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好酸球性副鼻腔炎

好酸球性副鼻腔炎について知っていただくために開設したブログです。現在更新は行っていません。

好酸球性副鼻腔炎とは

好酸球性副鼻腔炎とは、多発性の鼻茸(鼻ポリープ)で鼻閉と嗅覚障害を起こし、通常の薬が無効で、内視鏡下鼻内手術を行っても再発が多い、難治性副鼻腔炎です。白血球の一種である好酸球が、血液や粘膜で増えているのが特徴です。しばしば喘息(とくにアスピリン喘息)を伴い、好酸球性中耳炎を合併することもあります。アスピリン喘息とは、ほぼすべての解熱鎮痛剤と、着色料や防腐剤などいろいろな誘発物質で喘息を起こす病気です。

北部病院との勉強会と好酸球性副鼻腔炎

2012-01-18 21:44:12 | 好酸球性副鼻腔炎一般

昨日は北部病院の耳鼻科の先生たちとの勉強会。いくつか新しい知識を得ることができました。

今回は好酸球性副鼻腔炎について、私も話をさせていただきました。でも、北部病院の先生や、区内の耳鼻科開業医の先生方にとっては、ご存じの事ばかりだったのかも知れません。

しかし、アスピリン喘息を合併している好酸球性副鼻腔炎の患者さんに、内科の先生が風邪薬を処方されて、発作を起こしてしまったこともあります。また、何年も他の病院で副鼻腔炎の治療を受けても鼻閉と嗅覚障害が一度も治らなかったという方に、好酸球性副鼻腔炎としての治療を行ったら鼻ポリープが縮小して、数日で症状が改善したということは、一度や二度ではありません。(もっとも、この病気は一度症状が良くなっても、いずれ鼻ポリープが再燃することが多いですが)。まだ、医師の中にも、好酸球性副鼻腔炎について、よくご存じではない先生もいらっしゃるのも確かなのです。

だから、聴いている方の中にひとりでも、好酸球性副鼻腔炎やアスピリン喘息について、新しい知識を得られたという方がいらっしゃれば、私の話も無意味ではなかったと思うのです。

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小麦依存性運動誘発アナフィラキシー

2012-01-11 13:18:45 | 好酸球性副鼻腔炎一般

冬は患者さんが多くて忙しい上に、原稿や講演会の準備が重なって、このブログも開店休業状態でしたが、ようやく落ち着きましたので、毎日は無理でも、できるだけ更新していこうと思います。

私のクリニックに近い基幹病院は、昭和大横浜北部病院ですが、そこの耳鼻咽喉科の先生方が、毎年近隣の開業医との勉強会を開いてくださいます。今年も来週、1月17日に開かれますが、今回はそこで私が好酸球性副鼻腔炎の話をさせてもらいます。大学病院の先生を前に開業医が話をするというのもおこがましいのですが、もしかしたら皆さんの知らないこともあるのではないかと思って、お引き受けしました。

別の話になりますが、私は50歳を過ぎてから、小麦依存性運動誘発アレルギーを発症しました。最初の発作は、休診の日、近くのレストランで昼食をとった後、診療のある日にはできない仕事を片付けにクリニックに行ったときに起きました。突然全身にひどい蕁麻疹が出て、血圧が下がり始めたのです。立っているとふらつきましたが、横になっていれば意識ははっきりしていましたし、呼吸苦もなかったので、抗ヒスタミン薬を飲んで安静にして様子を見ました。血圧も80近くまで下がり、それ以上下がったら救急車を呼ぼうと思っていましたが、しばらくすると回復し始め、蕁麻疹も1時間ほどで消えました。

食事をとったすぐ後だったので、食物アレルギーだと考え、その時に食べたものについて血液中の抗体を調べました。パンも食べたので小麦も調べましたが、すべて陰性でした。その後も、食事の後に蕁麻疹が出る事はしばしばありましたが、特に決まったものを食べたときに出るわけでもなく、同じものを食べても出るときと出ないときがあり、理由が分からないまま、初回の発作以来は常に持ち歩いている抗ヒスタミン薬を飲めば、すぐに治っていました。

2回目の比較的強い発作は、パンを食べた後テニスをしているときに起きました。これでやっと、運動で誘発されるのだということが分かりました。1回目の発作は、別に運動をしているときではなかったし、血液検査で小麦に対する抗体もなく、パンは大好きで外食ではご飯よりもパンを選ぶ方だったのに、初回の発作が起きるまでは全く平気だったので、ピンと来なかったのです。医者もすべての病気をよく知っているわけでなく、自分の病気の診断さえなかなかつけられないことがあるという、一例です。

2回目の発作も、すぐ抗ヒスタミン薬を飲んで1時間ほど安静にさせてもらって、収まりました。現在は、仕事のある日の朝と昼と、運動をする休日の朝は、いっさい小麦の入ったものを食べず、夜や何もない休日の昼などに小麦の入っているものを食べたら、あとはずっと静かに過ごすようにしており、蕁麻疹を起こすこともほとんどなくなりました。

(私は発作が起きたとき、そばに人がいて手元に薬もあり、自分の状態を十分把握できていると判断して、自分で対応してしまいましたが、小麦依存性運動誘発性アナフィラキシーも、ときには生命にかかわることがありますので、一般にはこのような症状が出たら、緊急に治療が必要です。また、私は比較的軽症ですが、重症の方などはそのあと静かに過ごせるときでも、小麦を避けるべき場合があると思いますので、自己判断はしないでください)

 


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今日のNHKスペシャルから

2011-11-20 23:02:11 | 好酸球性副鼻腔炎一般

 今夜NHKスペシャルで、アレルギーを特集していました。

 その内容は1.卵アレルギーに対する免疫療法、2.スギ花粉症に対する舌下免疫療法、3.加水分解小麦入りの石けんによる蕁麻疹、4.アトピー性皮膚炎の原因のひとつしてのスキンバリア(フィラグリン)の欠損とその治療の可能性、5.アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬でした。

 免疫療法は、もともと花粉症などの治療として、注射で行われていました。食物アレルギーに応用されるようになったのは、比較的最近のことだと思います。原因になる卵を、症状の出ないぐらいの少量から食べさせ、少しずつ量を増やしていく治療法です。短期間でかなり急速に量を増やしていきますので、治療中に強いアレルギーが起きてしまう可能性があり、必ず入院して医師の管理下で、治療が行われます。番組では、横浜のこども医療センターが出ていましたが、成功率が98%ということで、これは信じられないぐらいの高い成功率です。

 現在日本でも、スギ花粉症に対する舌下免疫療法の臨床治験(実際の患者さんに行って調べる、新しい治療法の研究の最終段階)が始まったところです。番組では、この治療法を行っているかどうか、病院やクリニックに問い合わせてくださいと言っていましたが、実際にはまだ認可された治療法ではないので、現在この治療を受けられるのは、その臨床治験を行っている、限られた施設だけですし、治験として治療を受けるために、その間は内服薬などに制限があります。

 加水分解小麦入りの石けんで小麦アレルギーを誘発された方が多数出たことは、少し前にニュースにもなっていました。番組に出ていた方も、最初は踊っているときに強い蕁麻疹が出たとのことですが、小麦依存性運動誘発アレルギーのかたちをとることもあるようです。番組の内容から外れますが、小麦依存性運動誘発アレルギーの場合、血液検査では小麦アルルぎーが出ないことが多いので、注意が必要です。また番組では、いろいろな合成された物質が、アレルギー性の病気の原因になり得るということにも、言及していました。

 アレルギー性鼻炎が花粉やハウスダストを抗原とし抗原特異的なIgEによる、比較的単純なアレルギーであるのに対し、アトピー性皮膚炎は、もっと複雑にいろいろな要因がからみます。番組では、フィラグリンというスキンバリアの因子が欠落して、皮膚から抗原が入りにくくなっている患者さんが多いことに注目して、新しい治療を開発しているフランスの施設が紹介されていました。 

 アトピー性皮膚炎のステロイド外用については、母校の第三病院の皮膚科の上出良一先生が出演されていました。上出先生は大学では私の先輩でもあり、私と同期の耳鼻咽喉科医である友人の上出洋介先生のお兄様でもあります。ステロイド外用を正しく使うことが、皮膚の炎症を治すのに著効があることを強調されていました。ただし、正しく使わなければならず、その指導を医師が十分行ってきたかどうか、医師の側にも反省が必要であると、上出先生はおっしゃっていました。 

 好酸球性副鼻腔炎に明らかに有効であるのは、現在のところステロイドの全身投与だけです。内服のステロイドも、少量であれば、あるいは短期間であれば、それほど副作用の心配をせずにすみますが、局所投与(点鼻)がもっと有効であれば、その方が、より安全です。点鼻が明らかに有効だという患者さんは比較的少ないのですが、量、投与方法、投与期間などについて、正しい方法が確立されれば、もっと有効性が高まるのかも知れません。

 さらに言えば、ステロイドは現在起きている炎症を治す治療であり、正しく使えば非常に有効な薬です。しかし、病気のもとを治すものではありません。好酸球性副鼻腔炎にも、ステロイド以外に、もっと根本的な治療法が開発されることも求められます。


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石戸谷淳一教授講演会

2011-11-10 11:47:16 | 好酸球性副鼻腔炎一般

近隣の3区(都筑区、青葉区、緑区)の耳鼻咽喉科医の会を毎年開いているのですが、今回は、横浜市立大学の石戸谷教授をお招きして、ご講演いただき、私が座長を担当しました。

テーマは花粉症でしたが、好酸球性副鼻腔炎についてもお話をいただき、有意義な会でした。

講演終了後の意見交換会で、ステロイドについて、いくつかの質問をさせていただきました。以下に石戸谷教授のお答えも書かせていただきますが、あくまで非公式な場での会話ですので、石戸谷先生の公式な見解ではなく、内容についての責任は、すべて私にあります。

B型肝炎キャリアーの方にステロイドの投与はどうするか。ステロイドの使用によって、肝炎が発症する可能性はないのか。私は、もちろん用心しながらですが、好酸球性副鼻腔炎で使用するステロイドの量と期間であれば、それほど可能性は高くないと考え、ステロイドによって大きな利益が得られるなら、できるだけ投与したいという考えなのですが、石戸谷先生も賛成してくださいました。

好酸球性副鼻腔炎に使用する程度のステロイドでも、副腎抑制(本来体の中で必要なステロイドを造っている副腎皮質の働きが弱くなってしまう)に対する注意が必要なのか。全くないわけではないですが、頻度は低いと考えられ、これも石戸谷先生も同じお考えでした。もちろん注意は必要ですが、必要以上にステロイドを恐れて、ステロイドによる改善の機会を逃すことの方が、問題であるというお考えで、私も賛成です。

リンデロン耳科用液の保存料パラベンは問題にならないのか。石戸谷先生は今まであまり問題にされていなかったとのことですが、今回の私の質問で、関心を持っていただけたようです。私のような一開業医の力はたかが知れているので、石戸谷先生のように好酸球性副鼻腔炎に力を入れてくださっている大学教授がいらっしゃるのは、心強いことです。

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国際鼻科学会報告3 紀太博仁先生

2011-10-16 23:11:37 | 好酸球性副鼻腔炎一般

メイヨクリニックの紀太先生は、慈恵医大の松脇先生が留学中に指導を受けた先生です。今回の学会でも、いくつかの講演をされました。 

松脇先生もシンポジストのひとりだったシンポジウムでは、紀太先生は、TSLPIL25IL33といった気道上皮におけるアレルギーあるいは炎症に重要なサイトカインのこと、アルテルナリア(副鼻腔に炎症を起こすカビの代表)とプロテアーゼ活性化受容体の関係、などを話されました。

紀太先生は別の日に、好酸球についての講演もしてくださったのですが、日程の都合で私は聞けませんでした。かわりに、本年のImmunological Reviewsに載っていた、先生の好酸球についての総説を読みました。以下はその内容です。好酸球についての最近の考え方は、1980年以前の好酸球善玉説、それ以降の完全な悪玉説のように単純ではないようです。

好酸球は、外部からの刺激がないときと、サイトカインや抗原の刺激を受けて部分的に活性化したとき、そしてさらに侵入してきた微生物(細菌など)やその毒素などで刺激を受けて完全に活性化したときでは、その働きがちがうということです。

刺激のない状態では、粘膜組織の状態を一定に保つ働きがある可能性があります。部分的に活性化された好酸球は、サイトカインなどを出して、免疫の調節や、組織の修復に関与するということです。そして完全に活性化されると、好酸球の中の顆粒にあるいろいろな物質によって、侵入した微生物を攻撃し、同時に自分の粘膜組織も破壊してしまいます。

すぐ臨床に結びつく内容ではありませんが、好酸球の炎症における働きがもっと詳しく分かれば、いずれは新しい治療にも結びつくはずです。

 


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