≪手を動かさねばっ!≫

日常で手を使うことや思ったこと。染織やお菓子作りがメインでしたが、病を得て休んでいます。最近は音楽ネタが多し。

国立音楽大学楽器学資料館へ行った。その2(チェンバロ、クラヴィコード、スクウェアピアノ)

2023-12-17 18:00:47 | 音楽
国立音楽大学楽器学資料館へ行った。その1(パイプオルガン) よりつづく


パイプオルガンで思わず熱くなったが、もちろん資料館には他の楽器もある。
リードオルガンもいくつもあったが、そのうちのひとつ、純正調オルガンがあった。浜松市楽器博物館でも見た なあ。ずいぶん変わった鍵盤のリードオルガンです。
  👈 下にスクロールすると国立音楽大学楽器学資料館の所蔵楽器目録詳細欄に純正調オルガンが出る。1936年製作。


他には歴史的なピアノとかチェンバロとかクラヴィコードが何台も置いてあった。
さわれるものもあった。

さわれるチェンバロやスピネットのプレクトラムは革だった。革プレクトラムのチェンバロを弾くのは初めてです。
ちなみに、スピネットは弦が鍵盤に対して斜めに張られているチェンバロの仲間である。

皆がさわれるチェンバロのプレクトラムが羽軸なわけないが、デルリンでもないんだな。やっぱり革の方が羽軸より丈夫なんだろうな。ピアノを弾きなれている音大生がいきなり羽軸プレクトラムのチェンバロを弾いて プレクトラムが無事とは思えない。
革プレクトラムチェンバロの弾き心地は、そんなに軽くないな、という感じ。デルリンでも削り方で軽さがすごく変わる、ということを松本市音楽文化ホールのチェンバロとうちのものとの比較で知ったので、一律にデルリンならこう 革ならこう、といえないけど。
歴史的な楽器の保全より音大生が使えることを優先しているんだな、と革プレクトラムで感じました。
どのチェンバロやスピネットをさわったか、所蔵楽器目録を見ても思い出せない。ちとくやしい。


クラヴィコードが何台もあったのが嬉しい。浜松市楽器博物館にはクラヴィコードが1台しかなかったしさわれなかったので、山野辺氏製のものや松尾古楽器製のクラヴィコードとタッチや鳴りがどう違うか興味があったのだ。
さわれるクラヴィコードには譜面が置いてあったので、弾いてみた。うん、クラヴィコードはそれほど違いを感じなかった。単にわたしが分からなかっただけかもしれない。チェンバロは レッスンを受けた おかげで色々と感じられるようになったけれど、クラヴィコードは弾いた時間も短いし どこに注意してどのように弾く楽器なのかも今一つ分かっていない。それで違いに気づかなかったんだと思う。
まあそれでも、軽いタッチのチェンバロでニュアンスを出す弾き方に腐心した成果が出て、クラヴィコードは小さい音なりに歌ってくれました。クラヴィコードって可愛い楽器だね。うちの子も弾いてあげなくっちゃ。

  👈 下にスクロールすると所蔵楽器目録詳細欄に さわらせてもらったクラヴィコードが出る。1983年製作、そんなに古いものではない。古さという博物館的価値よりも、実際に演奏出来てそれを音大生に体験させる方を重視してしているんだと思う。
  👈 動画ギャラリーにリンク。クラヴィコードの10分講座が見られます。かなり丁寧な説明で、フレッテッド(共有弦)とかショートオクターブの説明を実際に音を出して説明してくれている。

さわれるクラヴィコードやチェンバロの譜面台には易しい譜面が載せてあったが、その他に、楽器にふさわしいものを弾くように、という注意書きがあったのが面白かった。
まずは時代が合った曲がふさわしいよね、それは納得。でもまあ敢えて違う時代のものを弾いてみる、っていう行為はいかにも「芸術」っぽい気もするけど。


国立音楽大学楽器学資料館のさわれないクラヴィコードはけっこう大型で、低音は1オクターブ高い音と複弦になっていた。その特徴は 浜松市楽器博物館のものと同じ だな。
  👈 下にスクロールすると所蔵楽器目録詳細欄にアンフレッテッドのクラヴィコードが出る。これも1983年製作。




他には沢山あるピアノの中でもスクウェアピアノがいくつもあったのが興味深かった。


細長い長方形の箱を横に置いた感じがクラヴィコードで、それに似ているピアノがスクウェアピアノ、でだいたいあっていると思う。
そこそこ小型で持ち運ばれたりしたクラヴィコードもあるが、そういう可愛らしい風情のスクウェアピアノがあった。脚/台がないから余計にそう見えるのかも。ピアノとは思えない。
  👈 下にスクロールすると所蔵楽器目録詳細欄に小型スクウェアピアノが出る。1787年製作。Piano carre とあるから、運べるピアノという意味だね。



小型でクラヴィコードにもピアノにも見えないスクウェアピアノに惹かれた。スクウェアピアノといえば横長な長方形なもののイメージがあるが、これは幅と奥行きがだいたい同じくらいに見えた。
まだ修復がすんでおらずハンマーはついていなかった。これの修復がすんだら、ぜひ資料館の人に音を出してもらってそれを観たい。
  👈 下にスクロールすると所蔵楽器目録詳細欄に小型のスクウェアピアノが出る。1845年製作。

製作者のロバート・ウォーラムはイギリスのピアノ製作者で、18世紀後半から19世紀に小型のアップライトピアノも製作した。グランドピアノの素早い連打を可能にする機能をそのままアップライトピアノのアクションに採り入れることは出来なかったが、その代わりになる機構を発明し長く使われた。ウィキ

小型のピアノの普及は、まず 弦が水平に 且つ鍵盤に対して横向きに張られているスクウェアピアノから始まったが、その後 グランドピアノを立てて床面積を減らす発想で弦が垂直に張られる背高のジラフピアノやキャビネットピアノが現れ、やがて弦は縦方向だが2方向に斜めにずらして重ねて張ることで高さも減らしたアップライトピアノにとって変わられた。
とって変わった、といっても各々に特徴が違うから、用途要望に応じて同時期に重複して存在していた。
ロバート・ウォーラムはスクウェアピアノ、キャビネットピアノ、アップライトピアノやグランドピアノ、と多様なピアノを製作したそうだ。

キャビネットピアノとはなんぞや、ということで、国立音楽大学楽器学資料館の所蔵楽器目録にあるもののリンクを貼る。
  👈 下にスクロールすると所蔵楽器目録詳細欄にブロードウッド&サンズのキャビネットピアノが出る。1843ー1852年製作。
ブロードウッド&サンズはロバート・ウォーラムと同じイギリスメーカーで沢山ピアノを製造した。ブロードウッド&サンズは現在まで存続していてイギリス王室御用達メーカーだ。
キャビネットピアノは戸棚のように背が高く上辺は平らで、前面にはひだをとったピンクの幕が張られている。幕の周囲は木の枠で、幕は妙に舞台っぽい。前面が木の板ではなく布というのが響きに重要なのだろうか?
なんと、幕の内側の上方にアクションがあるらしい! 西野智也 ピアノ講座第4回【アップライトピアノ】
鍵盤からずいぶん離れているのに操作性が劣るわけではない、と資料館の人は言っていた。マジか!
  👈 動画ギャラリーにリンク。キャビネットピアノには直に行けないが、スクロールすると下に出るボタンで2ページ目に行くとある。解説とともに音も聴けます。高音の鳴りは今ひとつだが中低音はよい響きだ。



  👈 下にスクロールすると所蔵楽器目録詳細欄にクレメンティのアップライトピアノが出る。この形はキャビネットピアノじゃないんですかね?何か理由があるのだろうが訊きそびれた。
クレメンティって、ソナチネアルバムに曲が収められいるよね。懐かしい。むかーしピアノレッスンで教わったなあ。
1752年ローマ生まれのクレメンティはオルガンやチェンバロを弾いた。14歳にイギリスに渡り、23歳の頃にはロンドンでチェンバロ奏者となっていた。29歳にウィーンでモーツァルトと競演した。30歳の頃にはロンドンに戻り、その後ピアニスト、ピアノ教師、作曲家として名声を上げる。出版にもたずさわり、ベートーヴェンの曲を出したこともある。またピアノ製作にも関わった。ウィキ
上手く商売していたようですよ、と資料館の人の談。



国立音楽大学楽器学資料館のHPに、よく似たブロードウッドスクウェアピアノの動画が3台アップされている。
1791年から1830年までのもので、それはモーツァルトからショパンまで含む、ピアノがどんどん発達した時期なのだ。似ているけれど、ダンパーペダルがなかったりついたり、音域が拡大していて、時代の流れを感じることができる。
  👈 動画ギャラリーにリンク。キャビネットピアノに直に行けないが、スクロールすると下に出るボタンで3ページ目、4ページ目に行くとある。
説明とともに、製作時期にふさわしい曲の一部が演奏されます。このピアノならベートーヴェンが美しく弾けます、ってセールストークで売られたのかも。



  👈 下にスクロールすると所蔵楽器目録詳細欄にスタンウェイの1869年のスクウェアピアノが出る。
ハンマーの弦に当たる位置が弧を描いている。
これはスクウェアピアノの最終形です、と資料館の人が言っていた。幅も奥行きも大きくなって、グランドピアノに迫る。小型なピアノを求めるならアップライトピアノでいいし、大きくて表現力を求めるならグランドピアノでいい。
アップライトピアノの普及によって歴史に消えていったピアノに、製作者の奮闘を感じます。



浜松市楽器博物館でも思ったが、国立音楽大学楽器学資料館もオルガン、チェンバロ、クラヴィコード、ピアノ等々、鍵盤楽器が充実しているなあ。
鍵盤楽器は大型の楽器が多いから目立つのかなあ。



   国立音楽大学楽器学資料館へ行った。その3(オンド・マルトノ、テルミン) へつづく




 

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