おはようございます。9月19日金曜日、東京・小平の朝2時の気温は21℃、外は雨です。
昨日9月18日の午後は、吉田耕作氏の
「ジョイ・オブ・ワークによる生産性向上」セミナー(中小企業者向けセミナー)を聞いてきました。
デミングの直弟子である吉田氏は、長年アメリカで生活してきましたが、ある目的があって約10年前から日本で暮らしています。興味深い講演内容でしたので、要旨をまとめておきます。
吉田氏は成果主義・非正規雇用といった人事政策の弊害を排除して、人間尊重と協調精神を基本に、CDGM(後述)などの小集団活動を活用し、個々の勤労者の能力や想像力を最大限に発展・発揮させることによって、組織の競争力をつけようとするジョイ・オブ・ワークの考え方を提唱しています。
成果主義については、労働経済白書において労務コスト削減がその導入の主目的であったと総括されています。吉田氏は「成果主義こそが働く人の満足度を低下させ、意欲の低下を招いている。これに加えて非正規雇用の増加が意欲低下に拍車をかけている。」と指摘します。
吉田氏は、「80年代に日本の低賃金との競争に対峙したアメリカは、生産性(製造業に限らない)を高めて競争力を回復しようとした。そして、見事に復活を果たした。
それに対して、中国の低賃金との競争に対峙する現在の日本は、正規社員数を減らし残業を増やす人件費削減策でこの状況を切り抜けようとしてきた。」と分析を進めます。
しかし「日本の生産性は上がらず先進7カ国中11年連続最下位となっている。さらに、日本人の会社へのロイヤリティや仕事への熱意は先進14カ国中最下位の状態である」ことから、先のコストダウン政策は有効に働いていないばかりか大きな弊害をもたらしていることがわかります。
一方、東京商工会議所のアンケート調査では、今後重視する経営課題として「人材の確保・育成」をあげる企業が6割近くあります。また、3年連続で8割を超える企業が今後なりたい企業イメージとして「従業員が働きがいのある企業」を挙げています。
また、労働政策研究・研修機構の調査によると、勤労者の側も終身雇用を86.1%、年功賃金を71.9%の人が支持しています。
つまり、雇用者側も労働者側も、長期雇用で人を育てることができる企業を目指し求めているといえます。
吉田氏は、日本企業の人的コストダウン政策の破綻と、人と企業が目指す将来像を見据えて、「これからの日本企業は、正規雇用、終身雇用を増加させて、人を育て、仕事のやりがい(Joy of Work)を育て、(とくにホワイトカラーの)生産性を上げて、国際競争力をつけるべきだ」と話します。
吉田氏はそのための方法論として、旧来のQCサークルにかえて、CDGM(クリエーティブ・ダイナミック・グループ・メソッド)という小集団活動を提唱されています。
CDGMは、CDG(クリエーティブ・ダイナミック・グループ)とRT(ラウンドテーブル)で構成されます。CDGは、職場の問題をブレスト等をして週一回半年かけて解決していきます。複数のCDGで構成されるRTでは、月一回講師が付いて講義と各SDGの発表・討論がおこなわれます。
旧来のQCサークルとの違いは、QCのやらされ感に対してCDGMはやりがい、顧客満足優先に対して従業員満足優先、(従業員間の)競争に対して協調、建前で語ることに対して本音で語ることなどが求められていることです。
従業員の参加は強制ではなく、やりたい人が勤務時間中にやる、楽しくやることが重要視され、みんなでわいわいやって自ら参加したくなるような、人間らしい感情を自然に引き出す仕組みです。
吉田氏は「人間は興味のあることや楽しいことしか続けられない。だから、小集団を楽しくしてしまえばよい。」「楽しくすることで、自然に皆が集まり、その力が発揮され生産性が向上する。生産性の源は人です、機械と違って人は無限に生産性を向上できる資源なんです。」と語ります。
事例企業として挙げられた理科教材を販売する
中村理科工業株式会社(現ナリカ)では、通常業務に優先してCDGM活動がおこなわれているそうです。CDGMで決めたことは即実行されます。なぜかというと、CDGMで扱う事柄の方が収益につながるからだそうです。
たとえば、社内の「IT革命団」グループが企業ホームページをカイゼンしWEB経由の売上を3年間で10倍にしたり、「アダモニ」(アダルトモーニングオヤジ)グループが在庫管理をカイゼンし倉庫の効率を大幅に向上したりという具合に大きな成果を上げています。
そして導入以来、業績向上により度々年度末臨時(年3回目の)ボーナス支給がなされ、だたひとりのリストラもおこなわれず、自主退職者も少ない状態が続いているそうです。
講演ではその他の成功事例、大企業(NTTコムウエア、データ、NEC他)での導入例、アメリカ企業とアメリカ政府での成果も紹介されました。
90年代にデミング氏のチームに参加し「アメリカの復活」を手助けした吉田氏の今の願いは、「日本の復活」です。そのために、アメリカでの終身教授の権利を捨てて日本に帰国したということです。
吉田氏は「日本企業が競争力を高め復活するためのは、人の力を引き出し、発揮させることが重要なのだということ、そのための方法論は人間尊重型の小集団活動=CDGMである」ということを日本で教えることをご自分のミッションとされています。私は吉田氏のその思いを受け取りました。