿をご紹介します。
高座豚スネ肉のゼリー寄せ パセリ風味 ブルゴーニュ風です。
グリンツィングでは、前菜に豚肉の自家製シャルキュトリー(加工品)をメニューに載せています。
豚肉の田舎風パテや、豚頭のカリカリ焼き等がありましたが、夏の暑い時期にサッパリと食べていただける前菜として、今回は冷たいゼリー寄せにしてみました。
フランス ブルゴーニュ地方の郷土料理として有名なジャンボンペルシエを、少し自分流にアレンジしています。
作り方ですが、神奈川県産の美味しい豚、高座豚の骨付きスネ肉を一晩塩漬けした後に、湯がいて臭みを抜いた豚足と白ワイン、水、たっぷりの香味野菜、スパイス、香草と共に、じっくりと柔らかく煮込みます。
その後、煮汁に豚肉を一晩漬けて、味を馴染ませる所がポイントです。
翌日、煮込んだスネ肉と豚足をサイコロ状にカットした所に、同じ様にカットした豚腿肉のハムを加え、そこに温めた煮汁と微塵切りにしたパセリ、きゅうりのピクルスを合わせてから、テリーヌ型にバランスよく詰めていきます。
テリーヌ型に軽く重石をして、冷蔵庫で一晩冷やし固めますが、特別にゼラチン等を入れなくても、豚の煮汁だけで自然にしっかりと固まります。
付け合せは、沢山の種類を合わせた香り高いサラダと、白ワイン酢とオリーブオイル、エシャロット、ケッパーで和えた、甘酸っぱいフルーツトマトのマリネを添えています。
本来はソースも無く、有ってもピクルスを添える位の素朴な料理ですが、トマトやサラダを組み合わせる事で、レストランらしい一皿になった気がします。
この前菜の生まれ故郷のブルゴーニュ地方には、忘れられない記憶があります。
フランス修行時代、ブルゴーニュ地方は、自分にとってとても大切な場所でした。
有名なワインの産地と言うことばかりではなく、ジャンボンペルシエ等の素晴らしい郷土料理との出会い、その時にお世話になったレストランのシェフと、その家族やお店の同僚との思い出、そして・・・
このブログのタイトルの後ろにある風景は、実はブルゴーニュ地方にあります、ボーヌという町から見た葡萄畑なのです。
最初にフランスに行った時なのでもう9年前になりますが、希望にあふれてフランス修行に来たつもりが、働けない焦りや、言葉も満足に話せない悔しさ、自分の弱さから来る苛立ちや諦め、まさに現実の壁に当たっていた頃でした。
今思えば、フランスだからというわけでもなく、日本にいても現実や仕事、人生はそんなに甘くない事は、同じだったと思います。
お恥ずかしい話ですが、このフランス料理の仕事を初めてから、辛くて辞めたいと思った事は一度や二度ではありません。
その頃の自分も、もう諦めて日本に帰ろうと考えていました。
そんな時に出会った風景が、このブルゴーニュの葡萄畑なのです。
初めて見た時の感動は、今でも忘れません。自分の生まれ育った新潟の風景と全く同じだったのです。
田舎のゆっくりとした時間の中で、見渡す限り何処までも畑で、そして本当に広くて青い空でした。
葡萄畑の作業をしている農家の人達が、見ず知らずの日本人の自分に対して、すれ違うたびに「ボンジュール」と声をかけてくれました。
その穏やかな景色を見ていると、悔しくて涙が出てきたのです。「なんて自分の考えている事は、ちっぽけで情けないんだろう」
そして、「せっかくここまで頑張って来たんだ、先の事はわからないけれど、もう少し頑張ってみよう」と、新たに気持ちを奮い立たせる事が出来たのです。
余計な話が長くなりましたが、今ある自分にとっては、とても大切な思い出なのです。
今回、夏休みに実家に帰った時に撮りました、新潟の風景です。