桜と無常。

桜の季節もまた終わりを迎えようとしています。
やがて別の花々が盛りを迎えては散り、気が付けば桜の記憶などは遠い波の向こう、夏の彼方へと追いやられてしまうのでしょう。
その期間の余りの短さに、私たちは花咲く桜ばかりを気に留めますが、既に桜は次の春に向けて然るべき準備を入念に進めているに違いありません。




散りゆく桜に人生の儚さを映す日本人のこころ。
しかし無常のひとまわり先には再生がある。
死は生の終わりであると同時に新しい命にとっての始まりなのです。
形あるものは崩壊と再生を幾度となく繰り返しながら、千切れそうな痛みも苦しみも皆乗り越え、否応なしに輪廻を生きるほかないのだと思います。

次に桜が咲く頃には今この寂しさも忘れて浮かれ、散りゆく運命はただ悪い予感のように影を落とす。
影の中にあるからこそ余計に眩しい花々の過剰。
死を内包した刹那を抱き締めるように愛でるのが桜なのかも知れません。
人の世の愛おしさもまた、そんなところにあるのでしょうか。


明日ありと思ふ心のあだ桜、夜半（よわ）に嵐の吹かぬものかは　―親鸞




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