これは、好酸球性副鼻腔炎の患者さんの篩骨洞と上顎洞の粘膜の組織です。早期には篩骨洞の炎症が主ですが、重症ではすべての副鼻腔炎で、このような所見が見られます。
片隅に黒い核を持つピンク色の丸いポツポツに見えるのが全部好酸球です。上の方で半透明に見える部分が、杯細胞の粘液が貯まっている部分です。ワイングラスの様なかたちなので、杯細胞と呼ばれるのですが、ワイングラスが乱立しています。好酸球がたくさん見られる粘膜固有層と、杯細胞がたくさん見られる上皮層の間のピンクの帯が、基底膜です。
好酸球浸潤、杯細胞の著明な増加、基底膜の肥厚が、好酸球性副鼻腔炎の粘膜組織の3大特徴です。
同じ副鼻腔でも、篩骨洞と上顎洞は成り立ちが違います。篩骨洞は、動物(たとえばウサギ)にはありません。ウサギでは、そのかわり、篩骨甲介と呼ばれる多くの襞状の出っ張りが見られます。この出っ張りは、鼻腔(鼻の中。息の通り道)の後上半分を占めます。そしてこの出っ張りの表面は、すべて嗅上皮で被われています。鼻の2大機能のひとつ、嗅覚の機能を高めるため、できるだけ嗅上皮の面積を広くするため、この襞状の出っ張りは有利なのです。
動物に比べると嗅覚の衰えた人間では、この出っ張り同士がくっついて退化し、迷路のような空洞になってしまっています。これが篩骨洞です。人間の嗅上皮は、嗅裂と呼ばれる、鼻の上の方のほんの一部にしかありません。鼻ポリープで通り道がふさがり、空気が嗅裂までとどかないと、嗅覚傷害が起こります。好酸球性副鼻腔炎の嗅覚障害の主な原因は、それです。
ウサギにも上顎洞はあります。ただし、人間の上顎洞は、鼻腔とは自然孔と呼ばれる小さな窓でつながっているのですが、ウサギの自然孔は、人間に比べると、とても大きい窓です。ウサギより小さい動物、たとえばネズミでは、上顎洞はありません。わずかに、鼻腔の外側に窪みがあるだけです。ネズミには、上顎洞も篩骨洞もないのです。
このように成り立ちが違うので、篩骨洞粘膜と上顎洞粘膜は、少し違います。上顎洞粘膜の方がやや厚く、上皮細胞の高さも高いです。それが最初の写真でも分かると思います。
鼻腔と副鼻腔の粘膜には、もっと差があります。鼻腔の粘膜の方が何倍も厚く、じょうぶです。表面の上皮の細胞の高さも、鼻腔の方がかなり高いです。鼻腔の粘膜には、血管や神経がたくさんありますが、副鼻腔の粘膜には、少ししかありません。だから鼻アレルギーの人の副鼻腔にハウスダストや花粉が入ったとき、アレルギー反応は起きるけど、鼻腔の反応より軽くてすむのでしょう。
鼻から気管支まで、同じ呼吸上皮で似た粘膜の仲間ですが、それぞれ多少違いもあるのです。
中鼻道というところは、鼻腔の中で最も鼻ポリープができやすいところですが、ここの粘膜は形態的(組織を見ると)鼻粘膜ではなく、副鼻腔粘膜の特徴を示しています。厚い鼻粘膜の特徴を示しているところからは、鼻ポリープはめったに出てきません(例外的に、炎症が重症だと、鼻中隔や、甲介(動物の襞々の出っ張りの最後の生き残り)の表面の鼻粘膜もポリープ状になることがあります)。私はその意味で、鼻ポリープは、ほとんど”副鼻腔粘膜”から出てくるのだと考えています。中鼻道は鼻腔の続きですが、粘膜の特徴から言うと、副鼻腔の一部なのです。
また嗅裂のポリープも、これも副鼻腔のような粘膜で被われる上鼻道というところでできて、甲介の隙間から嗅裂側に出てくるのが主です。したがって、好酸球性副鼻腔炎など嗅覚障害のある患者さんの手術では、この上鼻道のポリープを完全に取るため、多少薄い骨を切り取ってでも、上鼻道を広げることをしなければなりません。
以上の内容に、組織学あるいは比較解剖学的に、エビデンスがないことも含まれています。私も、データをまとめて発表することなく、大学をやめてしまいました。どこかで書いておきたくて、このブログに書かせてもらいました。
http://30d.jp/gongon703/1
これは私の手術前の鼻腔内なのですが、鼻茸は確認できるのですが、これがどこの場所なのか分かりません。
ちなみに私の場合は嗅覚の復活は残念ながらイマイチでした。
この写真で鼻腔内が全部映っているわけではないんですね。
鼻の中って複雑ですね。
好酸球性中耳炎の起こり方もお時間がある時にまとめてくれると嬉しく思います。
以前、好酸球性中耳炎と診断された時、中耳内で液が生産されるて溜まる?って説明されたのですが、どうも解せないんです。
鼻水があまりにもすごくて、鼻を思いっきりかんでいたので、その弾みで鼻汁が耳に回ったのではと私は思ったのですが、言い出せなかった・・・
喘息もあります。
手術後は戻らないかもと言われていた嗅覚も戻り口呼吸からも解放され早く手術すればよかったと思いました。
術後の経過もよくまだ鼻茸は再発していません。
しかし、術後少ししてから好酸球性中耳炎を繰り返すようになってしまいました。
好酸球性中耳炎は難聴にもなるとの事でとても不安です。
中耳炎がよくなると副鼻腔炎になり…
そのたびにステロイドを飲んでいます。
ステロイドの副作用も心配です。
術後の鼻茸の再発防止の情報も欲しいです。
喘息は発作もなく吸入薬で安定しています。
術後の再発予防は、風邪をひかないようにすること、アスピリン喘息の誘因物質になるようなものに用心すること、場合によっては、抗ロイコトリエン薬や点鼻ステロイドを使うことなどが考えられますが、絶対有効なものはないようです。症状が出はじめたらすぐ耳鼻科を受診して治療を受け、小さい鼻茸のうちに治してしまうのが大切です。
鼻茸の再発予防については、またいずれまとめます。
他にはこれほど分かり安いものはないと思います。
中耳でも鼻の中と同じ症状が起こり得るのですね。
中耳炎発症当時、呼吸器で経口ステロイド薬、抗ロイコトリエン薬、抗アレルギー薬、テオドール、吸入薬のフルコースで喘息はコントロールは完ぺきでした。
調子があまりにも良いので、ニポラジンを中止し、プレドニン(5mg)を隔日にしました。
それがいけなかったのか、ひどい鼻水、繰り返す蕁麻疹、そうこうしているうちに中耳炎。
という経過でした。
今現在は、プレドニンゾロン(2㎎)、シングレア、クラリチン、シムビコート、アラミストで呼吸器、鼻、耳、ともに落ち着いています。
落ち着いてくると、薬を減らしたい!! 減らしても大丈夫なのではないか?という欲も出てきます。
このHPにおじゃまして、自分の状況やこれから起こるかも知れない症状、現在の治療の正当性などを認識でき、
自己管理をする上でも大変参考になりました。
呼吸器の担当医がステロイド減らすと《ツ○ボ》になっちゃうと言うことも理解できました。
本当にありがとうございました。
今度は、リモデリングを起こしてしまった気管支、鼻、耳の粘膜は、
もう元に戻らないのだろうか? 悪化させないためにはどうしたらいいのか?
ということを知りたくなりました。
ずうずうしいですが、機会がありましたらお願いします。