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野間文芸新人賞選考委員の「更迭」

2005-10-07 21:18:00 | 
村上春樹の『羊をめぐる冒険』など数々の刺激的な作品を世に送り出してきた野間文芸新人賞。その選考委員の突如交代が講談社側から通告された。今年の選考会の二ヶ月前という、通常のルールの一年前を大きくはみ出しての交代だ。
これには「作家さん」たちのほうも黙っていられず、信頼関係が壊されたと抗議。

しかしな。要するに出版社側がもう現行の選考委員に見切りをつけたってわけだよ。今世紀に入ってからの野間文芸新人賞の現状を見ると、

第0026回 平成16年度
中村航   ぐるぐるまわるすべり台 /文藝春秋
中村文則   遮光 /新潮社

第0025回 平成15年度
島本理生   リトル・バイ・リトル /講談社
星野智幸   ファンタジスタ /集英社

第0024回 平成14年度
佐川光晴   縮んだ愛 /講談社
若合春侑   海馬の助走 /中央公論新社

第0023回 平成13年度
堂垣園江   ベラクルス /講談社
清水博子   処方箋 /集英社

どれもパッとしないではないか。中身の良し悪しの問題ではない。時代の寵児というか、ブームを築くような時代性を身にまとっていないのだ。

一方、他の登竜門はどうか。
芥川賞は綿矢りさ『蹴りたい背中』、三島由紀夫賞は舞城王太郎『阿修羅ガール』、読売文学賞は小川洋子『博士の愛した数式』、泉鏡花文学賞は桐野夏生『グロテスク』、直木賞は京極夏彦『後巷説百物語』、江國香織『号泣する準備はできていた』、吉川英治文学新人賞は福井晴敏『終戦のローレライ』、本格ミステリ大賞は乙一『GOTH』、すばる文学賞は金原ひとみ『蛇にピアス』、そして今後の文学賞の主流となるかもしれない非・作家たちによる本屋さん大賞は、恩田陸『夜のピクニック』だ。

ざっと見ても、有望株、売れ筋、話題性はあきらかに野間文芸新人賞にはないように思われる。
文学賞の選考委員はもはやその権威を失っている。出版社が作家に求めるものは、説明不能な文学観ではなく、売れ筋を探し当てる鑑識眼なのだろう。

そういう意味じゃ、選考委員の「交代」じゃなくて「更迭」なんだよ。

<文学賞選考委員>笙野頼子さん、講談社の交代通告に異議

講談社関係文学賞選考委員

『文学賞メッタ斬り!』

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1 コメント

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いのちある作家 (tsubakiwabisuke)
2005-10-08 20:23:07
はじめまして。

野間賞とは話がずれていますがTBさせて頂きました。

漱石についてのご意見も是非お聞きしたいと存じます。



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